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最近気になる作家は？と聞かれたら、元町夏央をあげている。
「中央線ドロップス」という作品で、彼女の作品を知ってから
いつのまにか、とりこになっている。
そんな元町夏央の最新コミック「熱病加速装置」を読んだ。
今までの作品の短編集である。
収録作品は、彼女の代表作でもある「あねおと」などが収録されている。
元町作品の醍醐味は、なんといっても、あの息苦しさにある。
思春期特有の、心も体もアンバランスな時期に感じる、息苦しさ。
そういったものを、すっと描いているのだ。
流行に逆らった、暑苦しささえ感じる絵柄も、ストーリーと
とてもマッチしていて、個人的には大好きなのだ。
特に気に入ったのは「あねおと」
義姉弟による、近親相姦の話。と言ってしまえばそれまでなのだが、
結婚を間近に控えた義姉に、どうしても気持ちが抑えられない弟の
リアルな息遣いが聞こえてくるようだ。
最後は、一応ハッピーエンドで終わっているこの作品。
思春期特有の、あの息苦しさを味わいたい人には、お勧めの作品だ。
地元の本は、ついつい手にとってしまう。
岡本仁著の「BE A GOOD NEIGHBOR ぼくの鹿児島案内」もそんな1冊。
マガジンハウスで、「BRUTUS」や「relax」「ku:nel」などの人気雑誌を手がけた
岡本仁が、鹿児島について案内している。
地元の人間でも知らなかったような場所や、見落としていた名所、物などが
細かに記されている。
小さなパン屋さんでロングセラーとなっている、食パン。
漁港の小さな食堂のハムエッグ。
人間国宝の作る陶器。
田んぼを守る神様「たのかんさあ」。
そんな鹿児島の魅力が、ポラロイド写真とともに、じっくりと描かれている。
まさに、「BE A GOOD NEIGHBOR」
自分が暮らす土地に、こんなにも豊かな魅力があるのだと、
再発見できる本だった。
そして、地元をもっと好きになることができる本だった。
鹿児島だけの先行販売で手に入れたこの本。
地元の人間のための、地元バイブルとなりそうだ。
姉妹をテーマにした作品は多いのだけれど、この作品は一風変わっていた。
聖千秋著の「正義の味方」
主人公である、高校生の容子には、「一日一悪」をモットーにしている、
ＯＬの姉、澄子がいる。
澄子は、「やられなくてもやり返す」とんでもない人間。
老若男女かまわず、気に入らなければ悪さをする。
しかし、そんな澄子の悪さは、結果として幸福をもたらし、周囲を幸せにしている。
そんな姉を見て、おびえながらも、たくましく生活している容子。
なんとも淡々と描かれているが、痛快なストーリーがたまらなくツボに入る。
「良いことは良い。悪いことは悪い」を、本人がその気もないのに、
澄子が成し遂げている姿が、なんとも面白い。
父親が倒れ、母親が具合が悪くなったときも、澄子はかけつけ
全てを解決していく。そこに、多少の行き過ぎた行動が見られるけれど、
結果、澄子は家族を愛し、一生懸命なのだと伝わってくる。
そんな澄子をおびえながらも、心の底では尊敬し、信頼している容子。
そんな、どこかほのぼのとしたこの作品。
ある意味、家族愛が描かれている作品である。
数年前に見て、なんとなく頭に残っていた作品を、改めてＤＶＤで観てみた。
佐藤江梨子主演の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」
佐藤江梨子が演じる、「香澄」が両親の訃報を受け、田舎に戻ってきた
ことから、物語は始まる。
香澄は、傲慢な性格で、女優を目指して上京するも、うまくいっていない。
田舎には、腹違いの兄「穴道」と嫁の「待子」、香澄の妹「清深」が暮らしている。
傲慢な香澄に振り回される家族たち。
特に印象に残ったのは、待子を演じた永作博美。
度の過ぎるお人よしな姿にを、いじらしく思ったり、哀れに思ったり。
映画の肝を握る人物として、好演していた。
佐藤江梨子も、この役は佐藤江梨子でしか演じられないのでは？と思うほどの
演技を見せている。田舎はつまらない、とはき捨てるような傲慢な姿が
とてもよく似合っていた。
奔放な姉に振り回される妹も、なんだかんだと姉のことを心の底では
慕っている姿に、ちょっとほっとしたりする。
いっそすがすがしいほどに、むかつくこの作品。
一度は観てもらいたい作品である。
「変－鈴木君と佐藤君」で人気を集めた、奥浩哉著の「め～てるの気持ち」を読んだ。
15年間引きこもりだった主人公が、義母の助けによって、社会復帰する物語。
慎太郎は、ひきこもり暦15年の30歳。
母親と死別した父親に、「彼女ができたら、外にでてきてやる」と無謀な条件を突きつけた。
さえない中年男の父。まさか彼女なんていないだろう、と思っていたら、なんとも
かわいらしい彼女、はるかと結婚してしまう。
結婚してすぐに、父は病気で急逝。
残された慎太郎をどうにかしようと、はるかは奮闘する。
一見して、重たいテーマを取り扱っているようだが、中身は浅い。
15年も引きこもりだった人間を、素人のはるかが救えるとも思えないし、
ようは、性行為のシーンを描きたかったのだな、としか思えない。
もっと、慎太郎とはるかの交流を、じっくりと描くことができれば、
まだ深い作品になったのではないかと思うし、慎太郎が社会復帰するまでの姿も
もう少し丁寧に描いてほしかった。
テーマとしては、面白い作品だっただけに、すこし残念な気持ちになる作品だった。
