正直、百合モノといわれている、レズビアンの世界を
描いた作品は、すこし苦手としていた。
でも、つい装丁の美しさにひかれ、読んだ作品がある。南Q太著の「スロウ」
主人公の智明(ちあき)は、後輩の千春と高校生のころから、3年間付き合っていた。
しかし、激情的に振り回す千春に疲れ、別れてしまう。
その後も、ほかの女性と付き合う智明。しかし、千春と別れたことによる
空虚感はぬぐえない。男性とも関係をもってみるものの、どこか冷めている智明。
そんな彼女と、千春。そしてその周囲にいる男性の物語。
全編に激しい性描写があるものの、絵柄のせいかそれも気にならない。
智明のやるせない気持ちや、つねに智明の視線、考えていることを気にしている
千春。そんな2人の姿が、読んでいて痛々しくなった。
そして、妙に智明にも、千春にも共感してしまう。互いのことを、本能では
必要と感じながらも、素直にそれを言うことができない2人。そんな2人の
姿が、とても痛々しいのだ。
好き嫌いが分かれるかもしれないが、個人的にはお気に入りの作品となった。