タイトルに強烈に引かれて、手に取った作品がある。
青野春秋著の「俺はまだ本気出してないだけ」
自分探しのために、突然会社を退職したシズオ40歳。
ぶらぶらと過ごす日々の中で、突然漫画家を目指し始める。
バイト先のファーストフード店で、「店長」とあだ名を
つけられたり、自分の娘がいつの間にかバイトしている風俗に
いってしまったりなど、なんともなさけないシズオ。
しかし、なぜだかシズオのことを憎めないのだ。
年をとったからこそわかる、辛さややるせなさ。そんなものが、
シズオからどんどん伝わってくると同時に、そんなシズオを
助け、応援したくなってくる。
シズオ以外にも、登場人物はすべて何かを抱えた人々ばかり。
仕事が続かなかったり、別れた奥さんとの間にできた、子供のことで
悩んだり。みんな良くも悪くも、だめ人間なのだ。
タイトルどおり、シズオは「俺はまだ本気出してないだけ」と
いつも豪語する。しかし、いつだって満足いく結果は出せない。
それでも、どんなに情けなくもがんばるシズオの姿に、ちょっと元気を
もらえ、「まだ本気出してないだけ」とつぶやきたくなる、作品なのだ。