個性ある絵柄と、独特の作風で人気を集める、緑川ゆき。
彼女の代表作でもある、「夏目友人帳」もいいのだが、
個人的には「あかく咲く声」が大好きだ。
人を操る声を持つ少年辛島と、その辛島に片思いする
クラスメイト、国府を中心とした物語。
「声」という、漫画では伝わりづらいモチーフを、上手に
描いていて、国府が辛島の声を、「まるであかい花が咲いたような」
と表現したのには、鳥肌がたった。
特殊な能力のせいで、心から人と交わることができない
少年と、その少年になんとか歩み寄ろうとする少女の姿が、
あまりにも切なく美しい。
それを淡々と書き上げる、著者のすばらしさに、毎回ため息がでる。
文庫本にして、2冊という短い作品ではあるけれど、上質な短編小説を
読んだような、読後感を得ることができる。
夏目友人帳も確かに面白い作品だと思うが、個人的には、
「あかく咲く声」もお勧めしたい。