読んでいて、思わずやられたな、と思った作品がある。
豊田徹也著の「珈琲時間」
この作品は、珈琲にまつわる物語がまとめられた1冊で、
すべて一話読み切りとなっている。
とっぴな行動をするが、なぜだか憎めない映画監督、
思いに揺れる女子高生など、17の物語がつまっている。
少しずつ、物語がリンクしているのもおもしろい。
珈琲が主役でない話もあるけれど、上手に脇役や物語の
スパイスになっており、読んでいて思わず「うまいなぁ」
「やられたなぁ」とつぶやいてしまった。
物語のすべてから、ミルでコーヒー豆をひく音や、淹れたての
香りが香ってきそうだ。
絵柄もシンプルで、美しく、すっきりとした物語にとても
あっている。個人的には女の子の表情がかわいらしくて、
見ていて心がなごんだ。
人によっては、物語があっさりとしすぎている、と感じる
かもしれないが、とても心地よく読める一冊。珈琲のお供は
もちろんのこと、寝る前に少し何か読みたい、そんなときに
お勧めの作品だ。