風俗業界を描いた漫画が好きだ。なぜなら、自分では体験することのない、未知の世界を知ることができるから。
最近のお気に入りは、ドラマにもなった、和久井健著の「新宿スワン」。バカで一本気な主人公白鳥龍彦が新宿歌舞伎町で、スカウトマンをしながら、成長していくストーリー。歌舞伎町という、世界でも名だたる夜の街を舞台に、スカウトマン・キャバ嬢・ホスト・ヤクザなど、様々なタイプの人物がリアルに描かれている作品だ。
この作品の魅力のひとつは、古臭いようだけれど「義理と人情」なのではないかと思う。主人公の龍彦は、バカだけれど麻薬や闇金など、道義に反したことが大嫌い。仲間思いの勧善懲悪のはっきりした、義理と人情に厚い男なのだ。そんな彼だからこそ、いろんなピンチのときも協力者が必ず現れる。それに、自分の力でどうにかしようと奮闘する姿に心打たれる、とても魅力的な人物なのだ。
龍彦のように、自己を投げ打ってでも仲間を助ける姿は、昔の少年漫画のヒーローのように輝いている。希薄でライトな人間関係が当たり前になってきた昨今だからこそ、龍彦のような存在に憧れるのかもしれない。