- 2020/04/30
【青空文庫とは】使い方からおすすめ作品まで丸ごと解説します
「いつでもどこでも誰でも自由に本が読める」、そんな想いから生まれたネット上の図書館が【青空文庫】。いかにして誕生したのか?その仕組みから使い方まで詳しく解説いたします。青空文庫で公開されている作品からおすすめのものもご紹介。これを読めば青空文庫がよくわかる!
本好きなら知っている、「青空文庫」
今回ご紹介するのは【青空文庫】。みなさんは青空文庫を知っていますか?
本好きの知人が「古典の名作を読むときにはよくお世話になるよ」と教えてくれたのがこの青空文庫なのですが、知らなかった私は「どこかの出版社のレーベルなのかな?」なんて勘違いをしてしまい…。そこで調べたのが青空文庫との出会いでした。
今回はこの、青空文庫についていろいろご紹介いたします。
『青空文庫』とは?
では、ここから青空文庫について詳しく説明していきたいと思います。
青空文庫とは、
インターネット上で無料で公開するサービス
のことです。ウェブ上の図書館、などとも表現されます。太宰治や夏目漱石などの日本を代表する作家や、紀貫之『土佐日記』や福沢諭吉『学問のすすめ』など歴史的作品、また海外作品も数多く収蔵されています。
誰が始めたの?
青空文庫の発足メンバー "呼びかけ人"富田 倫生 | 作家、フリー編集者 |
野口 英司 | 大手電機メーカー、デジタル出版関係 |
八巻 美恵 | ミュージシャン |
他、LUNA CAT、らんむろ・さてぃ、浜野 智など |
1997年に、作家でありフリーの編集者でもある富田倫生氏と、その志を共にする仲間によって活動がスタートしました。ちなみに青空文庫では、この発足メンバーを"呼びかけ人"と呼んでいます。
経歴を見ると、皆が作家や出版関係者というわけではないのが興味深いところ。パソコンが一般的に普及してきた1990年代に、<電子本>という今までにない形のメディアに興味を持っていた人が集まり、青空文庫は誕生しました。
青空文庫へ込められた想いとは?
今では当たり前となった電子書籍やネット書店ですが、ネット黎明期にいち早くこのようなシステムを作ろうと考えた青空文庫の呼びかけ人たちは、いったいなぜ<無料で読める図書館>の形態をとったのでしょうか。
有料制、会員制のようなシステムにすれば大きな利益を得られたのではないか、と考える人も多いかと思いますが、それには青空文庫に込められた、特別な想いがあったのでした。
誰もが文学という宝の恵みを享受できるようにしたい」
このような想いから、"著作権切れ(または著者の承諾を得た)文学作品を電子化してネット上の図書館に収蔵する"という青空文庫の取り組みが始まったのでした。「青空文庫」というネーミングも、インターネットの空間を<青空>になぞらえたとのことです。
誰が運営しているの?
青空文庫は誕生して以来、なんとボランティアの手で運営されてきています。びっくりですよね!
青空文庫の土台である、作品の入力・校正を行うのもボランティア。ちなみに、この作業を担当する校正者のことを工作員・耕作員("本"という作物を根付かせ育てる、という意味合い)と呼んでいます。
工作員(耕作員)の人は、手掛けたい底本(※元になる本)をリストから自分で選び、テキスト入力していきます。インターネットというデジタルな世界に反して、意外と地道なアナログ作業のようです。その他、広報、会計、Web管理などの仕事も基本ボランティアで担っています。
青空文庫の使い方はこちら
ここまで青空文庫の成り立ちや運営などについて説明してきましたが、「私もさっそく青空文庫を見てみたい!」と思った方へ、こちらで使い方をご説明します。
青空文庫を見るためには
①まずは下記のURLにアクセスします。
こちらの公式サイトで、全ての作品を見ることができます。なお、入力・校正が終了している作品は<公開中>、現在工作(耕作)員の手によって入力・校正中の作品を<作業中>と分類しています。今どんな作品が公開準備されているかも見ることができます。
②作品を選ぶ
1.サイト内 『総合インデックス』 をクリック。
2.<作家別>か<作品別>(タイトル)を、五十音順から探す。
③〈ファイルのダウンロード〉からファイル種別を選んでダウンロード、もしくは〈いますぐXHTML版で読む〉をクリックし、そのままweb上で読むことが可能です。
<青空文庫アプリ>有料版と無料版の違いとは?
上記で青空文庫公式サイトから作品を探して読む方法を説明しましたが、最近ではスマホ使用の人も多く、なんと<青空文庫を読むためのアプリ>がいくつもリリースされているんです。スマホユーザーにはとっても便利なアプリたち。
でも、アプリを検索してみると<有料版><無料版>それぞれあるので「何が違うんだろう?」と疑問に思う方も多いよう。それについてこちらでざっくり解説したいと思います。
「青空文庫が読みやすい!」人気のアプリ
OS | 無 料 | |
---|---|---|
iOS | i 読書 青空文庫リーダー | シンプルながら読みやすい操作感が人気 |
iOS | 青空リーダー | 音声読み上げ機能、残りページ表示、帯色選択機能 |
Android | 青空文庫ビューア Ad | 読了時間で作品を選べる、感想を投稿したり、閲覧することも可能 |
Android | 読書家 (青空文庫形式ファイルリーダー) | ダウンロードしたデータを読むことに特化したもの。余計な機能がなくシンプル |
OS | 有 料 | |
---|---|---|
iOS | i文庫S | 青空文庫以外にも小説や漫画、PDF書類等、全ての文章データを快適に楽しめるアプリ |
Android | 青空文庫ビューア | 青空文庫ビューア Adの有料版 |
<有料版>と<無料版>の違い ※あくまでも一例です
有料版 | 無料版 |
---|---|
・ 自動で広告が表示される ・ ダウンロード作品数に制限がある ・ 調節できる機能が限られる (文字フォント、行間、色など) ・ 本棚を複数作れない |
|
kindleとは、Amazonが提供する電子書籍や、端末などのそれに関わるサービスのことをいいます。専用端末だけでなくウェブブラウザやアプリなどからも閲覧可能。端末に青空文庫をダウンロードすれば、いつでもどこでも過去の名作は読み放題と言っても過言ではありません!
青空文庫のおすすめ作家&作品はこちら
さあ、お待たせしました!「いったい青空文庫ではどんな作品が読めるの?もう少し情報が欲しい!」という声にお応えして、おすすめ作家&作品をいくつかご紹介したいと思います。
ちなみに青空文庫の収録作品数は、なんと15000点以上!(2020年3月)。ボランティアの手作業のみでこの作品数です。工作員(耕作員)の方たちへ尊敬の意を感じずにはいられませんよね。青空文庫の理念に賛同した方たちの想いが、しっかり根付いて実っているように思えます。
〈日本文学〉1.夏目漱石 (全107作品) |
『こころ』『それから』『坊っちゃん』『三四郎』『夢十夜』『吾輩は猫である』など |
2.芥川龍之介(青空文庫では芥川竜之介と表記) (全376作品) |
『或阿呆の一生』『河童』『蜘蛛の糸』『地獄変』『杜子春』『羅生門』など |
3.夢野久作 (全154作品) |
『ドグラ・マグラ』『人間腸詰』『瓶詰地獄』『少女地獄』『猟奇歌』など |
4.菊池寛 (全80作品) |
『恩讐の彼方に』『真珠婦人』『貞操問答』『父帰る』など |
5.島崎藤村 (全50作品) |
『破戒』『ふるさと』『夜明け前』『芭蕉』『ある女の生涯』など |
6.谷崎潤一郎 (全30作品) |
『細雪』『陰翳礼讃』『春琴抄』『痴人の愛』『蓼食う虫』など |
7.宮沢賢治 (全276作品) |
『雨ニモマケズ』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』『注文の多い料理店』など |
8.梶井基次郎 (全47作品) |
『檸檬』『桜の樹の下には』『愛撫』『城のある町にて』『泥濘』『路上』など |
9.堀辰雄 (全155作品) |
『風立ちぬ』『聖家族』『菜穂子』『楡の家』『花を持てる女』『不器用な天使』など |
10.片岡義男 (全12作品) ※著作権存続中。公開承諾あり。 |
『彼のオートバイ、彼女の島』『エルヴィスから始まった』『東京青年』『波乗りの島』など |
〈海外文学〉
1.オー・ヘンリー (全4作品) |
『賢者の贈り物』『最後の一枚の葉』『罪と覚悟』『魔女のパン』など |
2.アンデルセン (全21作品) |
『赤いくつ』『おやゆび姫』『人魚の姫』『マッチ売り少女』『雪の女王』など |
3.シェイクスピア (全1作品) |
『ロミオとヂュリエット』他、現在作業中の作品多数あり |
やっぱり紙の本が欲しい!と思ったら
青空文庫は誰でも利用できるネット上の図書館、という素晴らしいシステムですが、気に入った作品は「やっぱり紙の本を手元に置いておきたい!」という欲求にかられますよね。 しかし、本を揃えるのって意外とお金がかかるもの。「読んでみたい作品がたくさんあるけど、全部買う金銭的余裕がない…」という人は青空文庫で試し読みをして、それから欲しい作品を本で買う、という使い方もできるのでおすすめです。
そんな方へ、こちらインターネット古本販売店『もったいない本舗』でも、古典文学作品を数多く取り揃えております。青空文庫に引けを取らないラインナップ!青空文庫では未収録の作家、遠藤周作や志賀直哉などの作品も『もったいない本舗』では入手可能です。
以下、ごくごく一部ですがご紹介いたします。
映画「真夜中の招待状」の原作。「文学」と「推理小説」が共存した、遠藤周作の作品中では異色とも言われる作品。
鋭くて正確、かつ簡潔な言葉で「写実の名手」といわれる志賀直哉の長編小説。日本近代文学最高峰との呼び声も高い作品です。
もはや名前を知らない人はいないほど有名な作品。人間の怖さや醜さなど闇の部分を文章で表現した、太宰文学随一の名作です。
夏目漱石の作品の中で最も広く親しまれているともいえるこの作品。近代小説に勧善懲悪という主題を再燃させた傑作です。
独特の空間が漂う幻想的な、宮沢賢治童話の代表作の一つ。作者の死によって未完の作品となっていますが最高の傑作と称されています。
大正、昭和初期その時代にしては、ショッキングで退廃的な小説で注目を浴びた谷崎潤一郎。まさにここから日本のミステリーが始まったのではないでしょうか。
江戸川乱歩といえば推理小説のイメージが強いかもしれませんが、この短編集に収録されているのはちょっと考えさせられる悲しいお話。一番怖いのは…人間なのかもしれませんね。
まとめ
今回は、インターネット上の図書館『青空文庫』について紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。今まで青空文庫を知らなかった人や古典作品を読んでこなかった人にも興味を持っていただけたら幸いです。
「文学という社会的文化資源を、分け隔てなく水のように広く行き渡らせたい——」という呼びかけ人の富田氏の崇高な理念が、たくさんの賛同者とボランティアの人々の手によって形になりました。
この青空文庫を入口に、過去の名作文学に触れる人が増えることを期待したいと思います。
また、気に入った本、手元に残したい本がありましたらぜひ『もったいない本舗』でお探しください!
ライティング担当 : otake札幌在住の40代2児の母。趣味は読書。小説からエッセイ、漫画まで何でもこいの雑食派。好きな作家は横山秀夫、誉田哲也、角田光代、篠田節子、乃南アサなど。とくに人間の本音や心の闇に迫る作品に惹かれる。テレビも好きで、笑えるバラエティで忘れた笑顔を取り戻す。一度手放した思い出の漫画たちを買い戻すことを目標に日々働く。すべての家事を終えて飲む一杯が一番の癒し。 |