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  • 2018/10/02

【スタッフ厳選!】恩田陸のおすすめ小説ランキング30選

直木賞を受賞した恩田陸ってどんな作家?ファン暦15年!古本店『もったいない本舗』のスタッフが心よりオススメする恩田小説をランキング形式で紹介します。ミステリー、ファンタジー、ホラー、SFなどたくさんの引き出しを持つ恩田さんの作品を、少し覗いてみませんか?

野原で風船を持つ女性

恩田陸ってどんな作家?

夕日を受けて読書をする男性

最近『蜜蜂と遠雷』で直木賞を受賞した作家、恩田陸さんをご存知ですか?恩田さんは「ノスタルジアの魔術師」と称される通り、郷愁(ノスタルジア)を誘う情景描写を得意としています。ミステリーの他にも、ファンタジー小説、青春小説、SF、ホラーなどそのジャンルは多岐にわたりますが、どの作品を読んでもどこか胸が切なくなるような懐かしさを覚えるのが特徴です。

恩田さんは筆の早い作家としても有名ですが、それは年間300冊という膨大な読書量があってこそのものなのでしょう。物書きとして本を楽しみ、一読者としても楽しむ。そんな本をこよなく愛する姿勢が、恩田さんの決してジャンルの枠にとらわれない作品に影響を与えているのだと思います。

でも、膨大な恩田作品…一体どれから読めば良いの?!と迷ってしまいますよね。恩田ファン暦15年!『もったいない本舗』のスタッフS(以下、スタッフS)が、絶対に読むべきおすすめ恩田作品を30タイトル厳選しました!これから読まれる人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

【ミステリー・推理系】恩田陸おすすめ10選


恩田陸ミステリー小説

まず恩田さんのお得意とするジャンルは、何と言ってもミステリーでしょう!でも一筋縄ではいかないのが恩田流。どこか幻想的な要素がプラスされていたり、過去の名作へのオマージュがふんだんに取り入れられている作品もあり、唯一無二の恩田ワールドを作り出しています。恩田陸=ファンタジー作品というイメージが強い人もいるかもしれませんが、恩田さんの本領は間違いなくミステリーです。どれも甲乙付けがたい良作ばかりなのですが、スタッフSがおすすめする”極上のミステリー”を10作品紹介いたします。

1位 『麦の海に沈む果実』

恩田作品の中でも、とりわけファンの多い作品です。私も一度この作品を読んでからすっかり虜になってしまい、何度も何度も繰り返し読むぐらい大好きな本。舞台は、湿原にぽつりとたたずむ全寮制の学園。外界と完全に隔てられた陸の孤島は、これでもかというほどミステリー好きの心を刺激してきます。

学園にまことしやかに伝わる「3月以外の転入生は破滅をもたらす」という言い伝えにもかかわらず、主人公・理瀬は2月の最後の日に転入してきてしまいます。失踪する生徒たち、図書館からなくなってしまったいわくつきの本、不穏な交霊会…近年の恩田作品にはなかなか見られなくなった薄気味悪さがあります。また特筆すべきは登場人物が美男美女揃いなこと!ファンの間でもヨハン派か、黎二派かで意見が真っ二つに割れるところです。

あと、間違えてはいけないのが読む順番です!こちらの「理瀬シリーズ」には、他に『三月は深き紅の淵を』『黄昏の百合の骨』があり、他にも『図書室の海』『朝日のようにさわやかに』の中にも短編が収録されています。順番を間違えると究極のネタバレになりかねないので、『三月は深き紅の淵を』⇒『麦の海の沈む果実』⇒『黄昏の百合の骨』⇒『図書室の海』⇒『朝日のようにさわやかに』の順に読むことを強くおすすめします。

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2位 『黒と茶の幻想』

文庫版にして上下巻に分かれる長編作品。学生時代の友人同士であるアラフォー男女4人が、Y島(おそらく屋久島)を旅するという話。ほぼ会話のみで成り立つ物語の一体何が面白いの?と思われる人もいるでしょう。でもそれがとてつもなく面白いんです!!

章ごとに語り手が入れ替わり、物語が進むにつれて4人の間に横たわる空白の時間と過去の謎が明らかになります。会話の端々に見え隠れする不穏な空気と、ピリッと張りつめた緊張感…。恩田さんの言葉選びの軽妙さと、言葉で言い表すことのできない微妙な感情描写が素晴らしく、会話だけでこんなに楽しめる本はめったにありません!

ちなみに、作中では「憂理」という登場人物が出てくるのですが、これは前述した『麦の海に沈む果実』に登場するあの憂理。ちょっぴりショックを受ける可能性も否定できないので、できれば『麦海』から先に読むことをおすすめします。日常を描いているけれど非日常。ラストは中盤あたりでは想像できなかった爽やかさが残り、読後感の良い一冊です。

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3位 『象と耳鳴り』

緑と白のツートンカラーのカバーデザインがひときわ目を引く連作短編集。数多ある恩田作品の中でもかなり本格的な推理小説の部類に入るかと思います。この作品は、最初のつかみが素晴らしいんです。たとえば表題作は「あたくし、象を見ると耳鳴りがするんです」というある上品な老婦人の独白から始まります。なぜ象?と思いませんか?その他にもある人の話や手紙から謎を解決するという安楽椅子探偵ものがメインで、推理小説好きさんにも読み応えたっぷり。ぜひとも週末の夜に腰を据えてじっくり読んでいただきたいです。

余談ですが…本作の主人公は『六番目の小夜子』の関根秋の父親である、元判事の多佳雄。息子・春と娘・夏など関根一族が登場するのも、ファンにとっては嬉しいポイントですね!すべての短編がすっきり解決するわけではないのですが、そのあたりはご愛嬌ということで。

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4位 『ユージニア』

日本推理作家協会賞を受賞した作品です。夏の照りつける太陽と、ふらふらとするような酩酊感。読めば読むほどに不安になるも、読み進めずにはいられないというどこか中毒性のある小説です。かつて衝撃を与えた名家の大量毒殺事件。未解決のまま数十年を経て、関係者へのインタビューにより真相に迫っていくというドキュメンタリー形式のミステリーです。犯人は一体誰なのか?数々の証言を繋ぎ合わせてひとつの真相へ辿り着くことの難しさを実感します。

難解とまでは言わないまでも、読み終えた後に「あれ?あれ?」と思ってしまうのは私だけではないはず!読後にモヤモヤとした気持ちを抱えたまま再読するのも良し、誰かと語り合うのも良し、人物相関図を書いて整理してみるのも良し。良い意味で、ずっと心の底に澱のように残るような作品だと思います。暑い夏の日にぜひ読んでみてください!

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5位 『図書室の海』

青春小説、ミステリー、SF、ホラーなどさまざまなジャンルの10作品を楽しめる珠玉の短編集。この作品を恩田さんのNO1として挙げる人もいるほどです。『六番目の小夜子』の番外編や、本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』の前日譚、『麦の海に沈む果実』のヒロイン理瀬の幼少期編など、ファン垂涎ものの作品となっています。

他にも動く要塞都市を描いた『オデュッセイア』は、まるで「ハウルの動く城」を連想させる面白さだし、『イサオ・オサリヴァンを捜して』は読んで分かるとおり続きが気になってたまらない展開。どうやら長編『グリーンスリーブス』の予告編らしいのですが…2018年現時点でまだ出版される情報はありません。恩田さん、お願いしますよ!!

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6位 『朝日のようにさわやかに』

『図書室の海』同様、いろいろなタイプの作品を集めた短編集です。タイトルと表紙の爽やかさからは想像できないぐらい怖い話メインとなっています。『麦の海に沈む果実』の人気キャラ・ヨハンが登場する『水晶の夜、翡翠の朝』は毒たっぷりでファン必読。また、『冷凍みかん』はまるで星新一さんのショートショートを彷彿とさせるようなSF作品で、これだけ少し毛色が違いましたね。

その他個人的に好きなのは、ブラックさが際立つ『深夜の食欲』と、まるでスプラッター映画を観ているかのような『卒業』。これは恩田さんとしてもかなり試験的な短編なのではないでしょうか。童話のような雰囲気が魅力の『淋しいお城』は発売当初から人気の短編でしたが、最近こちらを題材にした『七月に流れる花』『八月は冷たい城』がミステリーランドから発売されました!さまざまな過去作品とリンクするのも恩田作品の嬉しいところですね。

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7位 『六番目の小夜子』

恩田さんの記念すべきデビュー作です!ミステリーと青春小説が絶妙にミックスされ、なんとも心に残る作品に仕上がっています。高校を舞台に3年に一度選ばれる"サヨコ"。前サヨコから、次のサヨコが選ばれるものの、誰がサヨコなのかは誰も知らないという不思議な行事。そんな中、小夜子という名前の美少女が転校してくるのですが…。

とても新人が書いたとは思えないほどクオリティの高い作品です。ストーリー云々よりも、学生時代の独特な閉塞感だったり、もどかしさを抱えたまま過ごす毎日だとかの情景描写が秀逸で、昔少年少女だった皆さんは特にノスタルジックな気分になるかもしれません。さすが恩田さん、「ノスタルジアの魔術師」の異名は伊達ではありません。

ちなみに本作は当時、鈴木杏さんと栗山千明さん主演でTVドラマ化されたことでも話題になりました!少年時代の山田孝之さんも出演しているので、興味のある方はドラマ版もぜひ。

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8位 『三月は深き紅の淵を』

『三月は深き紅の淵を』というタイトルの本を巡る作品です。作者は不明、発行部数はごくわずかに限られ、コピーは厳禁、持ち主は一人だけに一晩だけ貸し出すことが許されるという謎だらけの稀覯本。そんな魅力的な本がこの世に存在するなら、一度で良いから手に取ってみたい!と思うのは本好きの皆さんに共通する願いではないでしょうか?

4つの中編は一見すると脈絡がないように思えますが、さまざまなアプローチで一冊の本に迫っていきます。入れ子構造になった本作は、一読では理解することが難しいかもしれませんが、実は読めば読むほど味が出る”するめ小説”。他の「理瀬シリーズ」とあわせて読むことをおすすめします!

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9位 『不安な童話』

"童話"というワードからは想像もつかないような怖さが感じられる本ですね。本格ミステリーをベースとしながらも、ファンタジーやホラーの要素を取り入れた恩田さんらしい一冊です。25年前に変死を遂げた美人画家の遺作展で、「私はこのハサミで刺し殺されるのだ」という強烈なデジャヴに襲われ意識を失った主人公。主人公は、画家の息子から「あなたは母の生まれ変わりではないか」と告げられます。

悪意、憎悪。これだけ負のエネルギーを放つ作品は、初期の恩田作品ならではかもしれません。今とは一味違った恩田ワールドにもぜひ注目してください!また、この表紙絵を手掛けたのは人気絵本作家の酒井駒子さん。他にも『蛇行する川のほとり』や、最近では『七月に流れる花』『八月は冷たい城』のイラストも担当されていますが、本当に恩田さんと酒井さんは相性が良いなと思います。

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10位 『黄昏の百合の骨』

この作品は必ず!!『麦の海に沈む果実』の後に読んでくださいね。それでないと、ひどくショックを受ける人が少なからずいることと思います。(ネタバレになりそうなので詳細は伏せます)祖母の転落死の謎、何かを画策する美貌の2人の叔母、そして近所から「魔女の館」と呼ばれる洋館。好きな人は、狂喜乱舞しそうな設定ではありませんか?(笑)

ミステリーというよりもサスペンス寄りの作品なのですが、何といってもこの本の特徴はあふれんばかりの毒!心の闇を抱える美しく聡明な主人公がお好きな人に、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。むせ返るような百合の花の香りを嗅ぐたびに、この作品を思い出すようになるでしょう。

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【ファンタジー系】恩田陸おすすめ6選


恩田陸ファンタジー小説

次の恩田陸おすすめジャンルはファンタジーです!ファンタジーと一言で言ってもその定義の幅は広く、主に幻想的・空想的な要素を盛り込んだ作品のこと。異世界ものもあれば、現実と隣り合わせになったファンタジーもあり…恩田さんはそのどちらも得意としています。「こんな世界があったら良いな」という作者の趣向がダイレクトに表れるジャンルなので、ファンタジーはまさに"恩田ワールド"の原型とも言えるでしょう。では、スタッフSのおすすめ作品を見ていきましょう!

1位 『光の帝国 常野物語』

ファンの中でも根強い人気を誇る作品です。膨大な書物を瞬時に暗記できたり、将来を予測することができたなら…と、思ったことはありませんか?そんな不思議な力を持った常野(とこの)一族の物語。俗世にまみれることなく、穏やかで知的な一族は、一体何のために存在してどこへ向かうのか?読み終えた後には、どこか懐かしく切ない気持ちになること請け合いです。

実はこの作品はシリーズ化されていて、『光の帝国』の他に『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』という作品があります。同じ常野一族の物語ではあるものの、それぞれ受ける印象が全く違うのが面白いところ。ぜひともその違いも含めお楽しみください!

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2位 『ライオンハート』

恩田作品の中では、もしかすると唯一(!)の恋愛小説かもしれません。「恩田さんが恋愛物~?」と思ったのも束の間、一度読み始めたらページを繰る手が止まりませんでした。時空を超えて、何度も何度もめぐり合うエリザベスとエドワード。未来、過去。出会った瞬間にすぐに分かり恋に落ちるものの、すぐに別れの時はやってくる…。なんという無情なストーリー。それでもいっそのこと出会わなければ良かったという気持ちは2人にはなく、いつも"世界が金色に弾けるような喜びを覚える"のです。

恋愛物としても輪廻転生物としても非の打ち所がなく、何度も何度も繰り返し読みたくなる名作です!!各章の最初には、ミレーやミュシャなどの絵画が載せられているのですが、これがまたストーリーにマッチしていて。若い人はもちろんのこと、しばらくそんな感情忘れていたわなんていう人も楽しめること間違いなし!胸を締め付けられるような極上のラブストーリーを堪能してくださいね。

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3位 『ネクロポリス』

これは本当に、好きな人にはたまらない設定!イギリスと日本の文化が融合した世界「V.ファー」が舞台。そこでは死者と交流することができる「ヒガン」という行事が毎年行われているのです。亡くなった人は「お客さん」と呼ばれ、ぶらりと帰ってくる。なんとも心惹かれるストーリーではないですか?鳥居につるされた死体、連続殺人事件。謎が謎を呼ぶ展開で、上下2冊あっという間に読み終えてしまうことでしょう。

生と死が当然のように交わる孤島「アナザーヒル」は、一見すると異世界のようでも日本的文化や慣習が取り入れられていて、読んでいて全く違和感がないのがすごいところ。一度設定を受け入れてしまえば、たちまち物語にのめりこんでしまいますよ!これぞファンタジーとミステリーの融合、少しだけ大風呂敷を広げた感はありますが、とても魅力的な作品です。

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4位 『七月に流れる花』『八月は冷たい城』

「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」を合言葉にしたレーベル、講談社ミステリーランド。全30冊の最後を飾ったのがこの『七月に流れる花』と、同時発売された同著者の『八月は冷たい城』です。ミステリーランドといえば、ジュブナイル向けというイメージが強いのですが、こちらの作品は子どもに読ませるにはかなりダーク。それでも私は「自分が子どもの頃に読みたかった!」と思いました(笑)

招かれた子どもたちは必ず行かねばならないという夏の城。緑色のツタに覆われた古城で、少年少女たちはそこで奇妙な共同生活を始めます。緑色をした不気味な「みどりおとこ」や、絶対に守らなければならないという3つのルール。なぜ彼らはこの城に招かれたのか?終盤で明らかになる真実は、あまりにも残酷で哀しく…。少女視点の『七月に流れる花』、少年視点の『八月は冷たい城』の順番で読むのが正解です。

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5位 『いのちのパレード』

読む人を選ぶ短編集、という言葉がピッタリでしょう。早川書房の「異色作家短編集」へのオマージュということで、シャーリイ・ジャクスンやジェラルド・カーシュ、ジャック・フィニイなど名だたる海外作家の作品にかなり寄せてきているのが特徴。もともと「異色作家短編集」は奇妙な味わいの短編を集めたものなので、なかなか万人受けは難しい作品揃いです。

ある不気味な噂のある閉鎖的な村へ観光に行き、その秘密を知ってしまう『観光旅行』や、シャーリイ・ジャクスンの『くじ』へのオマージュ『当籤者』はどこまでも不条理でとても好みです。また、少女たちがお城の部屋を目指して毎日少しずつ移動する『SUGOROKU』は、想像するとひどくシュールで不気味。ぜひ長編で読んでみたい作品満載です!気になった人はぜひ手に取ってみてくださいね。

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6位 『私と踊って』

『いのちのパレード』とはまた一味違う、さまざまなジャンルのお話を集めた短編集。例に漏れずファンタジー、ホラーからSFまで幅広く網羅されているのが特徴で、ひとつひとつは短いながらも読み応えのある一冊に仕上がっています。私は単行本で読んだのですが、まず驚いたのがこの本の装丁の美しさ。なんとカバー下にもひとつ短編があるんですよ!!これだから紙の本は、電子書籍にはない良さがありますよね。

さて、この作品集の中での一番のお気に入りは『忠告』。ある日知能を得た犬が、飼い主に迫り来る危険を知らせるために手紙をしたためるのですが…。後半に収録されている猫バージョンの『協力』と対になっている物語です。2つの結末の違いに、やっぱり人間の友は犬なのか?と思ってしまいます。また『少女界曼荼羅』の完成度も高く、短編では少しもったいない気がしました。

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【青春・爽やか系】恩田陸おすすめ5選


恩田陸青春小説

それでは、次は青春小説を見ていきましょう。爽やかな青春小説は、万人受けするタイプの作品が多く恩田初心者にもおすすめです!登場人物のキャラが立っているのも特徴で、どの作品もひとりひとりの心情を掘り下げながら進んでいきます。時にはぶつかり合い、時にはライバルとなり、時には共に涙を流す。読み進めると必ず感情移入してしまうキャラが出てくるはずです。直木賞・本屋大賞の受賞作もこのジャンルから出ているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

1位 『蜜蜂と遠雷』

直木賞と本屋大賞、史上初のW受賞!2017年に文学界の話題をさらったこの快挙は、記憶に新しいのではないでしょうか?そう、本を読まない人の間でも「恩田陸」という名前を浸透させたのがこの『蜜蜂と遠雷』です。ピアノコンクールを題材にした青春群像小説…となると、ピアノに興味がない人にはハードルが高い、と思いますよね?でもそこが恩田さんの腕の見せ所で、誰が読んでも最高に面白い小説に仕上がっています。

音楽に愛された天才少年、母の死後ピアノを止めてしまった少女、楽器店で働くサラリーマン、完璧な演奏技術を持つ優勝候補の少年。さまざまな登場人物が織り成す人間模様と、音楽の世界の厳しさが描かれています。音楽を活字で表現することの難しさを、恩田さんは見事にやってのけました!各コンテスタントの楽曲を聴きながら本書を読むと、なおさら臨場感が深まり素晴らしい読書体験ができることを約束します!!

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2位 『チョコレートコスモス』

「ガラスの仮面」へのオマージュだという本作は、舞台・演劇好きのみならず、その分野に全く興味がない人々の心をも魅了しました。もともと恩田さんはお芝居がお好きだと聞きますが、それを文章にして完璧なエンターテイメント作品に仕上げるのはまた別の才能ですよね。本作で二人のタイプの異なる天才が対決する舞台は、まさに「ガラスの仮面」。手に汗握るオーディションのシーンは、圧巻!の一言です。

『蜜蜂と遠雷』が音楽なら、『チョコレートコスモス』が演劇。その分野に疎い人でも、これらの作品によって追体験できるのは、やはり恩田さんのスピード感ある筆致のおかげでしょう。ひとたび読み始めれば、本の分厚さも気にならなくなるぐらいのめりこんでしまうこと間違いなしです!

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3位 『ネバーランド』

これぞ青春ですよ!舞台は伝統ある男子校です。年末、生徒たちが次々と帰省する中、親元へ帰らず寮に残る4人の少年たち。特に親友同士という訳ではなかった4人が、"告白ゲーム"を通して徐々に抱えている秘密が明らかになっていくというミステリー仕立ての青春小説です。自分は学生時代にこれだけ濃密な関係を築けていただろうか?と、つい自問してしまいます。

私がこの本を初めて読んだのは、ちょうど少年たちと同じくらいの年齢でした。当時は、こんな大人びた話し方をする子たちがいるのだろうか?と思ったものです。そして一回り以上彼らの年齢を上回った今、もう一度再読してみると4人はどこか大人になりきれていない子どもという印象で、少年たちの言葉の端々に逡巡や葛藤が見え隠れします。10代、20代、30代…と、読む年代によって印象が変わりそうな作品のひとつです。

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4位 『蛇行する川のほとり』

『ネバーランド』の少女版といったイメージ。恩田さんは同性の微妙な関係性を描くのが本当にお上手です。ある遠い夏の日、美しい少女たちが共有する秘密。咲き乱れるハルジョオン。そして10年前に起こったある殺人事件。まだ大人の女性になりきれない少女たちは、ひどく美しく、儚く、そして残酷です。この独特の描き方は、女性作家にしか表現できないのでは?と思います。

パズルのピースが埋まっていくように、少しずつ明らかになる真相は決して驚くべきものではありません。それでも少女たちの瑞々しさを、一幅の絵画に切り取ったような物語は、読者をノスタルジックな気分にさせること請け合いです。できれば、10代のうちに一度は読んでおきたい一冊です!

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5位 『夜のピクニック』

この作品で恩田陸という名前を知った!という人も、きっと多いことでしょう。そう、作者が世に広く知れ渡るようになったきっかけは、本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』です。高校生活最後のイベント「歩行祭」。それは、全校生徒が夜を徹して80キロの道のりをただひたすら歩くという行事なのです。

ある目的を胸に「歩行祭」に臨んだ主人公。恋愛物かと思いきや、その予想はあっさりと裏切られます。もう二度と戻らない青春時代だからこそ、読んでいてどこか感傷的な気持ちになるのかもしれません。ただ歩くだけなのに、なぜこんな面白いのか?それはぜひ本書を読んで確かめてください!おそらく恩田作品の中で、誰もが楽しめる小説NO1かと思います。

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【ホラー系】恩田陸おすすめ4選


恩田陸ホラー小説

さて、いよいよスタッフSの一番のおすすめ!!ホラー系の恩田作品を見ていきましょう。恩田さんは、決してホラー小説作家ではありません。にもかかわらず、これだけ人間の内面の恐怖を描き出せる作家さんは、そうそういないのではないかと常々思っています。何年経ってもその光景を思い出してしまうような恐怖感や、どろりとした薄気味悪さ。ホラー好きさんも満足できるような作品が揃っていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

1位 『禁じられた楽園』

ホラー編の堂々1位は、何と言っても『禁じられた楽園』です!アダムとイブを連想させるようなホラーとはそぐわないタイトルですが、これは相当怖いです。若き天才美術家が熊野の山奥に作った、巨大な野外美術館。そこはお化け屋敷とはまた違う、自分の過去のトラウマや、深層心理を徹底的にえぐりだすインスタレーションだったのです。

人間誰もが怖いものと、ある特定の人にだけ恐怖感を与えるものがあります。これは後者です。本当に自分が恐ろしいものや心の傷は、口に出すことさえできずに普段は心の奥底にしまいこんでありますよね。それがビジュアルとなって現れてきたとしたら…。何度読んでも鳥肌が立つほど怖いです。ある意味私にとっては、この本がトラウマかもしれません(笑)

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2位 『月の裏側』

「得体が知れない」という表現がぴったりのSFホラー。ある日本の水郷都市で相次ぐ失踪事件。後日、失踪した人々は無事戻ってきたものの、その間の記憶がないという不思議な現象を描いた作品です。じわじわと侵食してくる恐怖は、読み手をもどこか落ち着かなく不安な気持ちにさせます。「盗まれる」「人間もどき」という言葉を効果的に使い、終始薄気味悪い雰囲気に包まれているのが特徴。

ちなみにこちらの作品、ジャック・フィニイの名作SF『盗まれた町』へのオマージュです。スタッフSは、『盗まれた町』も読みましたが、正直『月の裏側』のほうが日本人にとってはピンポイントで恐怖のツボを突いてくる作品だと思いました。作中で登場する多聞さんは、『不連続の世界』という連作短編集でも出てきますので、飄々としたキャラが好きな人はこちらもぜひ!

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3位 『MAZE』

『MAZE』『クレオパトラの夢』『ブラック・ベルベット』と続く神原恵弥シリーズ一作目。主人公・恵弥は、肉体的にはれっきとした男性ですが、女性一家で育ったためにオネエ言葉で話すというちょっと変わったキャラ設定なんです。ただ、眉目秀麗・頭脳明晰の凄腕ウイルスハンターというインパクトのある人物のため、恩田作品の中でもひそかに人気のある登場人物でもあります。

アジアの西の果ての荒野に立つ"豆腐"型をした謎の建物。その中に入ると戻ってこれなくなる人間が多数いるのです。MAZEというタイトルの通り、迷宮のような建物にはどんな秘密があるのか?「人間消失」のルールとは何なのか?序盤からグイグイと引きこまれるスピード感のある展開に、時折ゾクリと鳥肌が立つようなホラー描写。時間に余裕のある人は、シリーズで読んでいただきたいです。

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4位 『エンドゲーム 常野物語』

『光の帝国』『蒲公英草紙』につづく常野物語シリーズ三作目。前二作とは全く毛色が違い、かなりホラー色の強い作品となっています。不思議な能力を持つ拝島母娘の物語は、あまりにもブラック。『光の帝国』のような優しいストーリーを期待している読者には、もしかするとかなり衝撃的かもしれません。「裏返す」「裏返される」「洗濯する」などのどこか不穏なワードと、拝島一家が戦い続けている「あれ」。

この作品は、かなり読む人を選びます。何しろ全てが抽象的だし、スッキリとした大団円が待っているわけではありません。パタリパタリとオセロがひっくり返されていくような奇妙で落ち着かない感覚、とでも言うのでしょうか。一部ギョッとするような描写があるので、決して夜に読んではいけませんよ…。

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【SF系】恩田陸おすすめ3選


恩田陸のおすすめSF小説

あまりイメージはないかもしれませんが、恩田さんはSF系小説も書かれています。もともと引き出しの多い作家さんではありますが、私は正直良い意味で「こんなぶっとんだ作品も書けるんだ!」と驚きました。奇想天外、それでいて現実と隣り合わせのリアリティな作風は、レイ・ブラッドベリやコンラッドなど海外の文学界の巨匠を彷彿とさせますね。恩田SFは短編、長編ともにおすすめですが、スタッフSが特にお気に入りの3作品をご紹介します!

1位 『ロミオとロミオは永遠に』

15年以上も前の作品になりますが、未だに私の中で5本の指に入るぐらい大好きなSF小説です。ひどくカオスで(もちろん褒め言葉です!)どこまでも走り続けるこの疾走感。おそらく若い頃の恩田さんだったからこそ、書けた作品なのではないかなと思います。荒廃した近未来の日本が舞台です。汚染された地球で唯一エリートになる方法は、"大東京学園"の卒業総代になること。

苛酷な入学試験レースを勝ち抜いた2人の少年アキラとシゲルが主人公なのですが、この二人の存在がかすれてしまうほど、20世紀のサブカルチャーへのオマージュとごちゃまぜ感がすごい!いろいろな元ネタが分かるパロディだったり、バトル・ロワイヤルを連想させるゼロサムゲーム的な展開は、おそらく勢いがないと読めません(笑)ただ、ひとたびページをめくれば怒涛のごとく読み進められますよ。

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2位 『夜の底は柔らかな幻』

恩田さんの中では、比較的新しいSF作品です。直木賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』あたりから入った人は、「なんじゃこりゃ!」と思うかもしれませんね。でも、おそらく古くからの恩田ファンは「久々に恩田ワールド全開だ」と歓喜したことでしょう。作者が楽しみながら書いたのがが伝わってくるような作品で、これぞ紛れもなく恩田陸の魅力のひとつでもあります。

国家権力の及ばない「途鎖国」を舞台に、「在色者」とよばれる特殊能力を持った者たちの戦いを描いたSF小説。主人公の実邦が密入国するところから物語は始まるのですが、常時手に汗握る展開で訳の分からぬままストーリーは進んでいきます。閉鎖的な空間と、異能者たちのサイキックアクションは、マーベルで映画化されたらさぞや面白いだろうなぁと思いました。本作品のスピンオフとして『終わりなき夜に生まれつく』という作品が出ているのであわせてどうぞ!

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3位 『ねじの回転』

『ねじの回転』というタイトルを聞くと、ヘンリー・ジェイムズの同名怪奇小説を思い浮かべる人もいるかと思いますが、この作品はバリバリのSF小説です。恩田作品の中では、一番SFらしいSFなのではないでしょうか。タイムマシンで時間遡行ができるようになった時代。人類滅亡を阻止するために、歴史に介入する修復地点に選ばれたのは二・二六事件。学校で勉強したけど、全然詳細を覚えていない!という人もいそうですね(笑)

SF小説で避けては通れないのがタイム・パラドックス。過去に介入することによって起こる矛盾を、どのように解決するのか?頭を整理させながら読まないと途端に混乱してしまうので注意が必要です。後世の人たちが過去を変えたとして、その時間軸で生きた当人たちはその変化に気付くのでしょうか…。読み終えた後に、すぐに再読したくなること請け合いです。

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【エンタメ】恩田陸おすすめ2選


恩田陸のおすすめエンタメ小説

では最後に、ジャンルに収まりきらなかったおすすめエンタメ小説をご紹介しましょう。ミステリーやホラーなどジャンル分けが難しい!でも読み始めれば絶対に面白い2冊です。

1位 『ドミノ』

実は恩田作品の中でもかなり人気のある一冊で、万人受けすること間違いなし!!ジャンルとしてはコメディに分類されるかもしれませんが、どんな人にも自信を持っておすすめできる群像劇です。東京駅を舞台に、全く関係のない27人+1匹の日常が交錯し、やがてひとつにつながる様はまさにドミノ倒しのよう。あれよあれよという間に収束していくストーリーは、なんとも小気味良く、時折プッと吹き出してしまう面白さです。

これだけの数の登場人物を、読者が混乱しないようにきっちりと書き分けた恩田さんの筆力には脱帽です。小さな伏線をあちこちに散りばめてから結末をまとめたのか、それとも結末ありきでそこから派生させていったのか。この作品を読むたびに、恩田さんがどんなプロットを組んだのか気になってたまらないスタッフSです。テンポ良いドタバタ劇をお楽しみください!

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2位 『上と外』

ジャンルにとらわれない恩田さんですが、驚くことにサバイバルアクションものも書かれています。両親の離婚で、離れて暮らしていた中学生の練と小学生の千華子。二人は夏休みを利用して、母とともに考古学者の父親がいるマヤ遺跡までやってきますが、その途中に軍事クーデターに巻き込まれることに。ジャングルに取り残された2人はどうなるのか?そこから子どもたちだけのサバイバル生活が始まります。

インディジョーンズばりの冒険要素あり、そこにマヤ文明が絡んでくるとなると好きな人はもうたまらないでしょう。中学生と小学生の兄妹で一体何ができるのか?と疑問ですが、なぜかやたらとサバイバル知識がある二人。子どもが主人公の作品はもどかしくイライラさせられるケースが多いのですが、本作品の兄妹は大人びているのですぐにのめりこめますよ。究極のエンタメ小説、ぜひ手に取ってみてくださいね。

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まとめ


公園のベンチに詰まれた本

さて、『もったいない本舗』のスタッフSがおすすめする恩田陸作品30作品を厳選しましたが、いかがでしたか?まだ恩田作品をあまり読んだことがない!という人の参考になれば幸いです。

恩田陸さんは、前述した通りひとつのジャンルにとらわれない作家です。ミステリーといえば宮部みゆきさんや東野圭吾さん、ファンタジーといえば梨木香穂さんや長野まゆみさん、ラブコメといえば有川浩さんや森見登美彦さん…というように通常得意ジャンルが決まっているものですが、恩田さんのようにあらゆるジャンルを幅広く手掛ける作家さんはそうそういないのではないでしょうか。

日々精力的に執筆を続けている恩田さん、今ではその著作は膨大になりました。シリーズごとに読むも良し、出版年順に読むも良し、好きなジャンルを中心に読むも良し!恩田さんの個性あふれる独創的な世界観や、唯一無二の雰囲気を存分にお楽しみください!

『もったいない本舗』では、今回ご紹介した作品以外にもたくさんの恩田作品を販売しています。いろいろな作品を読んで、あなたも〈ノスタルジアの魔術師〉の魔法にかけられてみてはいかがでしょうか。

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