- 2018/11/29
- 本
乙一ってどんな作家?オススメ小説ランキングトップ10!
「乙一」という作家をご存知ですか?時には、切なく胸を締め付けられるような作品を。時には、恐ろしさのあまり背筋が凍りつくような作品を。乙一さんは、ストーリーテラーとして卓越した表現力を持つ作家です。『もったいない本舗』スタッフおすすめの乙一作品10冊をご紹介!!
「乙一」さんってどんな小説家?天才と呼ばれる訳とは
皆さん、乙一(おついち)という作家さんをご存知でしょうか?1996年に『夏と花火と私の死体』で鮮烈なるデビューを飾って以来、ミステリー小説のみならず、ファンタジー、ホラーなどジャンルの壁を超えた作品を次々と世に送り出してきました。乙一さんを一言で言い表すとまさに「天才」。16歳で執筆したデビュー作がジャンプ小説大賞を受賞したかと思えば、『GOTH リストカット事件』では本格ミステリ大賞を受賞。他にもさまざまな賞にランクインしながらも、一向にご本人の作風や顔が見えてこないという、なんとも不思議なカメレオンのような作家です。
今でこそ、乙一さんは読書家の間では広く知られる存在になりましたが、初期の頃はそのコロコロ変化する作風に戸惑う人も続出!切なく心温まる作品を書かせれば間違いなく一級品なのに、その一方では、残酷な描写を含むブラックな作品もまたじわじわと人気を集めていたのです。そのためファンの間では「白乙一」「黒乙一」と呼ばれ区別されるようになりました。どの作品にも共通するのは、その表現力。どこか冷めた、読者を煙に巻くような文章は、デビュー当時から人々を虜にしてきました。
古本店『もったいない本舗』のスタッフSも、実はデビュー当時から乙一さんに魅了された一人です。「白乙一」「黒乙一」どちらか一方だけ読むなんてもったいない!どちらもそれぞれの魅力や面白さがあり、白黒あわせて読んで初めて乙一さんの天才っぷりが実感できるかと思います。今回は、スタッフSが独断と偏見で選んだ「おすすめ乙一作品」をご紹介します!!タイトルの横に(黒)(白)と区別してあるので、参考にしてみて下さいね。
【スタッフおすすめ】乙一作品ランキングトップ10!
1位 失はれる物語(白) 乙一さん初心者ならば、真っ先におすすめしたいのが『失はれる物語』です。切なさと優しさにあふれるハートフルな作品集。個人的に最も好きなのは、事故により全身不随になってしまった主人公と、彼を支えるピアニストの妻を描いた表題作「失はれる物語」です。唯一残ったのは、右腕の皮膚感覚のみ。光と音のない場所というのは、どのような世界なのでしょうか。感覚を研ぎ澄ませた右腕からは、妻の心情の変化が読み取れるようになるのですが、やがて主人公が下した決断とは…? |
2位 ZOO(黒)(白) 「何なんだ、これは。」というのが当時の帯のキャッチコピーでした。実際に読んでみて、まさにその言葉しか出てこない…というのもうなずける作品かと思います。スタッフSは、この作品で乙一さんの素晴らしい才能に気付きました。そして、おそらく読む人が読めば「全く受け付けられない」というトラウマ級の作品でもあります! |
3位 平面いぬ。(白) 『平面いぬ。』は、ファンタジー系作品中心の短編集。そのインパクトの強さからホラーばかりが記憶に残ってしまう乙一さんですが、ピリリと小さな毒を散りばめたファンタジーもまたお得意なジャンルなんです!特にスタッフSが気に入っているのが「BLUE」です。ある人形作りが作った4体の人形。王子、王女、騎士、白馬。そして彼らの余った生地で作られた不格好な人形ブルーのお話。命が宿った人形、心優しいブルーの末路とは…何ともいえぬ物悲しさが残ります。 |
4位 GOTH リストカット事件(黒) 第3回本格ミステリ大賞受賞作品。ミステリとはいえ、一部グロテスクな描写もあるため苦手な人は要注意です!それでもグロ耐性がないというだけの理由で、読まないというのはもったいない!一度読み始めれば、ページをめくりたい衝動と、読み進めることへの罪悪感のせめぎあいで四苦八苦するはず(笑)。それぐらい、乙一作品の中でもかなり挑戦的な連作短編集。 |
5位 天帝妖狐(白) 白か黒か、微妙なラインではありますが、読後感を考えると白乙一になるのでしょうか。「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」の2編が収められています。「A MASKED BALL」は、トイレの壁に落書きをすることで、顔も知らない相手とコミュニケーションを取るというお話。一見コメディになりそうな展開をミステリに繋げるとは、さすが乙一さんです。学生時代を経験した人なら、誰もがノスタルジックな気分に浸ること請け合いです。犯人は……やはりビックリ。 |
6位 夏と花火と私の死体(黒) 第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。弱冠16歳で書き上げた作品だといいますが、その完成度の高さに驚きです!何といっても着眼点が素晴らしい。タイトルを見て「私の死体って何のことだろう?」と思った方もいるのではないでしょうか。そう、この作品の語り手は”死体”なのです。9歳の少女が、友達に木から突き落とされ死亡。思いがけず殺人を犯してしまった少女と、その兄が死体を隠そうとするお話です。 |
7位 箱庭図書館(白) こちらはちょっと異色な作品です。集英社の運営サイト「オツイチ小説再生工場」で生み出された企画で、読者の"ボツ原稿"を乙一さんが全く別な形にリライトするというもの。"ボツ原稿"とはいえ、投稿者の渾身の作品であることは間違いないので、それがどんな形に生まれ変わるかというのは当人も気になるところですよね! |
8位 暗黒童話(黒) ある日左目の眼球を失ってしまった少女が、眼球移植手術を受けた後に、不思議な光景を見るようになるという物語です。タイトルの通りまさに『暗黒童話』。ホラーファンタジーとでも言うのでしょうか、ショッキングな描写も多いのですが意外にも一筋の光が見えるラストで、後味は悪くないです。あまりにも非現実的なことがごく自然に描かれているのもまた、物語に入り込める所以かもしれません。 |
9位 暗いところで待ち合わせ(白) 表紙がダークなので勘違いしがちですが、この『暗いところで待ち合わせ』は全くホラーではありません!ある盲目の女性の家に、殺人事件の容疑者の男が身を隠すというお話。(ジャンルは何になるんでしょう?恋愛小説?)女性も男も、「孤独」という点ではある意味似た者同士。一体どんな結末に行き着くんだろう?とドキドキしながら読み進めました。 |
10位 銃とチョコレート(白) ジュブナイル向けの講談社ミステリーランドから出版された一冊。やはり少年少女向けということもあり、濃厚な乙一ワールドを期待している読者には少し肩透かしかもしれません。それでも、読み始めると「あぁやはり乙一さんだ」と実感できるような巧みな筋運びはさすがだなと思います。 |
実は別名義でも活動!おすすめ作品は?
ここまで10冊のおすすめ作品を紹介してきましたが、実は乙一さん、別名義でも執筆をされているってご存知ですか?2011年に、乙一さんはご自身のTwitterで「山白朝子」と「中田永一」という別名義でも活動されていることを明らかにしました。スタッフSも、当時よりファンの間で「これは乙一さんではないのか?」と噂になっていたのをよく覚えています。確かにどちらの名義でも乙一節は随所に見られるものの、その作風は驚くほど異なっているので、ファンも確信が持てなかったのだと思います(笑)
「山白朝子」恐ろしくも美しい幻想系ホラー |
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スタッフSが、実は乙一名義以上に気に入っているのが「山白朝子」名義の作品です!恐ろしさと美しさは表裏一体なのだなと思わせるような幻想ホラーがメイン。幼い頃おばあちゃんの家で読み聞かせられた怪談というイメージでしょうか。 |
「中田永一」青春・恋愛がメインの爽やか系ストーリー |
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「中田永一」名義の作品は、映画化でも話題になっているのでご存知の人も多いのではないでしょうか?例えば『百瀬、こっちを向いて』や『吉祥寺の朝日奈くん』『くちびるに歌を』など豪華キャストにより続々と映像化されていますよね。爽やかで瑞々しさにあふれた作風が特徴で、まさか乙一さんと同人物が書いたとは全く想像ができません!切なく、甘酸っぱい青春小説は読後に温かさと優しさを残してくれます。 |
乙一、中田永一、山白朝子。「どれも読んでみたいけれど、どの作品から読めば良いんだろう?」という人へのオススメ!!ぜひ『メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション』を読んでみてください!こちらの短編小説は、乙一さんの全名義での作品を収録したアンソロジー。ちなみに解説は「安達寛高」さんですが、実はこちらは乙一さんの本名。というわけで、徹頭徹尾まるっと一冊乙一ワールドというわけなんです。それぞれのテイストが楽しめるのでとってもお得ですよね。ちなみに、本作に収められている『山羊座の友人』は、ミヨカワ将さんによって漫画化もされているのですが、切ないお話に美しい作画がマッチしていてこれまた素晴らしいです。ぜひ漫画版もあわせてどうぞ!
まとめ
さて、古本店『もったいない本舗』スタッフSのおすすめ乙一作品をご紹介してきましたが、興味のある作品はありましたか?乙一さんは、まさしく稀代のストーリーテラーと言っても過言ではありません!初期のライトノベル風の作品から、ミステリー、ホラー、幻想小説まで、名義によって文体もテイストも全く異なる作家さんです。本好きの性として「コンプリートしてやろう!」と意気込みたい気持ちもわかりますが(笑)、まずは自分に合った乙一作品を中心に読み進めてみてくださいね。
古本店『もったいない本舗』では今回ご紹介した作品はもちろん、その他の作品も多数在庫しております。中古本は新品の本よりお得なお値段設定になっていますので、そのぶんたくさんの本を購入することができますよね!ぜひ、色んな種類の作品に触れて、一つの枠にとらわれない魅力的な乙一ワールドを少しでも多くご堪能ください!
ライティング担当 : sakura札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。 |