- 2024/04/11
- 2024/03/28
【本屋大賞2024】ノミネート作10冊を一挙紹介!今年の大賞は?
<本屋大賞2024>書店員がいちばん売りたい本を選ぶ「本屋大賞」。2024年の大賞が発表されました!今年も例のごとく甲乙つけがたい傑作揃い。古本店『もったいない本舗』のスタッフも実際に10作品読んでみました!皆さんもぜひチェックして下さいね。
「本屋大賞」ってどんな賞?
<本屋大賞>とは、NPO法人・本屋大賞実行委員会が運営する文学賞。全国の書店員が投票により「いちばん!売りたい本」を選ぶ賞です。
この賞を選ぶのは書店員の皆さん。芥川賞や直木賞など決まった選考委員が選ぶ文学賞とは違って、投票するのが私たちと同じいち読者の視点で決まる賞ということもあり、毎年大盛り上がりのイベントです!小説の技巧や専門的な知識などは関係なく、単純に「とにかく面白い、他の人にも読んで欲しい」という本が選出されるため、最近では数多ある文学賞の中でもとりわけ人気のある賞になりました。
<2024年本屋大賞の発表スケジュール>
2023年12月1日(金) | 一次投票スタート。一人3作品を選び投票する。 |
2024年2月1日(木) | ノミネート作品発表&二次投票スタート。 ノミネートされた10作品をすべて読み、ベスト3に順位をつけて投票する。 |
2024年4月10日(水) | 大賞作品発表!翻訳小説部門の結果発表も。 |
<2024年本屋大賞発表!>大賞&今年のノミネート10作品は?
さて、それでは2024年4月10日に発表された本屋大賞<大賞>作品と、ノミネートされた10作品はどんな本なのか見ていきましょう!芥川賞作家や直木賞作家、そして2023年<本屋大賞>を受賞した『汝、星のごとく』の続編である『星を編む』も選出されています。本屋大賞ノミネート常連である青山美智子さんの『リカバリー・カバヒコ』は今年もノミネート!
2024年本屋大賞(第21回) |
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大賞 | 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈) |
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2位 | 『水車小屋のネネ』(津村記久子) |
3位 | 『存在のすべてを』(塩田武士) |
4位 | 『スピノザの診察室』(夏川草介) |
5位 | 『レーエンデ国物語』(多崎礼) |
6位 | 『黄色い家』(川上未映子) |
7位 | 『リカバリー・カバヒコ』(青山美智子) |
8位 | 『星を編む』(凪良ゆう) |
9位 | 『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』(知念実希人) |
10位 | 『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲) |
【書評】各ノミネート作品のあらすじ&感想
毎年感じることなのですが、ノミネートされた10作品はジャンル問わずどれもが1位をとってもおかしくないほどの傑作揃いです!でも本屋大賞のコンセプトは世の中の読者に「一番売りたい」と自信を持っておすすめする作品。そのため、良い意味で万人受けする作品が大賞になることが多いです。逆にあるジャンルに偏ったクセの強い作品は選ばれない傾向が強いようですね。
古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraも、本屋大賞候補作10作品を実際に読んでみました!個人的におすすめしたい作品は星マークを付けていますので、ぜひ皆さんの読書計画の参考になれば幸いです。
大賞 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈)
★スタッフおすすめ!
本屋大賞ノミネート作はわりとしっとりとした余韻の作品が多いのですが、今年の10冊の中で唯一異彩を放っているのが本作『成瀬は天下を取りにいく』です。これがデビュー作とは思えないほどの完成度の高さ!青春小説にちょっとした苦手意識を持つsakuraでも、読了後にはすっかり成瀬の虜になってしまうほどでした。「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」という突飛な冒頭から始まる本作。中2の成瀬あかりは、少し風変わりな女の子。ただ、女子特有の「天然」とはちょっと違って、閉店を迎える西武大津店に毎日通い中継に映ったり、M-1に挑戦して全力で取り組んだり。しかもすべてを完璧にこなすという徹底っぷり。そして成瀬の親友である島崎との関係も非常に気持ちの良いもので、彼女たちの日常は羨ましいほどに爽快感にあふれています。続編として『成瀬は信じた道をいく』が発売中。これぞ新しい形の青春小説です!
2位 『水車小屋のネネ』(津村記久子)
★スタッフおすすめ!
実はsakuraは、この『水車小屋のネネ』で初めて津村作品に触れ、今後は絶対に津村さんを追いかけようと心に決めました!決して派手な起伏があるわけではないのですが、妙に心の琴線を震わせるのです。親から離れるために家を出た18歳と8歳という年の離れた姉妹の半生が淡々と綴られていくのですが、姉は母親に大学入学金を使い込まれ入学できず、妹は母親の恋人に虐待を受けているという悲惨な環境でありながら不思議と姉妹には悲壮感はありません。姉が妹の母親代わりになり、新しい土地でさまざまな人たちに助けられながらの日常が描かれます。そしてタイトルにある「ネネ」とはオウムの一種であるヨウムの名前。このネネのおしゃべりがまた良い味を出しているのです。決して見返りを求めない優しさのバトンは引き継がれ、最後には温かな感動に包まれる作品でした。
3位 『存在のすべてを』(塩田武士)
書店員にもファンの多い塩田武士さんの新作は、ある30年前の「二児同時誘拐事件」の真相を追う社会派ミステリーです。多額の身代金が絡む少年の誘拐事件は、3年後に祖父母のもとに突然帰ってくるという結末で幕を下ろします。少年は3年間、どこで何をしていたのか?誘拐事件の裏に隠された「空白の3年間」を、主人公である記者が細い線をたどり綿密な取材を重ね少しずつ紐解いていきます。実は最初こそ、淡々とした取材メモが続くので正直少し読みづらい、と思っていました。でも、そこで読むのを諦めないで欲しい…!中盤以降、ガラリと流れが変わり怒涛の勢いで真相に迫っていく過程は"圧巻"の一言。本作を読んでいると、善悪の基準って実に曖昧なものだなと感じました。正しくあることが幸福に繋がるとは限らないのだと実感させられます。
4位 『スピノザの診察室』(夏川草介)
夏川草介さんといえば『神様のカルテ』があまりにも有名ですが、それを超える作品はそうそう書けないだろう…と思っていました。でも今回ノミネートされた『スピノザの診察室』は、『神様のカルテ』以上に心に響くものがあり、読了後は涙が止まりませんでした。主人公の哲郎は大学病院で働く将来を見込まれた凄腕医師。でもある事情からあっさりとその地位を捨て、京都の町医者として働くことに。決して患者を緊張させず、同僚たちからも親しまれ、軽々と難しい手術を成功させる哲郎の隠された過去に迫っていきます。カルテに向き合うのではなく、きちんと人間に向き合う哲郎の人としての度量の大きさ。著者が現役医師としてさまざまな命を看取ったからこそ到達できる領域とでも言うのでしょうか。終末医療の向き合い方についても考えさせられる傑作医療小説です。
5位 『レーエンデ国物語』(多崎礼)
★スタッフおすすめ!
子どもの頃に夢中で読みふけったファンタジー小説は、いつしか歳を重ねるにつれて距離を置いてしまうものです。でも、本作『レーエンデ国物語』を読んで、ページをめくるのももどかしい程にのめりこみました。大人になっても、こんなにも物語に没入することができる上質なファンタジー小説を執筆してくれた多崎先生には感謝しかありません…!<全5巻>予定の本シリーズは構想8年、執筆6年という超大作で、呪われた地・レーエンデを舞台としてさまざまな時代の革命のお話が綴られていきます。恐ろしくも幻想的で、読了後に放心状態になるほどの衝撃的な展開は、一度読むとなかなか現実世界に戻って来られない沼小説。2023年に1巻『レーエンデ国物語』2巻『レーエンデ国物語 月と太陽』3巻『レーエンデ国物語 喝采か沈黙か』の3冊が発売され、2024年4月には4巻『レーエンデ国物語 夜明け前』が発売予定。完結した暁にはどんな世界を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。
6位 『黄色い家』(川上未映子)
★スタッフおすすめ!
『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子さんの最新作『黄色い家』。この作品はとにかく「すさまじい」としか表現しようがありません。現代社会の暗部を描いたクライムノベルであり、少女たちの青春小説でもあり、どこまでも歪な「家族」の形を描いたノワール小説でもあります。17歳の夏、それぞれの家庭に問題を抱えた少女たちは親元を離れ、ある女性のもとで共同生活を始めます。生きていくためにはお金が必要。やがて彼女たちが手を染めたのはカード犯罪の出し子だったのです。彼女たちが貧困と劣悪な環境を捨てて、真っ当な生き方を選ぶ分岐点がどこかにあったのでしょうか。単行本で600ページを超える超ボリュームなのですが、時間を忘れて読みふけるくらい面白い小説です。「王様のブランチBOOK大賞2023」も受賞した本作『黄色い家』ですが、今年は本屋大賞受賞ならず…!
7位 『リカバリー・カバヒコ』(青山美智子)
本屋大賞ノミネート常連の青山美智子さん。今回の連作短編集『リカバリー・カバヒコ』で4年連続のノミネートとなります。ある分譲マンションの近くにある公園に、ぽつんと佇んでいるカバのアニマルライド。泣き笑いのような表情を浮かべた古びたカバですが、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説があるのです。青山さんの描く世界は優しく、ありのままの情けない自分をいつも肯定してくれるかのような気持ちにさせられます。私たちは常に限られたコミュニティの中で生活しています。辛いことや不快なことがあっても、外に吐き出すこともできず呑み込んでしまうことも多いですよね。でもそんなときカバヒコがいてくれたら。決してカバヒコがすべてを解決してくれるわけではなく、そっと背中を後押ししてくれるような存在がまた愛おしいです。
8位 『星を編む』(凪良ゆう)
★スタッフおすすめ!
2023年<本屋大賞>を受賞した『汝、星のごとく』。どこまでも透き通るような儚さと、人生のすべてを捧げるような狂おしい愛の形が描かれた恋愛小説で、涙が枯れるほどの号泣とともに心の深奥に刻まれた読者も多いはず。その続編である『星を編む』が今年ノミネートされました。「またあの感情を呼び起こされるのか」というチクリとした痛みと「みんなに再会できる」というほのかな期待。相反する感情を胸に読み始めましたが、やはり凪良先生は神でした。『汝、星のごとく』の後日譚でありながら『星を編む』を読むことで補完される物語だったのです。前作を読んだときは、ぽっかりと胸に空いた空洞を抱えながらの切ない読書体験だったのですが、本作はパズルのピースが埋まるにつれてその心の痛みも包み込んでくれるような優しい作品でした。凪いだ海をたゆたっているような穏やかな感覚でしたが、最後のあの一文の破壊力はすごい。櫂の言葉にやはり号泣せずにはいられませんでした。
9位 『放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件』(知念実希人)
なんと、児童書が本屋大賞にノミネートされる日が来ようとは…!史上初ではないでしょうか。しかも著者は現役医師としても有名な知念実希人先生。過去にも『ムゲンのi』や『硝子の塔の殺人』でも本屋大賞にノミネートされてきたのでご存じの方も多いのでは。"親子で楽しめる本格ミステリ"と銘打っている本シリーズ『放課後ミステリクラブ』は、しっかりとしたトリックがあり、大人が読んでも楽しめるミステリーに仕上がっています。作中で天馬くんが愛読している海外ミステリー小説の紹介も面白く、きっと子どもの頃に読んでいたら「天馬くんと同じ小説を読みたい!」と親にねだっていたことでしょう。お子さんが本に興味を持つきっかけになる作品だと思います。本シリーズは今回ノミネートされた1作目につづき、現在『2雪のミステリーサークル事件』『3動くカメの銅像事件』の3冊が発売されています。
10位 『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲)
直木賞作家である小川哲さんの小説ジャンルは非常に幅広く、デビュー当初はSF作家というイメージが強かったものの、昨年の本屋大賞では異色のクイズ小説『君のクイズ』がノミネートされていたことが記憶に新しいですよね。そして2年連続ノミネートとなった今年の作品は、あらゆる人々の承認欲求のなれの果てを描いた連作短編集『君が手にするはずだった黄金について』。主人公はどうやら著者である小川さんご自身のようで、エッセイなのかと思わせるような語り口が続きます。人間の嘘や自己顕示欲が浮き彫りになり、結果凋落を目の当たりにするという情けない展開ばかりなのですが何故か憎めない人間ばかり。スルッと引き込まれてしまうなんとも不思議な小説です。
まとめ
2024年で21回目となる<本屋大賞>。大賞のみならず、過去にノミネートされてきた作品はいずれも世に知れ渡る人気作品となりました。今年ノミネートされた10作品をすべてコンプリートしてみるのも楽しいですし、興味のある作品だけ拾って読んでみるのも良いかもしれません!
古本店『もったいない本舗』では、過去20年のノミネート作品についても数多く取り揃えています。普段読まないジャンルこそ、過去作品から開拓してみるのも面白いですよ。ぜひあなたのお気に入りの一冊を見つけて下さいね!
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ライティング担当 : sakura札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。 |