• 2020/04/24

【本屋大賞2020】大賞受賞作は?歴代ノミネート作品もご紹介!

書店員の投票で選ばれる<本屋大賞>は、私たち一般人の感覚に近く、誰が読んでも面白い傑作揃いです。4月7日に発表された2020年本屋大賞とノミネート作品に加え、古本店『もったいない本舗』のスタッフが歴代のノミネート作品からおすすめする本をランキング形式でご紹介します!

本屋大賞2020ノミネート作品

本屋大賞ってどんな賞?

皆さん、<本屋大賞>ってご存じですか?毎年春になると盛り上がっているイメージがありますよね。<本屋大賞>とは、全国の書店員が自分が読んで「面白かった」「お客さまにも薦めたい」本を投票する賞です。2004年に設立された文学賞で、2020年で早くも17回目に突入します。

芥川賞や直木賞などの受賞作を読んで、「自分にはちょっと合わないかも…」と感じた経験がある人はいませんか?文学賞はそれぞれにコンセプトがあるので、中には万人受けしない作品もあります。それに比べて<本屋大賞>は、投票する書店員も私たちと同じ本を愛する一読者ですから、限りなく一般人の感覚に近い賞と言えるのではないでしょうか。

<本屋大賞>の選考方法は、以下のようになっています。

1 一次投票 一人3作品を選び投票する。
2 一次投票を集計し、上位10作品をノミネート本として発表する。
3 二次投票 ノミネート作品をすべて読み、ベスト3を投票する。
4 二次投票を集計し、大賞作品を決定する。

このように段階を踏んで大賞作品が選ばれていることがわかりましたね。<本屋大賞>にノミネートされた作品は、書店員が「ぜひ皆さんに読んで欲しい!」「自分のお店で売りたい!」と思った本なので、順位が付けることが難しいほど傑作揃いなのが特徴です。

<決定版>2020年本屋大賞!ノミネート作品も

それでは、まず最初に2020年4月7日に発表された<2020年本屋大賞>大賞受賞作と他のノミネート作品を見ていきましょう!古本店『もったいない本舗』の読書好きスタッフsakuraも、ノミネート作含めすべて読んでみましたので、ぜひ参考にしてみて下さいね。

2020年本屋大賞(第17回) ※クリックすると各作品の感想に移動します。
順位 タイトル(著者) 得点
大賞 流浪の月(著者:凪良ゆう) 432点
2位 ライオンのおやつ(著者:小川糸) 380点
3位 線は、僕を描く(著者:砥上裕將) 327点
4位 ノースライト(著者:横山秀夫) 275.5点
5位 熱源(著者:川越宗一) 214点
6位 medium霊媒探偵城塚翡翠(著者:相沢沙呼) 198点
7位 夏物語(著者:川上未映子) 156点
8位 ムゲンのi(著者:知念実希人) 147.5点
9位 店長がバカすぎて(著者:早見和真) 105.5点
10位 むかしむかしあるところに、死体がありました。(著者:青柳碧人) 91.5点

大賞  流浪の月(著者:凪良ゆう)

流浪の月

流浪の月

作者凪良ゆう

出版社東京創元社

出版年月2019年8月

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大賞受賞おめでとうございます!著者の凪良ゆうさんは、BL作家として10年以上のキャリアを持つという異色の経歴の持ち主。BL作家が一般文芸作品で、しかも本屋大賞を受賞なんて、素晴らしいことですよね!それもそのはずで、読んでいてこんなにも胸をざわつかせる作品は珍しく、sakuraもページを繰る手が止まらず一日で読み終えてしまいました。

ちょっと風変わりな両親のもとで幸せに暮らしていた少女・更紗(さらさ)。父親の死を受け止められず、母親は出奔。伯母の家に引き取られた彼女は、どこにも居場所がなく宙ぶらりんの状態で日々を過ごします。そんな中ある日公園で出会った青年は、近所でロリコンだと噂されている青年・文(ふみ)でした。

この愛の形を、どのように表現したら良いのでしょう。男子大学生と小学生の少女の関係と言うと、"犯罪"という言葉が真っ先に脳裏に浮かぶのではないでしょうか。「女児誘拐」「性犯罪」「可哀想」世間が善意のレッテルを貼りますが、孤独な二人の間には紛れもない愛情があります。世の中の人々は、「大学生が少女を誘拐した」という事実だけ見て、自分のものさしでこの事件を裁こうとしますが、真実は別のところにあります。SNSに翻弄されて徐々に熱を帯びていく大衆心理も恐ろしく…。文の視点で描かれるエピソードに胸を打たれました。大賞受賞も納得の作品です!!

2位  ライオンのおやつ(著者:小川糸)

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ

作者小川糸

出版社ポプラ社

出版年月2019年10月

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『ライオンのおやつ』。なんとも印象的なタイトルですが、本作が2位にランクインしたことはとても興味深いですし、まだまだ世の中捨てたものじゃないと思いました。余命宣告をされた33歳の主人公・雫は、瀬戸内海のレモンの香りのする島(四国の大三島がモデルだそうです)にあるホスピス「ライオンの家」を訪れるところから物語は始まります。

「ライオンの家」は静かに死を待つ人びとが暮らす場所。濃厚に死の気配が漂いますが、それ以上に、生の力もまた同居しているのです。ホスピスで残りの人生を過ごす人たちの原動力となっているのは、毎日違う味が楽しめる「おかゆ」と週に一度の「おやつ」。読んでいるこちらまでその美味しそうな香りが漂ってきそうな描写で、個人的にはフルーツ粥に興味津々!

本作では、ファンタジー小説のように奇跡が起こることはありません。主人公は日に日に弱っていくし、六花という相棒(犬)と出会っても散歩すらままならないほど。死を目の前にしたとき、あなたなら残された時間をどう過ごすでしょうか。中盤以降は涙なしには読めませんが、あたたかな優しさに包まれるような読後感でした。緩和ケアのあり方についても考えさせられる一冊です。

3位  線は、僕を描く(著者:砥上裕將)

線は、僕を描く

線は、僕を描く

作者砥上裕將

出版社講談社

出版年月2019年6月

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タイトル『線は、僕を描く』を見て、なんとなく違和感を感じませんか?普通なら「僕は、線を描く」だと思うんですよ。このタイトルの意味がわかるのは本を閉じた後です。あぁ、こういう意味だったのかとしみじみと実感することでしょう。心の隙間を埋めてくれるかのようなこの充足感を、ぜひあなたにも味わって欲しいと思います。

本作は、「水墨画」を軸として、すべてを失ってしまった青年の人間としての再生が描かれています。水墨画なんて興味ないよ!という声が聞こえてきそうですが、sakuraも同様で今までの人生で一度たりとも考えたことすらない分野でした。でも、引き込まれる文章とはこのような作品のことを言うのでしょう。

空っぽの部屋で空虚な毎日を過ごす主人公。両親を失った記憶はあまりにも生々しく、いつも心と身体が離れてしまっている印象です。そんな一人の青年がひょんなことから出会ったのは水墨画への入り口でした。黒と白だけのモノトーンの世界なのに、絵師が筆を持つと途端に極彩色の世界へと変化する驚き!さらにそれを文章だけで表現した著者の凄まじい筆力。せき止められていた感情が洪水のようにあふれ出す終盤以降は、涙なしには読めません。

4位  ノースライト(著者:横山秀夫)

ノースライト

ノースライト

作者横山秀夫

出版社新潮社

出版年月2019年2月

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『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64』など、数々の名作ミステリーをこの世に生み出してきた横山さん。そんな超売れっ子作家の新作『ノースライト』は、なんと建築家小説!従来のファンが期待するのは、おそらく警察や刑事が活躍する殺人事件ですよね。でも本作はそれまでの横山作品とは少し毛色が違います。

吉野氏から依頼を受けた主人公の一級建築士・青瀬は、自らのすべてを注ぎ込んで新築を完成させ、建築雑誌で取り上げられるほど高い評価を受けます。しかし後日その新築Y邸は無人になっているということを聞き、青瀬は耳を疑います。事実、Y邸には電話機のほか何も家具はなく、二階には古ぼけた一脚の椅子だけが残されていたのです。

最初こそ建築の専門用語が多く、若干の読みづらさは否めませんが、後半は巧みに絡み合った伏線が綺麗に紐解かれていくような爽快感を覚えます!本作における重要なファクターは「家族」なのではないでしょうか。前半の不穏な空気は嘘のように、ラストではまるでノースライトに包まれるような優しさを感じられる作品です。

5位  熱源(著者:川越宗一)

熱源

熱源

作者川越宗一

出版社文藝春秋

出版年月2019年8月

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第162回直木賞受賞作です。樺太アイヌを描いた非常に骨太な歴史小説ながら、キャラクターが立っていてエンターテイメント小説としても一級品です。残念ながら本屋大賞とのW受賞とはなりませんでしたが、確かな実力のある作品で、ぜひとも最後まで読破して欲しい力作です!

"アイヌ"と聞いて、皆さんが思い浮かべるものはなんでしょうか。最近は野田サトルさんのコミック『ゴールデンカムイ』などが人気となりアイヌ民族にも注目が集まっていますが、北海道の少数民族くらいにしか思っていない人も多いかと思います。本作は実在した人物をベースとして、時代の流れに翻弄され、他国からも自らの土地を踏みにじられたアイヌ民族の生きざまが描かれています。

樺太(サハリン)というと、私は日本vsロシアの領土問題としか考えたことがありませんでした。(北海道に住んでいながらこれは恥ずかしい!)樺太に元々住んでいた樺太アイヌにとっては、日本人もロシア人も侵略者でしかないという視点は目からうろこです。激動の時代の中にあっても、確かに命を賭して必死にもがいていた少数民族がいたのですね。読了後には、きっとあたたかな感動に包まれるはずです。

6位  medium 霊媒探偵城塚翡翠(著者:相沢沙呼)

medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠

作者相沢沙呼

出版社講談社

出版年月2019年9月

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人気イラストレーター遠田志帆さんの表紙絵に惹かれて、ついつい買ってしまったという人も少なくないのではないでしょうか。『午前零時のサンドリヨン』で鮮烈なデビューを果たした相沢沙呼さんの新作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、あまりにもトリッキーで衝撃的な読後感でした。

霊媒を生業とする美しい女性・翡翠と、推理小説作家の主人公が探偵役となり数々の事件を解決していくという異色のミステリー。死者の声を伝えることができる「霊媒」をミステリーに使うなんてアンフェアなのでは?!と思うでしょう。でも騙されてはいけません。最後の最後にすべて「論理的に」トリックが解決されているのです!

sakuraは前評判を聞かずに読んだのですが、これは凄いですね。日常の事件と平行して、幕間で女性ばかりを狙うある連続殺人鬼の視点が入ってくるのですが、これが最後の最後で繋がってきます。おそらく本作を読んだすべての人が仰天するであろう大どんでん返し!これだからミステリーはやめられません。読了後に、表紙の翡翠を見ると…何やら違和感を感じるかもしれませんよ。

7位  夏物語(著者:川上未映子)

夏物語

夏物語

作者川上未映子

出版社講談社

出版年月2019年7月

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「これをするのが常識」「やって当たり前」それって、誰のものさしで測るんだろう。仮に世間の大多数の意見が常識だからと言って、それを他人に強要するのは何か違う。そんな風に日々感じている人はいませんか?川上さんの本を読むと、幸せの選択肢はひとつだと決めつけてしまうことがいかに愚かなことか、ズバリと突きつけられたような気持ちになります。

『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上さんは、繊細な女性の機微を的確に表現する作風から、特に女性読者のファンが多いようです。うだるような夏の暑さを感じる本作『夏物語』を貫くひとつのテーマは「女」。母子家庭と貧困、パートナーなしの出産を望む女性、子どもを産むことのエゴ。さまざまな切り口から「普通であることとは何なのか」という永遠の命題を読者に提示してきます。

おそらく、これを読んだ男性読者は「女性はやっぱりわからない」と一歩引いてしまうことでしょう(笑)あまりにもディープで踏み込んだ内容だけに、はっきりと好き嫌いが分かれる作品だと思います。今回本屋大賞の1位『流浪の月』でも感じましたが、例えマイノリティでもひとりひとりの選択が尊重されるような世界であって欲しい、と切に願います。

8位  ムゲンのi(著者:知念実希人)

ムゲンのi

ムゲンのi

作者知念実希人

出版社双葉社

出版年月2019年9月

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美しい表紙が特徴の『ムゲンのi』。今年の本屋大賞ノミネートの中では唯一の上下巻作品となりました。ある出来事をきっかけに、眠りから覚めない病気「イレス」という難病にかかってしまった4人の患者。それもおかしなことに、同時期にこの病気にかかってしまったというのです。4人の共通点は何なのか?眠りから目覚める方法はあるのか?患者を担当することになった若き女医が、霊能者である祖母の助言によりこの謎の奇病に挑むミステリー小説です。

本作は、単なる医療ミステリーにとどまりません。猟奇殺人事件、主人公のトラウマの原因である少年X、そして患者の夢の世界に入り魂を取り戻す<マブイグミ>。一見関係のないように見えるエピソードや、ファンタジー要素を絡めながら読者を驚愕の真実へと導いていきます。タイトル『ムゲンのi』の意味が明らかになったときには、涙が止まりませんでした。

作者の知念実希人さんは、実は現役のお医者様!医師としてかなりストレスフルな毎日を送っていると思いますが、知念さんの描く世界は残酷な中にも一筋の希望があります。その希望は決して消えることがなく、読後に柔らかな温かさを残してくれます。他にも医療系の名作を多数書かれていますので、ぜひあわせてチェックしてみて下さい。

9位  店長がバカすぎて(著者:早見和真)

店長がバカすぎて

店長がバカすぎて

作者早見和真

出版社角川春樹事務所

出版年月2019年7月

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いま一度思い出してみて欲しいのですが、「本屋大賞」を選ぶのは全国の書店員さん。そんな書店員の皆さんによって『店長がバカすぎて』がノミネートされたのは、とても興味深くもあり、少しだけいたたまれない気持ちにもなります(笑)主人公・京子が契約社員として働く〈武蔵野書店〉は、まるで毎日が戦場。薄給、クレーマーの客、そして常に人をイラつかせる店長。

これがリアルな書店の姿だとすると……私たちの想像以上に書店は過酷な職場なのかもしれませんね!主人公はことあるごとに「辞めてやる!」と息巻くのですが、本好きの人にとって書店員とはまさに天職。そして主人公が三十歳を目前に控えた契約社員の女性、という設定も、非正規問題、女性の貧困問題をライトにあぶり出します。

コメディタッチで描かれる本作は、決して万人受けする作品ではないかもしれません。でも、おそらく本コンテンツを読んでいただいている本好きの皆さんにとっては、色々と考えさせられることがあるのではないかと思います。sakuraは、次からは書店に行って大量に本を買ったときは、「ブックカバーはいりません」と言おうと心に決めました(笑)全国の過酷な書店員さんたちが、報われますように。

10位  むかしむかしあるところに、死体がありました。(著者:青柳碧人)

むかしむかしあるところに、死体がありました。

むかしむかしあるところに、死体がありました。

作者青柳碧人

出版社双葉社

出版年月2019年4月

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今回のノミネート作の中では、とにかくポップな表紙が目を引く本作。『むかしむかしあるところに、死体がありました。』というタイトル通り、日本人なら誰もが知っている昔話をベースとしてミステリー仕立てにアレンジしたという、なかなか挑戦的な短編集です。読書初心者の方でも、気軽に手に取りやすいのではないでしょうか。

さて、本作は「一寸法師」「花咲か爺さん」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」の5つの昔話にインスパイアされています。私たちが物心ついたときからすでに知っている、いわば日本人のDNAに刷り込まれているであろう作品たち。そんな不朽の名作が、こんな新たな形で生まれ変わるとは…!これは発想の転換が功を奏しましたね。

中でも犬の視点で描かれる『花咲か死者伝言』と、逆に人間から「決して見てはなりませぬ」と言われて苦労する鶴を描いた『つるの倒叙がえし』が秀逸です。ダイイングメッセージ、クローズドサークルなどさまざまなミステリーのトリックを使った異色の昔話を、ぜひご堪能ください。鬼ヶ島の見取り図には、ミステリー好きさんならニヤリとさせられることでしょう。

【本屋大賞ノミネート】スタッフおすすめランキングトップ20!

ここまで2020年の本屋大賞受賞作とノミネート作品をご紹介してきましたが、では昨年までの本屋大賞のおすすめも気になってきませんか?中には「この本読んだことある!」「映画化されたものなら観たけど原作は未読」「作者の名前だけは知っているけど…」とさまざまな意見があると思います。大賞受賞作はもちろん、10位までに選ばれたノミネート作品も、大賞と遜色ないほどの傑作が揃っているんですよ!

そこで!大賞ばかりがクローズアップされがちな本屋大賞ですが、過去のノミネート作品すべてを含めて、ぜひとも読んでいただきたい作品を20位までランキングづけしてみました。sakuraの完全なる独断と偏見ですが、気になる作品は一度お手に取ってみることをおすすめします。では、早速見ていきましょう!

1位 かがみの孤城(著者:辻村深月)
かがみの孤城(著者:辻村深月)
2018年大賞

不登校の子どもたちが、鏡の向こうにある不思議な城で「自分」を取り戻す物語。自分が子どもの頃に辛かったこと、悩んでいたこと。大人になるとたいていすべて忘れてしまっています。でも辻村さんは、そんな心の痛みをすべて覚えていて優しく包み込んでくれる。ミステリーとファンタジーが融合した感涙必至の著者最高傑作です。

▶かがみの孤城(著者:辻村深月)
2位 蜜蜂と遠雷(著者:恩田陸)
蜜蜂と遠雷(著者:恩田陸)
2017年大賞

ピアノに興味がない?いえいえ、ピアノや音楽に興味がない人ほど読んで欲しい!国際ピアノコンクールを舞台に繰り広げられる若き4人の個性的なピアニストたちのドラマ。文字を追っているだけなのに、頭の中に音楽が再現されるほどの表現力は本当に「素晴らしい」の一言です!映画化もされているので、あわせてお楽しみください。

▶蜜蜂と遠雷(著者:恩田陸)
3位 鹿の王(上・下)(著者:上橋菜穂子)
鹿の王(上・下)(著者:上橋菜穂子)
2015年大賞

上橋菜穂子さんといえば、国際アンデルセン賞を受賞した世界的にも有名な児童文学作家。「医療ファンタジー」というとハードルが高いかもしれませんが、一度読み始めたらページを繰る手が止まりません!人々を襲う謎の奇病と、若き天才医術師。ミステリーとしての側面をあわせもつ大人のための傑作ファンタジー小説です。

▶鹿の王(上)(著者:上橋菜穂子)
4位 新世界より(上・下)(著者:貴志祐介)
新世界より(上)(著者:貴志祐介)
2009年6位

第29回日本SF大賞も受賞しています。「呪力」が存在する1000年後の日本が舞台です。悪鬼と業魔の恐ろしい伝説と、巧みに管理された世界。これはね、とんでもなく面白いですよ。万人におすすめできるわけではありませんが、好きな人は多分一生の宝物になるでしょう。ドヴォルザークの「家路」を聴いたらもう冷や汗が出そう(笑)

▶新世界より(上)(著者:貴志祐介)
5位 ジョーカー・ゲーム(著者:柳広司)
ジョーカー・ゲーム(著者:柳広司)
2009年3位

今までのスパイの概念をひっくり返すかのようなスタイリッシュなスパイ像。それが『ジョーカー・ゲーム』です。D機関というスパイ養成学校を設立した「魔王」と呼ばれる結城中佐。そして彼の影のように従うスパイたちがとんでもなく格好良い!超人的なスキルを持つスパイたちの頭脳戦をぜひ堪能してください。実は2016年にテレビアニメ化もされています。

▶ジョーカー・ゲーム(著者:柳広司)
6位 ジェノサイド(著者:高野和明)
ジェノサイド(著者:高野和明)
2012年2位

ジェノサイドとは「集団虐殺」という意味。不穏さを感じるタイトルですが、不謹慎にも一気読みの面白さです。コンゴで、ある特定の民族の暗殺任務を請け負った傭兵たち。日本で、死んだはずの父から受け取ったメール。そしてアメリカでは水面下で活動するホワイトハウスの幹部たち。手に汗にぎる傑作SFサスペンスです!

▶ジェノサイド(著者:高野和明)
7位 図書館戦争(著者:有川浩)
図書館戦争(著者:有川浩)
2007年5位

当時、大賞を受賞しなかったのが不思議なくらい、今や大人気のシリーズとなりましたね。国が本を検閲し武力行使にまで至るようになった時代。ストーリーはシリアスなのに、ラブコメ要素も満載で幅広い年代の支持を集め続けています。堂上教官みたいな人を上司に!と望む読者は少なからずいるはず(笑)読書を始めたばかりの若者向けにもぴったりのシリーズです。

▶図書館戦争(著者:有川浩)
8位 夜のピクニック(著者:恩田陸)
夜のピクニック(著者:恩田陸)
2005年大賞

再び恩田さん登場です。それまである一定層にだけ人気があった恩田さんの名が、全国的に知れ渡るようになった記念すべき作品です。全校生徒が夜を徹して歩き続ける行事「歩行祭」。ある決意を胸に秘めた少女。会話の中で明らかになる真実。読了後は誰もがあたたかな感動に包まれることでしょう。

▶夜のピクニック(著者:恩田陸)
9位 風が強く吹いている(著者:三浦しをん)
風が強く吹いている(著者:三浦しをん)
2007年3位

マラソン?いえいえ、駅伝です!今まで全く興味がなかった「駅伝」の面白さに気づかせてくれた作品です。元駅伝選手のハイジと、天才ランナーのカケルの出会い。そのほか素人ばかりの8人を集めた箱根駅伝への挑戦。共同生活を営みながら同じ目標に向かって努力するひたむきさは、冷え切った心を熱く燃え上がらせてくれます。コミック版も面白いのであわせてどうぞ!

▶風が強く吹いている(著者:三浦しをん)
10位 夜は短し歩けよ乙女(著者:森見登美彦)
夜は短し歩けよ乙女(著者:森見登美彦)
2007年2位

初めてこの作品を読んだとき、「すごい作家が出てきた」と思いました。何と言ってもすべてが「阿呆」なんです!(笑)決してバカにしているわけではなく森見さんに限っては褒め言葉。独特なゆる〜い語り口と、好奇心旺盛な黒髪の乙女。そして彼女を追いかける先輩。お酒をこよなく愛するsakuraは「偽電気ブラン」が気になって仕方ありません。

▶夜は短し歩けよ乙女(著者:森見登美彦)
11位 満願(著者:米澤穂信)
満願(著者:米澤穂信)
2015年7位

<古典部シリーズ>や<小市民シリーズ>などほのぼのとした学園ミステリーを得意とする米澤さんですが、実は本短編集のようなブラックミステリーこそが彼の真骨頂なのではと常々思っています。後味が悪くどこまでも打ちのめされるラストは、一種の爽快感すら含んでいます。ぜひとも「柘榴」だけでも読んでいただきたいです。

▶満願(著者:米澤穂信)
12位 百年法(上・下)(著者:山田宗樹)
百年法(上・下)(著者:山田宗樹)
2013年9位

当時は9位と順位こそ低めでしたが、のめり込むように読みふけってしまった作品です。人間はいつの時代も不老不死を求めています。それが本当に実現してしまったら?自然に老いて寿命を全うするのか、若い姿のまま生き100年目に安楽死させられるのか。究極の選択ですが、こんな時代が来る日も遠くないのかもしれませんね。

▶百年法(上)(著者:山田宗樹)
13位 叫びと祈り(著者:梓崎優)
叫びと祈り(著者:梓崎優)
2011年6位

本作が著者のデビュー作(しかもsakuraと同年代)ということで、とにかく驚きを隠せなかった作品です。文章の美しさもさることながら、巧みに張り巡らされた伏線とミスリードに「してやられた!」と思いました。世界各国を舞台にした本作は、毛色の違うミステリーをお好みの読者にぴったりの短編集です。

▶叫びと祈り(著者:梓崎優)
14位 悪の教典(上・下)(著者:貴志祐介)
悪の教典(著者:貴志祐介)
2011年7位

この本を「好き」と言うと悪趣味と思われそうで、人様にはなかなか言えません…が、大好きです!(笑)「バトル・ロワイアル」とサイコパスが合体した本、それが『悪の教典』。高いIQ値を持つ人気の学校教師がサイコパスな殺人鬼だったら?冷酷さと知能をあわせもつ怪物は、恐ろしさの反面ある種の魅力があるのも否めません。続編を書いて欲しいです。

▶悪の教典(上)(著者:貴志祐介)
15位 家守綺譚(著者:梨木香歩)
家守綺譚(著者:梨木香歩)
2005年3位

日常の不思議を描いた本作は、読了後にほっこりと胸があたたかくなること請け合いです。掛け軸の中からボートを漕いでやってくる死んだはずの親友。サルスベリの木に好かれる主人公。たぬきの恩返し。どれもこれもが怪奇現象のはずなのに、「そんなもんだろう」とゆったりと構えた主人公が素敵です。人間くさい犬のゴローもキュート。

▶家守綺譚(著者:梨木香歩)
16位 テンペスト(上・下)(著者:池上永一)
テンペスト(上)(著者:池上永一)
2009年4位

19世紀の琉球王朝を舞台に、男として生まれ変わることを決意した少女・真鶴の物語です。性を偽り宦官として働くものの、その匂い立つような色気は隠しようもなく…。歴史小説というよりもエンタメ小説として読むのが正解!文庫では4冊というボリュームですが、あまりに面白くてサクサク読めてしまいますよ。

▶テンペスト(上)(著者:池上永一)
17位 屍人荘の殺人(著者:今村昌弘)
屍人荘の殺人(著者:今村昌弘)
2018年3位

デビュー作ながら数々のミステリー賞で1位を獲得した作品です。初めてこの作品を読んだとき、「新世代のミステリーがきた!」と思いました。賛否両論あるのは理解していますが、まさか○○○でクローズドサークルを作るなんて…一体誰が想像したでしょうか。通常のミステリーに食傷気味の方は、ぜひとも『屍人荘の殺人』を読んでみて下さいね。

▶屍人荘の殺人(著者:今村昌弘)
18位 のぼうの城(著者:和田竜)
のぼうの城(著者:和田竜)
2009年2位

豊臣秀吉の小田原城攻めに対して、最後まで抵抗した北条氏。その北条氏側についた成田長親を主人公に描かれた歴史エンタメ小説です。いつもぼーっとしていて何をやらせても人並み以下にしかできない「のぼう様」(でくのぼう)が、豹変してからが面白い!歴史の裏にこんな出来事があったのかもと考えると嬉しくなりますね。

▶のぼうの城(著者:和田竜)
19位 博士の愛した数式(著者:小川洋子)
博士の愛した数式(著者:小川洋子)
2004年大賞

「数式」という言葉がタイトルに入っているだけで、数字が苦手なsakuraは長いこと食わず嫌いでした(笑)でも、数字が苦手な人こそ面白く読めるのではと思います。80分しか記憶を保つことのできない博士と、家政婦とその子どもの穏やかな生活。優しさと切なさで胸がいっぱいになる作品です。心に染み渡る一冊。

▶博士の愛した数式(著者:小川洋子)
20位 告白(著者:湊かなえ)
告白(著者:湊かなえ)
2018年大賞

今や「イヤミスの女王」と呼ばれる湊さんのデビュー作です。「娘は事故で死んだのではなく、このクラスの生徒に殺された」というある女性教師の独白から始まる物語。誰もが持つ悪意がやがて浮き彫りになり、増殖していく。そんな気持ちの悪さと後味の悪さが読後もしばらく残る、正真正銘の「イヤミス」です。しかし悔しいことに面白い!!

▶告白(著者:湊かなえ)

【インデックス】歴代の本屋大賞とノミネート作品を一挙紹介!

歴代の本屋大賞ノミネート作品

次に、第1回(2004年)~第16回(2019年)の歴代本屋大賞とノミネート作品を一挙ご紹介します。さきほどランキングには入れなかったけれど、まだまだ面白いおすすめ本は山のようにあります。ぜひ今後読書計画を進めていく上でのインデックスとしてもお使い下さい。その時代で話題作になったり映画化されて大ヒットした作品もあります。どれも名作揃いなので、気になった作品はぜひチェックしてみて下さいね!

「発掘部門」「翻訳小説部門」実はこんな部門もあった!

ところで、本屋大賞には実は違う部門があるのをご存じですか?普段あまり大々的に取り上げられることは少ないのですが、「発掘部門」と「翻訳小説部門」という部門があります。

「発掘部門」 「翻訳小説部門」
過去1年以上前に刊行された作品の中から、おすすめ本を一冊投票し集計結果がリスト化される。対象作品はジャンルを問わないため、過去の面白い作品が再び脚光を浴びることも!第13回から、リスト内から実行委員会が特に共感した1冊を選出し、「超発掘本!」として発表されている。 過去1年間に日本で刊行された翻訳小説の中から、1人3冊まで投票しその集計結果から大賞が選出される。これには新訳も含まれる。過去にはミステリー界で話題をさらった『その女アレックス』や『カササギ殺人事件』などが受賞している。
「発掘部門」
過去1年以上前に刊行された作品の中から、おすすめ本を一冊投票し集計結果がリスト化される。対象作品はジャンルを問わないため、過去の面白い作品が再び脚光を浴びることも!第13回から、リスト内から実行委員会が特に共感した1冊を選出し、「超発掘本!」として発表されている。
「翻訳小説部門」
過去1年間に日本で刊行された翻訳小説の中から、1人3冊まで投票しその集計結果から大賞が選出される。これには新訳も含まれる。過去にはミステリー界で話題をさらった『その女アレックス』や『カササギ殺人事件』などが受賞している。

特に「翻訳小説部門」は、世界的にも人気になった作品が多いので、個人的にはもう少し力を入れて取り組んで欲しいなぁと思うのですが…。いつも<本屋大賞>しかチェックしていなかった人は、これからはぜひ「発掘部門」と「翻訳小説部門」もあわせて確認してみて下さいね。そこからまた新たなジャンルの本との出会いがあるかもしれませんよ!

ちなみに、2020年の「発掘部門」は『無理難題が多すぎる』(著者:土屋賢二)、「翻訳小説部門」の1位には『ア-モンド』(著者:ソン・ウォンピョン)が選ばれました。

まとめ

壁にもたれかかり本を読む女性

ここまで<本屋大賞>についてまとめてきましたが、いかがでしたか?本屋大賞は、全国書店員がおすすめするいわば"お墨付き"の作品ばかりです。他の文学賞と違って「読みやすい」「手に取りやすい」本が揃っていますので、ぜひ大賞だけと言わずノミネート作品もチェックしてみて下さいね。

本の世界はとても奥が深いです。世間で取り上げられているものは、世界中の数多ある作品のごくごくわずかに過ぎません。まずは書店のポップを参考にしてみたり、ベストセラー本や各文学賞を入り口として、次は気になった本を自発的に探してみるのも良いかもしれません。好きなジャンルや好きな作家。読書を重ねれば重ねるほど、自分の好みがだんだんと確立していくのを実感できるはずです。それはやがて、日々の生活の潤いとなり、人生における糧となりますよ!

古本店『もったいない本舗』では、今回の本屋大賞の作品を始め、さまざまなジャンルの本を取り扱っています。興味のある方は、ぜひ覗いてみて下さいね!

sakura
ライティング担当 : sakura

札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。

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