• 2026/01/05

『路傍のフジイ』が面白い!世界の端っこでブレずに生き抜く男

令和のニューヒーローと名高い男が主人公の『路傍のフジイ』。社会の価値観との狭間でゆれる登場人物たちに共感者続出の本作は、累計発行部数100万部を突破!結婚、豊富な資産、広い人脈...囚われているだけかもしれない「幸せ」の概念を、この男が見事に破ります!

【路傍のフジイ】TOP画像
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『路傍のフジイ 』ってどんな漫画?

誰もが思い浮かべる主人公像から、これほど遠ざかっているヒーローが今までいただろうか?少ない口数に、やや下がり気味の口角で「ジッ」とこちらを見つめる三白眼の男。「え、この人が主人公?」と思うほど、冴えないオーラを出しているこの男・藤井(フジイ)が体現する幸せの在り方に、SNS界隈では「見える世界が変わる」「元気になる」とポジティブな声が続出!

40代独身の藤井守が主人公の『路傍のフジイ』は、2023年に『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載開始後、既刊3巻の時点で累計発行部数70万部を突破。その後も更新はつづき、現在は5巻発売の時点で100万部を超えている話題の漫画です!

白白もうふ

『マンガ大賞2025』では第2位、『このマンガがすごい!2025』オトコ編では5位にランクイン!令和のニューヒーローを生んだ本作を手掛けたのは、漫画家の鍋倉夫先生です!

白白もうふ
鍋倉夫先生とは?
神奈川県出身。アフタヌーン四季賞で大賞を受賞し、漫画家デビューを果たしました。現在連載中の 『路傍のフジイ 』のほか、将棋漫画『リボーンの棋士』(2018年)を手掛けています。

一人でもお金がなくても、人生は楽しい

稼ぐお金は必要最低限!

主人公の藤井(フジイ)は、アパートで一人暮らしをする40代男性。派遣社員として働いていますが、基本的に無口で、無表情。特に専門的なスキルもないので、会社からは冴えない中年男性と軽んじられている様子がはじめは描かれますが....。

「なんか...人生楽しそうですね。」
「はい。」「楽しいです。」

『路傍のフジイ』第1巻のあるシーンの会話ですが、潤沢にお金があるわけでもなく、傍にパートナーも友達もいないフジイですが、人生をしっかり楽しんでいるんですよね。むしろやりたいことがありすぎて、夢は「不老不死」とまで言っています。

そう、本作は今の社会で「これらがあれば幸せ」だと思われている既存の幸せの価値観の「逆」を生きる主人公が体現する「幸せなもう一つの生き方」に、多くの人が人生で見落としてきたことに気付かされるヒューマン漫画です!

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主要キャラクター紹介&相関図【一部ネタバレあり】

キャラクターをクリックすると、各キャラの詳細に移動します。

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相関図 藤井 田中 石川 外山 矢部 松岡 西園寺 久野 真木 成田 馬場 多田 村瀬先生 木村

主人公

藤井 藤井

藤井守。40代独身の非正規社員。周りの反応に鈍感。結婚式には一度も出席したことがなく、休日に会う友人はいない。趣味が多く、プライベートは充実している。

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フジイと同じ会社の人

田中 田中

フジイのことを「人生つまらなそう」と決めつけていた。生活は自堕落気味。数ヶ月に一度、大きな不安に定期的に襲われる。

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石川 石川

美人で一目置かれている。職場では素を出さず、プライベートでは好意のない男性と関係をもつことを続けていたが...。

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外山 外山

口が悪く、デリカシーがない。フジイのことは、つまらないやつだと思っている。退勤後にみんなを飲みに誘いがち。

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矢部 矢部

みんなから頼りにされる、ムードメーカー。多少無理をしても、人に好かれたい。

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松岡  松岡

ライターとして働く傍らで、プライベートでは詩を書いている。ネタを書き溜めたメモ帳は安易に人前に出せないのに、不思議とフジイの前では出せてしまった。

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西園寺  西園寺

「天然の善人」が苦手で、フジイのことも苦手視している。善い人でいるために努力している。

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学生時代の友人たち

久野 久野

フジイと同じ高校出身。同じクラスで一時一緒に遊んでいた。 現在は俳優やモデル活動をして生活している。ときどきフジイを思い出す。

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真木 真木

フジイと同じ大学の元恋人。フジイに色々な感情を教えた人。現在は結婚して、幸せな夫婦生活を送っている模様。

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成田 成田

整った容姿で、学生時代は一目置かれていた。フジイとは、小学生からの友人。同じ団地に住んでいて、定期的に屋上で話したり親しくしていた。

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馬場 馬場

フジイの学生時代の同級生。引きこもっていたところ、藤井がプリントを届けに来るうちに仲良くなる。 学生時代の友人の死を知らせるために、フジイと再会。妻と息子が一人いる。

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趣味を通じた知り合い(絵画教室・陶芸教室)

多田 多田

フジイと同じ陶芸教室に通う生徒。人との距離感がおかしく、友人ができない。常に友達が欲しいと思っている。

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村瀬先生 村瀬先生

フジイが通う陶芸教室の先生。元生徒だった人の手伝いなど、フジイにお願いごとをすることもある。

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木村 木村

フジイと同じ絵画教室に通う生徒。絵の才能があり、美術大学への進学のために幼少期から教室に通っている。

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魅力的なフジイの生き方と「独り身」の実情

ブレずに生きる主人公の安心感

自分の意思を「軽じない」フジイ

基本的に自分から人との距離を縮めることはしないフジイ。固めな姿勢を崩さないので「いつまで敬語なの?」「もっと笑った方が良い」と周りに言われることもしばしばあるフジイですが...。彼は、人の意見に耳は傾けますが他人が求める人物像になろうとはしないので基本的に無理をして人に合わせることはしません。

白白もうふ

些細な会話でも、そんな「フジイらしさ」が出ている一部のシーンをご紹介します!

白白もうふ
藤井さんは一人でもさびしくないんですか?一緒に何かを共有できる友達がほしくないんですか?
友達はいますよ。
その時々で同じ何かを共有して、それきり連絡先も知らず、二度と会わない人もいますけど、今でも友達だと思ってます。
僕は.....無理してまで人に好かれようとは思いません。
………….そうですか...
俺は多少無理してでも人に好かれたいです。
今日、外に食べに行くんですか?駅前にできたそば屋おいしかったですよ。
西口の喫茶店に行こうかと。今日はパンケーキと決めてるので...
白白もうふ

作中では、何人かに「ガンコだ」と言われているフジイ。他人に流されずに、自分の意思を優先することは簡単なことではないからこそ彼が自分の意思を伝える場面には爽快感のようなものも感じます!

白白もうふ

「良いな」と思ったら素直に動くフジイ

特別なスキルや「これが得意!」といったことはないフジイですが、彼は「良いな」と思ったことはどんどん手を出していくチャレンジャーなんです!

  • ラーメン屋で耳にした曲名をCD屋さんで突き止め、さらにその歌手のコンサートに参戦。その直後、歌手に感化されてギターを練習し始めるフジイ。
  • プロ野球の試合でホームランを出す選手を見たあと、バッティングセンターへ打ちに行くフジイ。
  • 絵画教室で10代の青年の絵に惹かれて、家でも絵を練習するフジイ。

友人になったり連絡先を交換したり"人と繋がる"まではいかないけど、日ごろから誰かと関わり合っては生きているフジイ。好奇心をスルーせず、小さなアクションでも実行することを積み重ねて、「やりたいことをやっている人生」を作り上げる様子が描かれています。

彼が人と関わる方法は自身の興味があることをやる他に、「困っている人が居たら助ける」ことを通して人と関わるシーンがとても多いです。

時代の変化もあり、近年は人と人との距離が遠くなりつつありますが、隣の人がペンを探していたら差し出す、知り合いが困っていたら手伝いに駆けつける、酔っぱらって倒れている人がいたら声をかけるなど。誰であろうと、困っている人がいたら手を差し伸べるフジイの姿が本作では描かれています。

「一人で生きること」の心細さ、不自由さを示唆する描写も

独身生活を謳歌する主人公の様子が描かれながらも、物語の中で定期的に差し込まれているシーンが、街の中やコンビニエンスストアで友達や家族、恋人など「他人が誰かしらと一緒にいる姿」です。

フジイと同じ会社で働く田中さんと石川さんという独り身の20代組もいるのですが、熟年結婚をするために会社を退職する女性が「一人で生きること」の大変さをフジイを含む独身組に伝えようとするシーンがあります。

                 

(前略)わかってるのよ、独身の良さも。
今はいい...今はいいの。
でもこれから先...
年をとってからずっと一人はきついわよ。
若い人にはわからないかもしれないけど。

        

『路傍のフジイ』3巻より引用

白白もうふ

上手くいく現実だけではなく、作中にはフジイの周りにいる年長者たちの言葉の端々で「年齢によって選べない現実も出てくること」を表現しているところがあります。

白白もうふ
独り身の肩身の狭さも描かれる

ブレない生き方で周囲の人を感化させていくフジイですが、彼をまったく知らない人から見れば「冴えない中年男性」というパッと見の印象は変わりません。休日に公園で空の写真を撮っているだけでも、子どもたちの母親の警戒する目線で居づらくなったり、バッティングセンターでは若者たちに邪険に扱われたり...。社会的にみたときの、独身男性のシビアな現実も描かれています。

本作が伝える「覚えていること」と「幸せ」の関係

30代、40代、50代と年齢を重ねていくほど、「年齢相応」であることが求められる流れのようなものがあります。スキルがあること、パートナーがいること、資産を築いていること、一緒に何かを共有できる相手がたくさんいること...。これらの情報で当人が幸せであるかどうかを「測る」傾向が社会にはありますが...。

本作の全体を通して散りばめられているシーンが、「登場人物たちが誰かを思い出す」様子です。第1巻で人生をつまらなく生きていた田中が吹っ切れたきっかけとなった、ある夢を見るシーン。そこで描かれた「覚えている」ことと「幸せ」の関係を示唆する場面を皮切りに、巻数を読み進めていくほど「これが、幸せなことなのでは?」と思えるような"記憶"と人の喜びが繋がるシーンの数々が描かれます。

                 

(前略)今まで一度も思い出すことのなかった...
すっかり忘れていたはずの人達だった。
俺はなぜか...彼ら全員の名前を覚えていた。
彼らは俺のことを忘れていたけれど、
俺は満足だった。

        

『路傍のフジイ』1巻より引用

白白もうふ

読む人の心情や状況によって、どこが良いかは人それぞれ刺さるところがかなり違いそうな本作品。社会が良しとする価値観に違和感を感じている人や、フジイのようなニュートラルな生き方をする主人公に興味がある方はぜひ読んでみてほしいです!

白白もうふ

まとめ

古本店『もったいない本舗』のスタッフが、「路傍のフジイ」をご紹介しました!

コミックスは、現在は5巻まで発売中です。下記のサイトからお試し読みができるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。

路傍のフジイ

作者 鍋 倉夫
出版社 小学館
出版年月 2023年10月
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白白もうふ
ライティング担当 : 白白もうふ

札幌在住20代。ゆるゆるなイラストを描いたり、スマホや一眼でいい感じの写真をとることが趣味。打つ系のスポーツは叫びがち。本に関してジャンルや作家は意識せずに読んできたが、ハ・ワン、益田ミリ、凪良ゆう、伊坂幸太郎作品が最近こころ踊ったベスト4。漫画では、あなしん、阿賀沢紅茶作品がお気に入り。ソフトクリームにほんとうに目がない。将来サングラスをかけたビション・フリーゼを相棒にするのが夢。

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