《金の国水の国》優しさと暖かさが満ちる。岩本ナオ作品の魅力紹介

読後の幸福感を、お約束します。どこまでも優しい世界にほっこりできる、癒しと胸キュンのおとぎ話。金の国のお姫様と水の国の青年が、困難を前にそっと手と手を取り合います。「このマンガがすごい！」唯一の2年連続1位受賞作家・岩本ナオさんによる、作品の魅力をご紹介します！

『金の国 水の国』概要とあらすじ

『金の国水の国』は、小学館『月刊flowers』に掲載されていた漫画作品です。2016年には【このマンガがすごい！オンナ編】1位、【THE BEST MANGA 2017 このマンガを読め！】3位、【マンガ大賞2017】2位を受賞しました。

作者は岩本ナオさん。『町でうわさの天狗の子』で第55回小学館漫画賞少女向け部門を受賞しているだけではなく、現在『月刊flowers』連載されている『マロニエ王国の七人の騎士』も、なんと【このマンガがすごい！2018オンナ編】1位を獲得しています。同じ作家さんが別の作品で2年連続1位を受賞という、「このマンガがすごい！」史上初の快挙となりました。

▶《金の国水の国》あらすじ

仲が悪い隣同士の国、A国とB国。見かねた神様の仲介により、国で一番美しい娘と一番賢い若者を送りあって、友好の縁組をすることに。しかしA国は花嫁として猫を送り、B国は花婿として犬を送るという体たらく。犬が送られてきたA国の末の王女・サーラは、同様に猫が送られてきたB国の青年・ナランバヤルと、ある日偶然出会ってしまう。事情を知った二人は、お互いの国の平和のために、夫婦を演じる協力関係を結ぶことに。しかし長らく続いた国同士の諍いは根深く、争いに巻き込まれてしまうことになる。

全1巻完結と、非常に手に取りやすい。しかも、読後は優しく暖かな気持ちになれます。（同時に、もっとこの世界に浸っていたいというもどかしい気持ちにもなります）分類は少女漫画のカテゴリではありますが、恋愛というよりは、優しすぎる運命を強く感じる作品のため、年齢も性別も関係なく世界観を楽しむことができますよ。古本店『もったいない本舗』の漫画好きスタッフが、優しすぎる作品の魅力をご紹介します！

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▼小学館『月刊flowers』公式サイトはこちら

• 小学館『月刊flowers』公式サイト

異国情緒あふれる世界観が美しい【用語＆登場人物紹介】

ここからは、用語と登場人物の簡単な紹介です。一冊で完結のため、ストーリーや設定に難しいものはありません。大きなネタバレはしていませんが、気になる方はご注意ください。

▶Ａ国（金の国）

砂と岩の大国。貿易の中継地点として栄える、稀代の商業国家。「動く道（オートウォーク）」や「漕がなくても登れる川（パナマ運河のような閘門式運河）」「動く箱（エレベーター）」が存在するなど技術力も高い。しかし雨が降らず、深刻な水不足に陥っている。

※画像はイメージです

▶Ｂ国（水の国）

水と緑の豊かな国。A国との戦争で長い間商業ルートが封鎖され、備蓄も無く疲弊しきっている。小さな町は戦火に巻き込まれ次々と廃村になっているが、国のトップである族長が認めずひたすら戦争を望んでいる。中国西部やアジア中央部のような雰囲気を持つ国。

※画像はイメージです

サーラ

A国に100人近くいる王女のうちの一人。平凡な容姿に何の特技も無いことから、父王からもその存在を忘れられ、姉たちからもぞんざいに扱われていた。B国との国境付近にばあやと二人で暮らしていた。

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ルクマン

サーラに送られた子犬。賢くてお行儀が良い。

ナランバヤル

B国の青年。A国との境にある小さな町の図書館長の息子で、建築士。口が達者なお調子者だが、洞察力が高く頭の回転も速い。

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オドンチメグ

ナランバヤルに送られた子猫。名前は「星の輝き」という意味をもつ。

どこまでも暖かい【作品の魅力】

①どのページもひたすらに優しくて暖かい

1冊完結のため、実際に試したらすぐにおわかりいただけます。どのページを開いても、優しさと暖かさが、あなたを迎えてくれます。＂物語＂のため悪意も存在しますが、多面的な部分であったり何かしらの事情があるなど、最後にはきっちり解決します。読後にはキャラクターのほとんどが好きになり、悪役も憎めなくなってしまうタイプの作品です。ページを開くたびに、いつも優しさと暖かさをわけてくれるので、何度でも読み返してしまいますよ。

②世界観の描写が美しい

技術の結晶である建造物。女性たちの美麗なドレスに装飾品。何もかもが、美しい。ほとんどが砂漠のA国での描写ですが、水のB国のお城も最後の方で描写されています。もちろんファンタジーの架空の国。しかもページはモノクロ。それでもページをめくっていると、不思議と金色が目に浮かんできます。緻密な作画による直接的な美しさだけではなく、読み手側の想像力を刺激してくる、間接的な美しさもひたすらに鮮やか。読後はもっと世界観に浸っていたくて、砂漠の国の美麗画像を検索したくなってしまいますよ。

③サラッと紛れ込んでいるギャグが秀逸

ふんわりとした優しい雰囲気に浸っていると、息をするように挟まれているギャグに不意打ちで笑います。どうしてこれほど自然にギャグを挟み込むことができるのでしょうか？ネタもタイミングもとにかく秀逸で、「胸キュン恋愛漫画は胸焼けして読めない」というタイプの方も、爽やかな笑いと共に最後まで読めてしまいます。ぜひ、普段選ばれる作風の好みを乗り越えて、お手に取ってみてください！

優しい世界にもっと浸っていたい方向け【他メディア紹介】

映画

あの優しすぎる世界観を、映像で浴びることが叶います。
単巻の短編作品が、ついにアニメ映画化となりました！個人的には、いつまでも浸っていたい世界がコミックスだけではなく映画でも堪能できるだなんて、素晴らしいとしか表現しようがありません。スタッフやキャストなどの映画情報はこちら。

◆スタッフ

原作：岩本ナオ

監督：渡邉こと乃『ちはやふる』『俺物語!!』

脚本：坪田文『HUGっと！プリキュア』『コウノドリ』『マッサン』

音楽：エバン・コール『鎌倉殿の13人』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

アニメーションスーパーバイザー：増原光幸『ダイヤのA』『若おかみは小学生！』

プロデューサー：谷生俊美『竜とそばかすの姫』

配給：ワーナー・ブラザース映画

アニメーション制作：マッドハウス『時をかける少女』『サマーウォーズ』

製作幹事：日本テレビ放送網

製作：「金の国 水の国」製作委員会

◆ボイスキャスト

※映画版では、A国は「アルハミト国」、B国は「バイカリ国」と国名がつきました。

制作スタッフ陣もキャスト陣も、完璧な布陣。制作陣それぞれが携わられた映像作品群の美しさは、多くの方が知るところです。砂漠の国の華やかな金色と、物語で重要なシーンを彩る夜の瑠璃色。美しい対比はエピソードだけでなく、他の数々の美しいシーンでも魅せてくれますよ。公式サイトでのボイスキャストさんたちのコメントもあたたかく、作品の雰囲気同様にほっこりします。お笑い要素にもしっかり触れられていますね！

何度も申し上げますが、お疲れ気味の方すべての心に優しさと光をわけてくれる作品です。学校や仕事でモヤモヤしてしまった日でも大丈夫。こちらをご覧になって、心も身体も癒されてください！

▼公式サイトはこちら

• 映画『金の国水の国』公式サイト

作者・岩本ナオさんの他作品

ここからは作者である岩本ナオ先生の他の作品のご紹介です。『金の国水の国』一冊だけでは物足りない、もっと作者の作品を読みたい！という方は、ぜひこちらをどうぞ！

マロニエ王国の七人の騎士

マロニエ王国の七人の騎士 1

作者	岩本ナオ
出版社	小学館
出版年月	2017年8月

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おとぎ話好きさんの心を攫うのはこちら。「このマンガがすごい！2018」オンナ編1位受賞作品！マロニエ王国の女将軍・バリバラの7人の息子たちが「いつかかっこよくお姫様を助けること」を信念に、自分の＂武器＂を揮います。7人兄弟は全員が変わった名前。長男・眠くない、次男・博愛、三男・暑がりや、四男・寒がりや、五男・獣使い、六男・剣自慢、七男・ハラペコ！実はそれぞれの特性が、そのまま名前になっています。武器にも弱点にもなるそれぞれの特性を活かして、果たして彼らはお姫様を助けることができるのでしょうか？兄弟それぞれのワクワクする冒険と、お姫様との恋物語をお楽しみください！

町でうわさの天狗の子

町でうわさの天狗の子 1

作者	岩本ナオ
出版社	小学館
出版年月	2007年12月

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全12巻、こちらも笑えてきゅんしてほっこりできる、第55回小学館漫画賞少女向け部門受賞作品です。主人公はなんと、天狗の父と人間の母を親に持つ少女。天狗の力をなくして普通の女の子になりたい主人公・秋姫と、天狗になるために修行に励む人間の男の子・瞬による、ありそうでなさそうな青春ファンタジーストーリーです。悩み多き高校生たちの切ないエピソードももちろんありますが、キャラクターたちが成長する姿に、しっかり涙しますよ。独特の穏やかな世界観に心奪われて、読み終えた後現実に戻ってくるまでに時間がかかってしまうあの幸せな感覚を、どうぞお楽しみください。

雨無村役場産業課兼観光係

雨無村役場産業課兼観光係 1

作者	岩本ナオ
出版社	小学館
出版年月	2008年8月

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都会で暮らすすべての地方出身者が、激しく共感して心揺さぶられる作品です。東京の大学を卒業した銀一郎が、地元の雨無村役場に就職して村おこしを頑張ります。地方特有の悩みやコンプレックスが、ひたすらにリアル。《地方民あるある》が、全3巻でこれでもかと描写されています。ほろ苦い恋のエピソードも、正解が存在しない難しい問題も、もちろんやってきます。けれども最後にはきちんと納得して、前を向くことができますよ。お話の舞台は岡山県。作中に登場する桜と併せて、ゆったりと聖地を訪れてみるのも良いかもしれませんね。

岩本ナオ 古今東西しごと集

岩本ナオ 古今東西しごと集

作者	岩本ナオ
出版社	小学館
出版年月	2019年4月

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岩本ナオさんワールドに魅せられた、ファン必見。単行本に収録されていない短編漫画や美麗なカラーイラストだけでなく、書店の店舗特典やサイン会で配布されたペーパーまでもが掲載されている、岩本ナオさんの世界観がぎっしり詰まった作品集です。こちらには『金の国水の国』のあとがきが載せられているのですが、このような背景で描かれていたのかと、感慨深くなりますよ。最後の方には、アナログカラーイラストのメイキングも掲載されています。現在では、漫画家さんの多くがデジタルで描かれることが主流となってきましたが、アナログのイラストならではの、このほっこりした優しい雰囲気が素敵です。かわいらしいだけでなく、幸せが紡がれる漫画家のお仕事集、ぜひお手元にいかがでしょうか。

まとめ

お疲れ気味のとき、「難しい本を読んでも頭に入ってこない」という経験をしたことがある方は、多いのではないでしょうか。『金の国水の国』は、手に取りやすい1冊完結作品。あたたかなイラストとどこまでも優しいエピソードで紡がれた、おとぎ話です。元気なときにご覧になっても、そうではないタイミングでご覧になっても大丈夫。金の光と水の癒しが、きっとあなたの心を前向きにしてくれます。この幸せな世界を見逃してしまうのは、もったいないですよ！

金の国水の国

作者	岩本ナオ
出版社	小学館
出版年月	2016年7月

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	ライティング担当 ： miz 札幌在住30代2児の母。レトロゲームとクラシック音楽が大好きで時々自分でも弾く。ムーミンのアニメを観ることと、子どもたちの寝かしつけ後にやるサバイバルアクションホラーゲームが日々の癒し。博物館や郷土資料館の類が好きだが、シビアな開館時間の前によく惨敗している。インドア派だったのが活発すぎる子どもたちによってアウトドア派にさせられた。司馬遼太郎、M・ルブラン、川原泉、藤田和日郎作品が好き。