• 2022/09/02

【犬が登場するおすすめ小説10選】読書初心者な犬好きさんも必見!

犬が出てくる小説が読みたいと漠然と考えはするけれど、「中々希望とマッチするのを見つけることができない」「意外と多くて何から読めば良いのかわからない」。そんな本選びに悩む方に、犬好きスタッフがオススメの素敵なワンコが登場する小説をご紹介します。

犬小説TOP画像

犬が出てくる小説をどう選ぶ?

書店に並ぶ本を選ぶ際、ついつい犬が描かれている書籍に手を伸ばしてしまう、そんな犬好きな方は多いと思います。いわゆる表紙買いと呼ばれるものですが、当たりもあればハズレもある博打な選び方ですし、この選び方を続けるのは避けたいところです。逆に、表紙の装丁にもタイトルにもあらすじにも犬の「い」の字も姿も無いけれど、読んでみると犬が素敵に描かれ、大活躍をしている、といったこともあります。

本を日常的に読み、多くの書籍に目を通している方なら、こういった「意外なところにワンコが!」という出会いを果たすことができます。しかし、犬は好きだけど普段あまり本を読まないという方は、本選びの段階で悩んでしまうという方も多いのではないでしょうか。

たまには本が読みたい。どうせなら犬が出てくる物語がいい。

そう思って探してみれば、犬が関わっている小説というものは、存外数多く出版され紹介されています。一体、どれが面白くて、どれから読めばいいのだろうか。そんな、「犬が登場する本」を読みたいけれど、本を選ぶのに苦労されている方に犬好きさんに読んでほしい、押さえておきたい犬小説を10冊選出いたしました!

【ミステリー・警察小説】働く・闘うカッコいいワンコ

ジャンルとしては、最もポピュラーで人気も高い【ミステリー】や【警察小説】。主人公にとって【相棒】であったり、【警察犬】等のお仕事に奮闘するワンコが描かれることが多いです。

約束の森(沢木冬吾)

約束の森

作者 沢木 冬吾
出版社 KADOKAWA/角川書店
出版年月 2014年7月
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表紙、あらすじからも察せられる通り、ハードボイルドな展開が続きますが、一度読み始めると読む手が止まらない一冊です。

元公安の刑事であり、殺人事件で妻を亡くし退職した過去を持つ主人公が、元上司に頼まれ向かった北の果てにあるモウテルの管理人として潜入捜査をし、見知らぬ人物たちと疑似家族を演じていく……と、あらすじを聞くと、とっつきにくく、普段読書をしない・こういうジャンルは苦手な自分は気軽に読めないのでは?と思われるかもしれません。

しかし、そんな不安も吹き飛ばす、訳アリな人間模様の展開とハードボイルドがうまくミックスされた作品です。物語の緩急がすさまじくバランスがいい、上質なヒューマンドラマに、いつの間にか引き込まれていきます。

また、主人公に負けず劣らずなハードボイルドな活躍を見せるワンコがここぞと登場。犬好きには願ってもない「犬が大活躍」なストーリー展開に大満足できることでしょう。

ハードボイルドワンコ

そんな、ストーリーも絶対楽しめると自信を持っておすすめできる、こちらに登場するワンコはドーベルマンの「マクナイト」

人間に虐待された過去を持ち、マクナイトは人間を信用できなくなった状態でした。そんなマクナイトや事件に関わることで、自分の今の生き方を変えようと主人公が奮闘します。主人公の頑張りもあり、マクナイトと少しずつ心を通わせていく過程が、とても丁寧に描かれています。

また、マクナイトも主人公に負けず劣らずな、ハードボイルドにふさわしい働きを魅せてくれます。ハラハラドキドキとさせるマクナイトに、話も気になるけどとにかくマクナイトはどうなるの?!と振り回されるのもまた一興。

読み終わるころには、マクナイトさん!と敬意と愛をこめて敬称を付けずにはいられないかっこよさと愛くるしさで胸がほっこりとなります。

凍える牙(乃南 アサ)

凍える牙

作者 乃南 アサ
出版社 新潮社
出版年月 2000年1月
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直木賞受賞作であるこちらの作品は、犬がメインの小説かと聞かれれば、違うかもしれません。しかし、作中に登場する絶対的な存在感を見せつけた、狼と犬のMIXである『オオカミ犬』。そのインパクトが未だに鮮明に残っており、あの興奮とオオカミ犬のかっこよさを知って頂きたく、こちらを選出しました。

シリーズ作品の第一作目となるこちらは、男性社会の思想が根強い警察社会で奮闘する、女性刑事の活躍を描いた警察小説。昔気質の中年刑事である相方と衝突しあいながらも、事件の真相に近づくにつれ息の合ったものに。二人が互いに歩み寄っていく展開は、主人公の刑事であることに対する熱意や誇りを強く感じます。また、被害者に残された『咬傷』に関して、読み進めていくにつれ、犬好きにはもう逃げられないしんどい展開が待ち構えています。『犬』をどう育てるかを深く考えさせられる物語として、胸に深く刻まれる作品です。

『犬』は家族であり、相棒であり、私たち人間とともに生きている。一緒に生きていくために、我々人間がしっかり『犬』を育てていくという責任感。誤った道を『犬』に歩かせることの無いよう、互いに支えあい生きていきたいと、心の底から思えた作品です。

圧倒的存在感ワンコ

あらすじを読んだだけで、純粋に犬が好きという方には嫌な予感がしているかと思います。それでも、最後まで見届けてほしいと思わせるワンコは、オオカミ犬(ウルフドッグ)の『疾風(はやて)』

もはや、犬種と名前からわかりきっている説明不要のかっこよさと頭の良さ。ご主人への忠誠心の高さが飛びぬけている、ハイスペックワンコです。

現実でも、かなり育てづらく警戒心が強いと言われている犬種です。しかし、一度でもご主人と認めた人間にはどこまでも付き従う習性をもっており、作中でも嫌と言うほどその忠誠心を目の当たりにすることでしょう。

【ヒューマンドラマ・青春小説】癒し・感動・可愛いワンコ

犬に限らず、動物を扱った題材で最も多い感動物語が展開する【ヒューマンドラマ】。主人公をはじめとする、人間たちにどうワンコが絡むのか、作品によって色々な形で描かれています。

犬と私の10の約束(川口 晴)

犬と私の10の約束

作者 川口 晴
出版社 文藝春秋
出版年月 2010年9月
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作者不明のまま世界に広まった英文の詩『犬の十戒』。この詩をヒントに執筆されたこちらは、映画化もされた原作の小説です。これから犬を飼いたいと思っている方や、無邪気に「ワンワン、ほしい!」とお願いしてくるお子様に、どう対応するか。そんなお悩みを抱えている方に、ぜひ読んで頂きたい小説!

犬を飼うということが、どれだけ大変か。また、自分も犬も成長していくにあたり、どう生活が変化していくのか。それにより、犬との接し方がどう変化するのか。犬を飼う際に今は亡き母と10の約束をしたが、成長とともに薄れゆくその約束。その結果を受け、犬とどう過ごしてきたのか振り返り後悔する主人公と、ひたすら健気にご主人を愛する犬の一生が描かれた作品です。

この小説は『犬を飼う上で、後悔しないため』に、犬と一緒にどう生きるのか、自分の身の振りを考える機会を与えてくれます。

愛と後悔で涙なワンコ

そんな小説を通して、私たちに色々な感情を与えてくれるワンコは、ゴールデンレトリバーの『ソックス』。前足の片方の先が白くなっていることから名づけられた、可愛いお名前。

ゴールデンレトリバーと言えば、賢く人懐っこいことで知られるワンコです。このソックスも、ご主人様を愛する健気な姿を惜しげもなく見せてくれる、愛すべきワンコです。

主人公に寄り添う姿や、寂しい思いをしながらもひたすらにご主人を最初から最後まで愛し抜くその生涯。ただただ感動と人間の身勝手さをより一層痛感し、涙が自然とあふれてくることでしょう。

子どもにもおすすめ①
 

こちらの小説は、映画化だけでなく児童文庫化もされているので、小学生にもおすすめです!犬を飼うということの責任感やマナー、命の大切さを学ぶことができます。

これから犬を飼おうと思っている人。今一緒に暮らしている愛犬がいる人。また『大切な人』とどう付き合っていくか人間関係に悩んでいる人にも、ぜひ一度は読んでいただきたい一冊です。

犬がいた季節(伊吹 有喜)

犬がいた季節

作者 伊吹 有喜
出版社 双葉社
出版年月 2020年10月
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2021年本屋大賞第3位に入選した著者・伊吹有喜さんのこちらの作品は、昭和・平成・令和の時代をそれぞれ生きる18歳の青春が犬と共に描かれています。また、時代は変わっても【18歳】という年齢の変わらない部分に、引き込まれます。大学受験やその当時起こった事件に翻弄される様子は、絶対他人事ではないはずです。恋愛をはじめとする人間関係に悩むことや思うことは変わらない部分があり、共感を覚えることも多々あることでしょう。

淡々と進むようで、でもちょっぴり気になる恋愛模様や人間模様が、確実に読み手の心に触れて何かを残す、温かな物語です。

時代とともにワンコ

主人公たちと時代を共に寄り添い見守り、待っていてくれる。最後の最後まで泣かせにくるこちらのワンコは雑種の白い犬『コーシロー』。

捨てられたコーシローは、迷い込んだ進学高校に通う生徒とともに、12年の青春を駆け抜けます。登場人物から語られるコーシローの姿や、数度コーシロー視点で語られる言葉は、この犬の賢さと優しさ、愛嬌がたくさん描かれその魅力に気づかされます。『犬が待っている場所に帰る』ことがいかに心安らぐことか、理解すると同時に愛おしさでいっぱいになります。

落ち着いているようでしっぽを振って駆け寄ってくる無邪気な姿。コーシローへの愛おしさが読み進めるたびに増えていきます。その生涯をさまざまな人間の視点と時代を通して共にすることができて、とても幸せな気持ちに包まれます。

最後まで、たくさんの人に愛されたコーシローですが、その分コーシローも愛を返してくれていると伝わってくるラスト。愛犬の一生をきちんと見届けなければと改めて決意をできる作品です。

デューク(江國香織、山本容子)

デューク

作者 江國 香織 , 山本 容子
出版社 講談社
出版年月 2000年11月
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100ページ未満の短編で、挿絵が随所に入るので犬好き読書初心者さんには、かなりおすすめの小説です。

愛犬を亡くし、悲しみに明け暮れる主人公。涙が止まらない中、出会ったばかりのハンサムな男の子に、励まされるように色んな場所へと連れていかれる。訪れる場所を楽しみながらも、愛犬の『好きだったもの』が連想され、悲しみが薄れることが無い。愛犬を悼み続ける主人公に、男の子が最後に残す言葉とは……

愛犬家としても有名な江國香織さん。描かれる小説も、ワンコへの愛情が文章にあふれています。また、ペットロスに触れている話なのに、涙だけではない確かな前向きさが最後にほんのりと胸に残るお話です。

こちらの作品は、元は江國香織さんの短編集『つめたいよるに』に収録されている短編です。人気のある作品で、挿絵を随所に盛り込み、一つの作品として新たに出版されました。イラストが入ることで、一層作品に親近感や温かさがわかりやすくなっています。普段読書をされない方も一気に読み終えることができる、内容も読みやすさも優しい作品です。

イケメンワンコ

直接、ワンコが登場する作品ではないですが、主人公の回想で紹介されるこちらのワンコは、プーリーという牧羊犬の『デューク』。モップのような可愛いワンコと言えば、真っ先に頭に思い浮かべる犬種ですね。

どれだけ主人公がデュークを愛し、そして愛されていたか、短い文章の中でも伝わってきます。それを裏付ける、デュークの可愛さがそれだけで一目同然とわかるエピソードの数々に、自分の愛犬を思い出してしまいました。

実際に作品内で、デュークが活躍する姿を見ることはできません。ですが、読了後には間違いなく、デュークというワンコの存在を感じることでしょう。キスがうまく、かっこよすぎるご主人様想いの、最高なイケワンコという説明に、嘘偽りはありません。

【一人称が犬視点】まさに主役なワンコ

意外とあるようで無い、物語の語り部が【ワンコ】の小説。普段、自分では考えない、想像もつかない人間の視点とは違う世界を楽しむことができます。

パーフェクトブルー(宮部みゆき)

パーフェクトブルー

作者 宮部 みゆき
出版社 東京創元社; 新装新版
出版年月 2019年11月
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財布という無機物視点の長編小説『長い長い殺人』の著者・宮部みゆきさんが、犬視点で書かれたこちらの小説は、まさに【犬が主人公!】の物語です。

内容も、探偵事務所調査員であり家族の加代ちゃんと一緒に、発見した遺体の謎を追う宮部みゆき作品らしさ満載のストーリー展開!伏線の回収など、しっかりとしたミステリーです。暗くなりそうな場面でもワンコの存在と、相棒の加代子の行動力や読んでるこっちが心配になってくる気の強さも相まって、不思議とワクワクが勝ります。

これぞ刑事の風格ワンコ

元・警察犬の能力を惜しげもなく私たちに披露してくれる主人公ワンコは、ジャーマン・シェパードの『マサ』。人間でいえば、中年なおじさま。貫禄と優しさがにじみ出るワンコです。

過去の経歴から、その能力を遺憾なく発揮し、人間の機微によく気が付き、飄々とした中に熱さを持っている。読み進めていくうちに、マサが一瞬犬ということを忘れてしまいそうになるほど賢く饒舌。まさに理想とする警察犬の姿を見せてくれます。しかし、ときたま挟まれる人間に対する疑問や、犬故の習性を語る姿には、思わずクスっとする場面や、ハッとさせられる部分もあります。

探偵事務所の調査員・加代ちゃんのお供を仕事と胸を張る。家族思いで、渋みと可愛さが同居する老シャーマンの心情と、その活躍をぜひご覧になって頂きたいです。

子どもにもおすすめ②
 

また、こちらの作品は『心とろかすような―マサの事件簿』という続編が出版されています。児童書文庫版『マサの留守番-蓮見探偵事務所事件簿-』もあり、子どもでも楽しめるお話です。

敷居がそこまで高くなく、犬視点というありそうであまり無いこの作品。年齢問わず、少しでも多くの人に触れてもらいたいなと思います。

スピンク日記(町田 康)

スピンク日記

作者 町田 康
出版社 講談社
出版年月 2014年4月
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著者・町田康さんの実在する愛犬視点で展開される筆者の日常を綴った、『エッセイ』作品のこちら。読み進めているうちに、犬が観察日記の体で書いた、日常ほのぼの小説のように思えてきます。

実際、そんなわけあるかい!とツッコミを入れたくなる、非現実的な設定があったり。しかし、犬視点だからこそ、でも……もしかしたら……と思えてしまう内容は、ただただ面白おかしく、読む手が止まりません。

人間である町田康さんが書いているはずなのに、犬が使いそうなオノマトペの効果が絶妙!彼の愛犬が実際に書いているかのような錯覚をしてしまいます。

まるで人間?!なワンコ

さて、そんなご主人を『ポチ』と呼び(この呼び名の理由は、ぜひ本編でご確認ください!)、観察日記をつけているワンコは、プードルの『スピンク』

自分の生い立ちから現在に至るまでもしっかりと理解している、賢く口がとても達者なワンコです。難しい言葉も知っていて、人間の行動から色々と察することができる頭の良さ、人間のような振る舞いが愛らしさ満載!それでも、やっぱり犬らしいと思える人間への疑問や感想を抱く様子は、おませな子どもを見ているようで、自然と笑顔がこぼれます。

あくまで、筆者が描くスピンクの思考。しかし、ワンコあるあるの理由についてスピンクが教えてくれる描写には、妙な説得力があります。ついつい、世の犬たちは思っているのかな? と考えてしまったり……

読み進めれば進めるほど、スピンクのことをもっともっと知りたいと、読む手が止まらなくなることでしょう。

続編とその生涯
 

スピンクに関する書籍は他にも出版されています。一緒に住むことになった家族が増えたりと賑やかで、そして幸福に包まれたシリーズです。

2017年に、その生涯を終えることとなってしまったスピンクですが、本を開けばいつでもスピンクに出会うことができます。著者の愛を受け、私たちにもその幸せをわけてくれたスピンクの日記を読んで、その幸福感を味わって頂きたいです。

著者・町田 康が歌う鎮魂歌「スピンク」

【短編集・アンソロジー】ワンコの数だけある物語

移動時間や隙間時間でも手に取りやすい短編集やアンソロジー。ただし、油断していると想像を超える衝撃作にも出会ったりできる油断できない作品があったり!

ソウルメイト(馳 星周)

ソウルメイト

作者 馳 星周
出版社 集英社
出版年月 2015年9月
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直木賞受賞作『少年と犬』でも犬の描写が絶賛された、愛犬家で有名な著者・馳星周さん。受賞前に書かれたこちらの作品も、さまざまな犬と人間の『絆』を、多種多彩な展開で描いた短編集です。

馳星周さんといえば、裏社会などを舞台にしたノワール小説の名手のイメージが強い作家さんですよね。しかし、犬への愛情が随所に色濃く反映されているこちらの作品を読むと、ジャンルを超えて素晴らしい作家さんであることが、改めてわかります。

作中でも語られる、犬を飼うのも免許制にすればいいという言葉が、未だに心に残っています。犬を飼うことの楽しさや美点だけでなく、その大変さや苦労が、現実的かつとてもシビア。そこがまた、筆者の犬への愛情深さが伺うことができ、厳しい中にある優しさが際立って伝わってくるお話ばかりです。

また、多彩な短編それぞれに、物語を一層深みへと押し上げる色んな犬種が登場します。

  • チワワ
  • ボルゾイ
  • ウェルッシュ・コーギー・ペンブローク
  • ジャーマン・シェパード・ドック
  • ジャック・ラッセル・テリア
  • バーニーズ・マウンテン・ドッグ

違う犬種が描かれていることで、犬種によって育て方や接し方がまったく違うことが解ります。主人である人間の責任の大切さが、身に沁みて伝わってきます。よりリアルに具体的に作中で書かれており、こちらも犬を飼う前に一度は読んでみてほしい本です。

ソウルメイトなワンコたち

登場する主人公たちが抱える過去や後悔、悩み……それぞれ抱えているものはまったく違います。このお話の主人公たちも、心のどこかにある侘しさや寂しさを抱えている状況です。それを察して寄り添ってくれる、一緒に歩いてくれる人間にとって『ソウルメイト』な犬たち。そう呼ぶにふさわしい犬たちが登場します。

あくまで人間である主人公の心情から見る犬たちの姿は、決して主役ではないかもしれません。しかし、犬が人間の相棒と呼ばれるが所以、そんな犬の素晴らしく愛すべき姿を、ありのままに読める小説です。

※涙腺を刺激するお話が続きますので、出先でお読みになる際はお気を付けください。

Wonderful Story(ワンダフルストーリー)

Wonderful Story(ワンダフルストーリー)

作者 伊坂幸犬郎/犬崎梢/木下半犬/横関犬/貫井ドッグ郎 共著/友清哲 編
出版社 PHP研究所
出版年月 2017年9月
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有名作家5名が名前をわざわざ『犬』にちなんだ名前に変える所まで徹底。すべてワンコにちなんだお話で纏められた短編アンソロジーのこちら!犬好きさん達に一度は手に取って貰いたい一冊です。

どこかで見たような、聞いたような著者ばかりの小説は、それだけで安心感があります。内容もそれぞれの著者らしい短編だったり、意外性が発揮されている作品だったり。普段から本を読まれる方にも新鮮に感じられるのではないでしょうか。
また、色んな著者のお話が読むことができるのもおすすめの理由です。こちらを参考に、今後本を選ぶ上で好みのお話を自分自身で見つけやすくなるキッカケになればいいなと思います。

アンソロジーならではのお話とワンコたち

5名の著者ということで、もちろん5話の『犬』が関わるお話がありますし、それぞれの作品に登場するワンコのさまざまな在り方を楽しめます。

  • 「イヌゲンソーゴ」伊坂幸犬郎 (伊坂幸太郎)
  • →馴染み深い寓話に登場するワンコ達が繰り広げる、ワンワン会話劇を楽しめるちょっぴりファンタジーな現代御伽噺。

  • 「海に吠える」犬崎梢 (大崎梢)
  • →千葉の犬吠岬に引越してきた、家族の問題に悩む少年と傍に寄り添うワンコの成長物語で、地名にもこだわりを持って描かれた青春譚。

  • 「バター好きのヘミングウェイ」木下半犬 (木下半太)
  • →夫の借金のせいでピンチに陥る美人妻と、とんでもない要求をしてくる悪い男と、男に連れられてやってきたワンコの、痛快コメディ。

  • 「パピーウォーカー」横関犬 (横関大)
  • →盲導犬の訓練士を目指す主人公や、パピーウォーカーの家族など、盲導犬の世界が緻密に描かれた、短編とは思えない上質なミステリー。

  • 「犬は見ている」貫井ドッグ郎 (貫井徳郎)
  • →世にも奇妙な犬物語とも言える、行く先々でワンコの視線を感じて恐怖を抱く主人公をコメディタッチで展開しつつも、犬好きでもゾワッとしてしまうちょっぴりホラー。

ファンタジー・ヒューマンドラマ・ミステリー・コメディ・ホラーと、お腹いっぱいになりそうな要素が、盛りだくさん!大好きなワンコが添えられたアンソロジーならぬ、ワンソロジー。
きっと、お好みのジャンルを見つけることができるはずです!

【海外小説】世界共通愛しいワンコ

海外文学はなぜだか手を出しづらいと思っている方も少なくないと思います。馴染みのない作家が多いということもあるでしょう。そもそも、横文字の単語や名前が苦手な人も多いのではないでしょうか。
しかし、ただ何となくで敬遠するのはもったいないほど、海外文学も名著であふれています。

白い犬とワルツを(テリー・ケイ)

白い犬とワルツを

作者 テリー・ケイ/著 、兼武進/訳
出版社 新潮社
出版年月 1998年3月
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こちらの作品は、海外及び日本でも映画化されているロングセラーの小説です。タイトルを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

最愛の妻に先立たれ、自らも病気を抱える老人・サム。ひっそりと一人で自由な余生を過ごそうとしていた矢先、自分にしか見えない白い犬が家に訪ねてきて……

この話は、子どもの頃に読むのと大人になって読むのと、年をだいぶ重ねてから読むのとで、見え方や感じ方が全く違ってくる、三度楽しめる物語です。

また、主人公の家族の善良さや犬と交流する描写や、穏やかなぬくもりある描写に、心が浄化されていくような気すらしてきます。

非常にシンプルゆえ、先も何となく感じ取れる物語です。しかし、だからこそ一つひとつの展開に心を揺さぶられ、自然と涙が頬を伝う穏やかな感動が待っています。

最後まで自分の人生を貫き全うしようとするサムの姿に、こんな老後を送られたら……という羨望が募ります。また恋愛と呼ぶには情が深く、家族愛と呼ぶには甘酸っぱさも感じられ、普通の犬小説とはまた違った物語です。多くの人に触れて頂きたいなと思います。

主人公のためのワンコ

この白い犬は、名前を特に付けられているワンコではありません。ただ、ひたすらに主人公の傍に突然現れては、そっと寄り添っていく、不思議なワンコです。

察しの良い方には、すでにこのワンコが主人公にとってどんな存在であるか、解ってしまうかもしれませんね。

歩行器を使ってダンスを踊る器用さ、事故に巻き込まれる主人公と最後まで共にいた姿。今の時代にこの表現はどうかと思いますが、まさに良妻賢母な艶のある穏やかなワンコに、心奪われることでしょう。

ちなみに、日本版の映画では紀州犬がこちらのワンコを演じたそうです。

もっと気軽に犬に癒される本を読みたい方には

今回の記事では、普段あまり本を読まない、読む本に悩んでいるといった犬好きさんにおすすめの『小説』を選出しました。しかし、『犬』が関わる書籍は、小説に限らず幅広いジャンルで取り扱われています。

動物といえばの『ノンフィクション』や、『児童書』に『コミックス』でもワンコは大活躍です。もっとカテゴリーを広げてみれば、『狼男』や『人面犬』といった、さまざまな『犬』の形がこの世にはあふれています。

その中でも、犬好きにとって最も手に取りやすい本といえば、『犬の写真集』です。

それでも、せっかく本を読むのだから、写真だけというのはちょっと……という方や、犬好きさんへのプレゼントとしておすすめの書籍がこちら!

人生はワンチャンス! 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

人生はワンチャンス! 「仕事」も「遊び」も楽しくなる65の方法

作者 水野敬也 (著), 長沼直樹 (著)
出版社 文響社
出版年月 2012年12月
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偉人が残した名言や格言が解りやすい解説で紹介。その言葉を表現したかのようなポージングを決める、可愛い犬の写真が一緒に掲載されています。可愛くて実用的な、写真集兼メッセージブックです。

写真と心に残る名言の数々に、心が癒され励まされる書籍となっており、ポストカードなどにもできちゃう!手元に置いておくのは勿論、プレゼントにもおすすめです。

また、さまざまな犬種のワンコの写真が盛りだくさん!小型犬から大型犬まで多方面に好みを網羅しているので、犬好きには最初から最後まで楽しめます。

このシリーズは、続編に犬だけでなく『猫』の写真を扱ったバージョンや多種多様な『動物』の写真を扱ったバージョンも出版されています。

人気シリーズ一覧

●『人生はワンモアチャンス!』

●『人生はニャンとかなる! 明日に幸福をまねく68の方法』

●『人生はもっとニャンとかなる! 明日にもっと幸福をまねく68の方法』

●『人生はZOOっと楽しい! 毎日がとことん楽しくなる65の方法』

気軽に読めて、しっかりと心に沁みって癒される。こちらの書籍もぜひチェックしてみてください。

SNS発祥のペット書籍も!
 

今ではSNSや動画サイトの普及もあり、たくさんの『ペット本』『写真集』が出版されています。

どの写真集を買うか迷ったら、身近なSNSからチェックしてみましょう。自分が最も癒されるワンコや写真家を探してみるのも楽しいかもしれません。

まとめ

犬小説サブ画像

今回、10冊の小説をご紹介させて頂きましたが、まだまだ多くの『犬』が登場する小説は世に出版されています。

現実で犬をはじめとする動物と暮らすには、良いことばかりだけでなく責任を伴う大変なことも多くあります。昨今のニュースでも小さなことから大きなことまでさまざまな問題が長年続いていますよね。近年では劣悪環境で育った犬たちの保護や、ノーリード禁止問題にマイクロチップ義務化なども話題にあがりました。

犬を飼いたいと考えている方は勿論、愛犬が居る方も、今回ご紹介したような『犬』に関する本や『犬』が登場する本からも、改めて犬と共存し互いに幸せに歩んでいけるよう、考える機会を得ることができるのではないでしょうか。

何よりも、少しでも興味を持てる本を見つけて、今後も自分で自分の好みの本を見つける楽しさ、果ては心の友・心の相棒と呼べるワンコに出会える一つのキッカケになって貰えたら、犬好きとしてとても嬉しいです。

▼おすすめ作品のご購入は『もったいない本舗』でどうぞ!▼

maru
ライティング担当 : maru

札幌在住の30代。ジャンルを問わず小説や漫画を主に愛読。映画も舞台もドラマもアニメも気になるものにはとにかく一直線。音楽はロック・パンクから昭和歌謡、インストまで気に入った曲を延々と聞き続ける派。愛犬の柴犬が心の支え。リズムゲームと、大相撲を筆頭に各種格闘技観戦が趣味なにわかファン。松井優征、西森博之、篠田節子作品が好き。

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