- 2022/05/11
夢中で読める東野圭吾おすすめ作品30選!映画・ドラマの原作も紹介
一家に一冊はある可能性が高い作家、東野圭吾さん。抜群の構成力と予想もつかないどんでん返し、無駄のない読みやすい文章は幅広い年代から人気を集め、日本を代表する大衆ミステリー作家の地位を不動のものにしました。古本店の本好きスタッフが、おすすめ作品をご紹介します。
一家に一冊あるかも?東野圭吾さん作品の概要
皆さんは、東野圭吾さんを知っていますか?家族の本棚に必ず一冊は紛れ込んでいる確率が高い、日本を代表する大衆ミステリー作家です。代表作は『容疑者Xの献身』『白夜行』など。抜群の構成力と緻密な伏線・回収のテンポが心地よく、分厚いストーリーを一気に読ませてくれます。考えさせられる葛藤や、予想外のどんでん返しも鮮やか。
もしご存じない方でも、数多くの作品が映画・ドラマ化されているため、映像で彼の作品を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。映画系サブスクのおすすめ人気ランキングにも、《東野圭吾原作》クレジット作品が何かしらリスト入りしているため、「この作品も東野圭吾だったんだ」となる確率が非常に高いです。そんな東野圭吾さんの主な受賞歴はこちら。
江戸川乱歩賞(1985年)
日本推理作家協会賞長編部門(1999年)
このミステリーがすごい!(2005年)
週刊文春ミステリーベスト10(2005年)
本格ミステリ・ベスト10(2005年)
直木三十五賞(2006年)
本格ミステリ大賞小説部門(2006年)
中央公論文芸賞(2012年)
柴田錬三郎賞(2013年)
吉川英治文学賞(2014年)
代表作である『容疑者Xの献身』(2005年刊)は、《このミステリーがすごい!》《週刊文春ミステリーベスト10》《本格ミステリ・ベスト10》《直木三十五賞》《本格ミステリ大賞小説部門》と驚異の5冠を成し遂げています。その他文学賞の候補歴も、数え切れません。そんな東野圭吾さんのおすすめ作品を、古本店の本好きスタッフがご紹介します!
非常用持ちだし袋に一冊「東野圭吾」?
震災時の備えである、非常用持ちだし袋。この中に一冊、東野圭吾の本を入れておくことをおすすめします。紙の本での読書は、電源いらずで静かに過ごせる最高の娯楽。読みやすく、続きの気になるミステリー小説ならすぐに夢中になって、周りも時間も忘れて過ごすことができますよ。同様に、入院セットの中に入れておくのもおすすめです!
東野圭吾作品おすすめ30選
それではおすすめ作品をご紹介します!先にあなたのタイプに合わせた作品が知りたい方は、次の【タイプ別おすすめ作品】の項目からご覧ください。
東野圭吾おすすめ作品30選
流星の絆
容疑者Xの献身
手紙
白夜行
秘密
時生
パラレルワールド・ラブストーリー
さまよう刃
マスカレード・ホテル
放課後
宿命
幻夜
仮面山荘殺人事件
ナミヤ雑貨店の奇蹟
変身
探偵ガリレオ
卒業
赤い指
人魚の眠る家
新参者
むかし僕が死んだ家
片想い
分身
天空の蜂
祈りの幕が下りる時
どちらかが彼女を殺した
白鳥とコウモリ
レイクサイド
眠りの森
ラプラスの魔女
流星の絆
「大人になったら、三人で、犯人探して復讐しような」。両親を惨殺され、復讐だけを生きる糧に壮絶な人生を歩んできた三兄妹。大人となった現在、遂にその手がかりが見つかります。最初で最後のチャンスに死に物狂いでしがみつき、綿密な計画を立てて実行に移そうとしたそのとき。たった一つの誤算が、計画の崩壊という可能性を示唆します。妹が、仇の息子に恋心を抱いてしまったこと。復讐を心のよすがとしてきた彼らは、一体どういう結末を選ぶのでしょうか。
ドラマも大ヒットした、大人気作品です。しかし、やはりここは原作を読んでいただきたい。さまざまな葛藤の末に彼らが選んだ未来に、涙が止まらなくなります。重いテーマは読んでいて辛くなりますが、登場人物たちの選択が気になりすぎて、ページをめくる手が鈍ることはありません。決して途中で投げ出さず、最後の最後まで気を抜かず見届けてください。ちなみに、ドラマ版は設定も結末も原作と違うものになっています。ドラマという媒体であることからエンタメ性が増し、笑える要素がそこかしこに追加。より一般的な作品となっています。東野圭吾作品の中では重すぎる部類には入りませんが、心配な方はドラマから入ってみても良いかもしれません。
ちなみに、東野圭吾さんのおすすめ作品の紹介サイトで、こちらの作品に触れていないサイトは一つもありませんでした!(2022年3月スタッフ調べ)代表作である『容疑者Xの献身』の次は、こちらをお手に取ってみてはいかがでしょうか。
容疑者Xの献身
何から読むか迷っている方にはこちら。"東野圭吾作品"の代名詞、天才数学者VS天才物理学者の傑作です!国内の主要なミステリー文学賞4冠、その後は直木賞も受賞と驚異の5冠。反面、これまでのミステリ界に一石を投じ、賛否両論の大論争を巻き起こしたことでも有名な作品でもあります。不遇の天才数学者が思慕を寄せる隣人を守るため、己の才を駆使して完全犯罪を構築。大学時代の同期であり、同じく天才と称された物理学者・湯川学は、それを阻止することができるのでしょうか。
ドラマも映画も大人気のため、原作を読んでいると主人公の湯川のビジュアルは俳優の福山雅治さんの姿が思い浮かんでしまう方も多いかもしれませんね。実はこちらの作品は、全国学校図書館協議会集計による、2021年度の「今の学年になってから読んだ本」にもランクインしています。(他は『加賀恭一郎シリーズ』『ラプラスの魔女』など)一説として、中高生に人気の動画サイトtiktokの小説紹介動画がきっかけとなり広まった、というものがあります。映画系のサブスクによる影響などもあるかと思いますが、中高生たちの間でも読まれるほど、年代を問わず夢中で謎を追いかけられる作品であることの証明となっているようで、ファンとしては嬉しい限りです。東野圭吾をまだ読んだことがない、という方は、ぜひこちらの容疑者Xからお手に取ってみてはいかがでしょうか。
なおこちらはシリーズ3作目。シリーズの全タイトルと順番は次の項目でご紹介しております。気になる方・順番通りに読みたい方はそちらも併せてチェックしてみてください。
手紙
何もかもがやるせない。毎日新聞日曜版に連載され、映画・舞台・ドラマと他メディアでも沢山の人の心に重い枷をはめ込んだ作品です。両親と死に別れ、唯一の肉親である兄は、強盗殺人に手を染め刑務所へ。孤独な人生のレールを突如敷かれてしまった高校生の主人公・武島直貴の、抗いと葛藤を描いています。「強盗殺人犯の弟」として世間から排除され続ける日々に届く、獄中の兄からの手紙。こちらは地獄のような生活をしているというのに、兄の手紙の内容は呑気なもので、思わず黒いものがどろりと肚の底で蠢きます。幸せを掴もうとするたびに、またかと言わんばかりに訪れる「強盗殺人犯の弟」の枷。その重さに、ページをめくる手が止まりかけてしまうかもしれません。しかし、「手紙が届かなければ苦しむこともなかっただろうが、道を模索することもなかった」という直貴の人生が果たしてどういう結末を迎えるのか、静かに見届けていただきたいと思います。読後は、きちんと希望も残りますよ。中学生・高校生向けの、読書感想文用の図書としてもおすすめです。
白夜行
緻密な伏線が何もかも素晴らしく、必ず2度読んでしまう作品です。迷宮入りした、廃墟ビルでの殺人事件。被害者の息子・桐原亮司と容疑者として疑われていた人物の娘・西本雪穂、その周りで起こる不可解な事件に疑念を抱いた刑事の笹垣が、執念で真相に迫ります。 ミステリー&本好きさんにはすぐにおすすめしたい名作ですが、「東野圭吾を最初に読む本」としてはおすすめしません。スタッフの手元の集英社文庫版は表紙カバー抜きでも厚さ3.4cmと、かなり分厚いです。しかし2冊目以降には、必ず読んでいただきたい。映画もドラマも大ヒットのミステリー長編の傑作という世間の評価に、偽りはありません。一切無駄のないエピソード、緻密な伏線と明らかになっていく事実に次のエピソードというテンポの良さは、850ページ超という物理を軽々と飛び越えて瞬く間に読了に至らせてくれます。作中の時系列である、1973年から1992年までの実際にあった社会情勢を踏まえたストーリー展開も非常にリアルで、説得力しかありません。メインとなる人物の心理描写が一切なく、周りの人間たちの証言や行動でのみ描かれているという手法も、読者の心に更に鮮烈な爪痕を残します。タイトル通り、救いは無い白夜のような世界観です。ストーリーにスカッとしたものをお求めの方にはおすすめできませんが、緻密すぎる伏線回収にスカッとしたい方には強くおすすめします。
秘密
これから辛辣な告白をするため、あくまで個人の感想であることを念頭に置いてお読みください。女子中学生のときに初めてこちらを読んだスタッフの感想は、「気持ち悪い」でした。さまざまなレビューでも多くの方々が仰られているように、年齢性別既婚未婚で感想が大きく違ってくる、まるで拡散反射のような作品です。交通事故で亡くなった妻の魂が、娘の体に宿ってしまったことから始まる、「秘密」の生活。一見、最悪は免れた状況に思えますが、これが新たな重い葛藤を主人公たちの人生にもたらします。ぜひご自身でストーリーを追いかけ、ラストの展開にご自身の感想をお持ちになっていただければと思います。間違いなく、読後の感想ディスカッションで盛り上がれる作品です。ちなみに、多方面の事情が理解できるようになった現在、再び読んだスタッフの感想は、前述のものだけではなくなりました。が、やはり読後感が良いとは言えない作品のため、スッキリしたものがお好きな方は、ぜひ口直しに後述の『浪花少年探偵団シリーズ』をお読みください。
時生
泣きたいときはこちら。不治の病を患う息子・時生(ときお)を、まさに看取ろうというそのとき。主人公の宮本拓実は、過去に出会ったトキオと名乗る少年のことをふと思い出します。ダメ人間だった拓実がトキオと共に、失踪した恋人の謎を共に追いかけた過去を。拓実がとにかくダメ人間過ぎて苛立つ場面が多く、反対にトキオがとにかく健気で優しい。あまりの苛立ちに本を閉じてしまうのだけはもったいないので、ぜひトキオの活躍に心を傾けて、ストーリーの疾走感に身を任せてください。最後まで拓実を見捨てなかったトキオによるその徳の積み重ねが、ラストで一気に爆発し号泣に変わります。涙もろい方は、できればご自宅で読まれた方が良いかもしれません。読書感想文の図書としてもおすすめです。
パラレルワールド・ラブストーリー
どちらの世界が本物なのか?その問いがずっと付きまとい、あっという間に読了してしまう作品です。主人公・敦賀崇史は、無二の親友から恋人を紹介されます。その恋人はかつて自分が一目ぼれした女性。崇史は激しい嫉妬にかられますが、友情を壊したくなかったためにその感情を押し殺します。しかしある朝目覚めると、彼女は自分の恋人として傍にいました。脳科学と記憶の研究を進める主人公たちの、悲しい三角関係を描いています。異なる時系列が次々と提示され、それが少しずつパズルのピースが合わさるように一つの事実へと繋がっていく、この一連の流れがお見事。事実が判明した後は、もう一度読み返したくなってしまいますよ。ひとつ注意していただきたいのが、本作は甘いラブストーリーではありません。ミルクココアだと思ってがぶ飲みしたらエスプレッソだったという悲劇を回避するため、きちんとビターな味を想像してからお読みください。
さまよう刃
正義とは何か、わからなくなってしまう作品です。大事な一人娘が、複数の少年たちに蹂躙の末殺されてしまった、主人公の長峰。しかし少年たちは少年法に守られ、十分な裁きを与えられることはありません。失意の中、謎の密告電話から犯人を知った長峰は、復讐の道を選びます。犯人の一人を惨殺し、警察に追われながらも、娘の無念を果たすために。思わず読者のほとんどが長峰に共感してしまうことでしょう。しかし法律は、警察は、それを許しません。長峰による決死の行進と、警察による法治国家を守る矜持の攻防は必見です。執念で犯人までたどり着き、猟銃を構えた長峰のその先のシーンは、どうぞあなた自身の答えを持ってお読みください。徹頭徹尾やるせなく、女性にとっては辛いシーンもあるため、メンタルが元気なときにお手に取ることをおすすめします。
マスカレード・ホテル
舞台と設定がとにかく秀逸な、スタッフおすすめ作品です。一流ホテルを舞台に繰り広げられる、優秀なフロントクラーク・山岸尚美と、まだまだ青い新人刑事・新田浩介の凸凹コンビが面白い!《人をもてなすホテルスタッフ》と《殺人犯を探して捕まえる刑事》という、人間を見つめる視点が違う二人。当然のように衝突しつつ、また協力しつつ、事件を追いかけていきます。事件解決とホテルスタッフ、と言うと、畑違いのように思えますよね。しかし、「お客様に快適に過ごしていただく」というホスピタリティから培われた圧倒的洞察力が、事件の解決に大貢献!説得力があり、見ていて納得&爽快ですよ。ホテル側の事情やお仕事内容を垣間見ることができるのも面白い。こちらの読後にホテルへ宿泊する際は、また違った視点で滞在時間を楽しめるようになるかもしれませんね!
放課後
江戸川乱歩賞受賞、東野圭吾さんのデビュー作です。女子高で起きた密室殺人事件を追いかけます。今読むと設定やエピソードの処々に時代の古さを感じますが、時代に囚われない人物の心理描写は、デビュー作と思えないほど秀逸。丁度良く張られた伏線も綺麗に回収、ラストもしっかり綺麗などんでん返しを決めてくれます。まさに作者の道がここから始まったのだとしみじみ味わえる作品です。殺人の動機に疑問を持たれる感想を見かけることがありますが、《思春期の女子たちの尊厳》という視点から考えると、納得の動機だとも言えるのではないでしょうか。読む際は書かれた時代を考慮して、登場人物のモラルにあまりイライラされないようにお進みください。
宿命
複雑に絡み合った謎が最後に綺麗に解ける、ファンの間では初期の名作として人気の作品です。医者になる夢を絶たれ刑事となった主人公・和倉勇作。彼が殺人事件の容疑者として追うことになった人物は、学生時代に数々の敗北感を和倉に植え付けてきたかつてのライバル・瓜生晃彦でした。苦い記憶を思い出す勇作に更に追い打ちをかけるように、かつて勇作が別れざるを得なかった過去の恋人は、晃彦の妻となっていました。トリックというよりは、人間同士の関係性にまつわる謎を追いかける方に重点が置かれています。ストーリー自体は重苦しいものではありますが、ラストに後味の悪さはありません。謎が綺麗に解けたことによるスッキリ感が強く残り、タイトルの意味もはっきりとわかります。最後の台詞には、どこか報われたような気持ちになってしまうかもしれません。
幻夜
ぜひ、『白夜行』を読んでからお読みください。『白夜行』の姉妹作です。スタートは阪神淡路大震災。震災の混乱から衝動的に殺人を犯してしまった主人公が、それを一人の女性に目撃されてしまったことから、永遠の夜が始まります。何を書いてもネタバレになってしまいそうなため、手短にご紹介させてください。『白夜行』と同じく分厚く伏線が緻密すぎて、読み終わったら必ずもう一度読み返したくなります。あのときあなたが感じた衝撃が、そのままこの作品にはこめられています。『白夜行』に感情を揺さぶられた方は必読の名作です。
仮面山荘殺人事件
王道のクローズドサークルミステリー作品、かと思いきや、ラストのどんでん返しに唖然としてしまう快作です。8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入。脱出を試みるもことごとく失敗してしまい、遂に1人が殺されてしまいます。しかし、どう考えても銀行強盗が犯人とはなりえない状況。裏切者は誰なのか、残された7人は疑心暗鬼の中、生き延びるために足掻きます。正統派のミステリ好きさんは、読後に盛大なツッコミを入れたくなるかもしれません。しかし舞台設定から何からここまでコンパクトにまとめ、最後までスピード感を保ったまま読ませてくれる手腕がお見事。サクッと気負わず読めるミステリとしてオススメ作品です。
ナミヤ雑貨店の奇蹟
ほっこりできて読後感も良い、しんどい作品が苦手な方向けです。ミステリーというよりは、ファンタジーなヒューマンドラマ。空き巣をした3人の少年が偶然逃げ込んだ古い建物は、《ナミヤ雑貨店》。現在は誰も住まわぬそこは、かつては悩み相談を請け負う店のようでした。そこで夜明けまで身を隠そうとしていた3人の元に、閉まり切ったシャッターの郵便口から悩み相談の手紙が届きます。不思議なその手紙を読んでしまったことから、時空を超えた長い長い夜が始まりました。少年たちが、ナミヤ雑貨店の店主に代わって悩みを解決することに奮闘します。作中では5名の相談を解決。それぞれ無関係の人間かと思いきや、実はどこかで繋がっていて、最後にはきちんと真実へと辿り着きます。繋ぎ繋がった先が、どうか希望に満ちたものであることを願ってやみません。多少ご都合主義な部分もありますが、社会のしんどさに息切れした方にとっては、真冬のあったかいココア缶のように心にしみるのではないでしょうか。
変身
自分が、全く知らない他人になっていく恐怖が、とにかくリアル。不慮の事故により世界初の脳移植手術を受けた主人公・成瀬純一。しかし術後、自分の性格がどんどん変わっていくことに戦慄します。自分は消えてしまうのか、自分はこの脳の持ち主になってしまうのか。そんな恐怖と葛藤の中、脳の持ち主の正体を突き止めようと、謎を追いかけます。自分が自分以外のものに変わってしまう、恐怖と葛藤と抗いの過程を楽しむ作品です。ラストもかなり後味が悪い!得体のしれない不気味さが作品を通して描かれているため、ヒロインの献身さにもどこか恐怖を覚えてしまうから不思議です。一人称も、いつの間にか《僕》から《俺》に変わっています。該当箇所を見つけて、ぜひゾッとしてください。
探偵ガリレオ
ガリレオシリーズはここから始まりました。まるで魔法のような超常現象を、天才科学者・湯川学がすべて科学で解決します。実は当初は短編連作もの。本書では、5つの事件を湯川が紐解きます。それぞれが独立している短編のため、「東野圭吾を読みたいけど、何から読んだら良いか迷っている」という方にとてもおすすめです。これだけの文字数で、これだけの謎を提示して綺麗に解決という手腕もお見事。隙間時間でサクッと読めるものを探している方にもオススメ東野作品です。ガリレオの世界へ、ようこそ!
卒業
東野圭吾氏のデビュー2作目が、こちらの加賀恭一郎シリーズの1作目です。大学生の加賀が、密室で亡くなっていた友人の死の真相を探ります。昭和61年刊行ということでバブル真っただ中の時代背景ですが、内容は悲哀に満ちています。ラストも切ない。更にトリックはガチガチにお堅い難解なもの。図解もありますが、百戦錬磨のミステリ好きさんでないと、一度で理解するのは難しいかもしれません。作中の学生たちの様子に時代の移ろいを感じながら、複雑な友達関係を掘り下げさまざまなことから「卒業」する登場人物たちを、静かに追いかけましょう。
赤い指
育児、介護、いじめ、少年犯罪など、社会の闇を一気に詰め込んだ、非常に重い作品です。唯一の救いは、こちらが加賀シリーズの一つであり、加賀と父親の絆がひっそりと描かれていることでしょうか。少女の遺体が発見された事件で、捜査線上に挙がったごく平凡な家庭。こちらの家族たちが隠す暗い真実を、加賀が容赦なく暴きます。どこの家庭にも起こり得る問題であるという事実が、非常に恐ろしく重苦しいです。感受性の強い方はメンタルが元気なときに読まれることをおすすめします。もちろん後味も悪すぎるため、こちらの作品を反面教師に自分の姿をきちんと顧みるという、ポジティブな方向へ持っていくと良いかもしれません。
人魚の眠る家
「子どものために狂えるのは母親だけなの」。愛する一人娘が、不慮の事故により脳死状態に。離婚するはずだった夫婦は、驚くべき最新技術を使って、娘との生活を続けることを決断します。何を以て死とするのか、どうあれば生きていると言えるのか。生と死について、深く考えさせられる作品です。世のお母さんたちはもちろん、我が子に限らず大切な人が同じ状況になったらと考えたら、誰もが激しく共感してしまうのではないでしょうか。作中を通して恐ろしいまでの狂気に圧倒されますが、ラストはしっかり希望に満ちた未来へと繋がっています。思わず涙がこぼれてしまうかもしれないため、ぜひお手元にハンカチをご用意してから見届けてください。
新参者
加賀恭一郎シリーズ8作目!《このミス》《文ミス》2冠達成の、日本橋人形町に行きたくなる作品です。加賀が日本橋署に異動となり、人から人へ繋がる謎を、彼らに寄り添いながら一つずつ解いていきます。全9章から成る短編連作のため、隙間時間に区切って読みやすい。しかし、東野圭吾さんらしく謎の糸は繋がり続けていくため、続きが気になって結局あっという間に読み終えてしまうことになります。インタビューによると、作者自身が「この町と人々を描きたい」と望んで、何度も町中を歩き回り、物語を紡いでいったそうです。殺人事件が絡んでいますが、それでもどこかあたたかみを感じさせる物語なのは、人形町の空気や魅力があふれんばかりに綴られているからなのではないでしょうか。事件がないと加賀の活躍は見られませんが、加賀による平和な人形町物語というものも読んでみたかったという矛盾を抱える方も、きっと多いはずです。
むかし僕が死んだ家
ガリレオシリーズ10作目『透明な螺旋』と繋がっています。ファンの方は、"湯川学シリーズ"として必読です!主人公の「私」が、7年前に別れた彼女から、長野県にある謎の家への同行を懇願されます。舞台は、《幼い頃の記憶がない》という彼女の過去が眠る謎の家。そこで「私」と彼女のたった2人きりの登場人物が、謎を探り真実へと辿り着きます。どこかホラーゲームのような雰囲気が始終流れていて、妙に不気味です。家に残された日記や物から、どんどん過去が明らかになっていく臨場感もたまりません。至るところにちりばめられた伏線たちも、サクサク回収されていきます。しかし、「救いはあるのか?」と聞かれてしまうと、少々返答に困ってしまう内容です。始終暗く、真実に辿り着くまでにどこか異常な怖さが常に付きまといます。作者が「隠れた自信作」と言われるように、あまり他にはない部類のミステリです。「家」が持つ記憶の物語をぜひ見届けてください。
片想い
タイトルで、切ない恋愛小説だと誤解されないようお気を付けください。テーマの一つはジェンダー問題。主人公の西脇哲朗は、学生時代のアメフト部のマネージャー・日浦美月と10年ぶりに再会します。「彼女」だったその人は、今は男性になっていました。しかも、人を殺して逃亡中。西脇はかつてのアメフト部の仲間たちを巻き込んで、これからの道を模索します。現代でこそ認められつつある《多様性》という単語。この『片想い』というタイトルにも、実は多様な意味が込められています。表紙もしっかり伏線です。アメフト部だった頃の試合やポジションも伏線としてストーリーに絡んでいるため、アメフトに詳しい方だと、ラストの展開に一層胸を打たれるのではないでしょうか。2004年に発表されたとは思えない、ジェンダーについても考えることができる一冊です。さまざまな意見があるかと思いますが、ラストの美月に、あの生き方を用意できた東野圭吾先生に最大限の称賛を。
分身
タイトルが初めに決まり、そこからストーリーが練られたという作品でありながら、ここまでのものが仕上がるという時点で、作者の力量に改めて脱帽です。北海道に住む氏家鞠子は、テレビで見かけたボーカルの女性に似ていると言われます。東京でアマチュアバンドの歌手をやっている小林双葉は、プロになることを母親から禁止されていました。しかし双葉がテレビに出演してしまったことで、鞠子と双葉の生活が一変。2人の章が交互に展開されながら、出生の秘密に迫っていきます。謎が謎を呼んで、ページをめくる手が止まらなくなります。北海道と東京という物理的な距離のある2人が、それぞれのやり方で真実に迫っていく緊張感も素晴らしい。ラストのその先が、少しでも希望に満ちたものであることを祈るばかりです。
天空の蜂
別の意味で考えさせられて危機感が心に芽吹く、社会派クライムサスペンス小説。爆薬が搭載された軍用ヘリコプター「ビッグB」。このヘリの制御が、「天空の蜂」を名乗るテロリストに奪われてしまいます。ヘリは福井県にある高速増殖炉上空でホバリング、犯人は燃料が切れる8時間以内に原発の発電タービンを破壊しろ、と要求してきます。更に間の悪いことに、ヘリには見学に来ていた子どもが取り残されていました。日本国民全員が人質にとられてしまったこの事件を、どう解決するのか。果たして政府は、どんな判断を下すのか。最初から緊迫した空気が漂う、手に汗握る怒涛の展開が息つく暇を与えません。専門的な部分に多く触れているため、原子力発電所についてとても見識が広がります。しかしこちらが書かれたのは、3.11よりも前。それなのにこの問題提起と考えさせられる展開はお見事としか言えません。ラストの犯人のセリフの意味がわかると、何が正しいことなのかわからなくなってしまうかもしれません。
祈りの幕が下りる時
吉川英治文学賞受賞、加賀恭一郎シリーズ作品最大の謎が明かされる一冊です。一見関連のなさそうな殺人事件の数々が、実は加賀の母親の死にも繋がっていました。東日本大震災後の世情が反映されており、原発関連のことも描かれています。砂粒のような手がかりから次々と真実に辿り着く、容赦ない加賀の鋭さは今回もお見事。シリーズはこちらで完結ですが、加賀の従弟である松宮が主人公の『希望の糸』が刊行されています。もちろん加賀も登場するため、《加賀ロス》に浸る前に、ぜひその後の加賀を見届けて下さい。
どちらかが彼女を殺した
こちらも加賀恭一郎シリーズ第3弾。犯人は最後まで明言されず、読者が推理して犯人を当てるタイプの推理小説です。妹を殺した犯人は、元彼か親友か。このスタイルから、刊行当初は編集部に犯人は誰なのかという問い合わせが殺到したことで、文庫化の際には編集され、巻末に解説の袋とじがつきました。オリジナルの単行本は、文庫化の編集でカットされてしまった重要な証拠がはっきりと記載されています。推理小説好きの方は、お好きな方でぜひ挑戦してみてください。殺された妹の個人的な復讐を果たすため犯人を猛追する兄・和泉と、加賀によるデッドヒートも必見です。何度も何度も予想を覆され、どれが真実なのかわからなくなる混乱をお楽しみください。
白鳥とコウモリ
タイトルもしっかり伏線。作家生活35周年の記念作品です。善良な弁護士が殺害され、犯人も自供。すべてが解決に向かうと思われました。しかし被害者を良く知る娘と、加害者を良く知る息子にとっては、不審な点しかありません。正反対の立場にある2人が、協力して真実を追いかけます。キャッチコピーは【東野版『罪と罰』】。2つの事件が複雑に絡み合い、些細な嘘により生じた歪がさまざまな人間を苦しめてしまいます。そのいくつもの葛藤が錯綜する様をここまでテンポ良く読ませる展開と構成に、久しぶりに量産型ではないものを読んだ満足感に浸ることができます。500ページ超もあっという間。次々と起こるどんでん返しに驚きつつ、真実に辿り着くことができますよ。最後には希望が残されているため、読後感も悪すぎるということはありません。「東野圭吾から離れていた」という方が再び手に取るのに、十分な傑作です。
レイクサイド
中学受験の勉強合宿で起きた殺人事件。その真実は、子どもたちを守りたいという親たちの狂気により、歪められていきます。舞台は静かな湖畔の別荘。殺されたのは、主人公の愛人。この時点で、歪んだ大人たちのドロドロとしたものが根底にあることがわかってしまいますね。内容は始終重苦しいものですが、実は最後まで犯人が誰か明言されません。最後まで読めばもちろん察することができますが、同時に事件の痛ましさにも気がついてしまいます。仄暗い湖の底に沈む重しから伸びる鎖に、一生囚われる後味の悪さを堪能しましょう。ミステリーものの犯人当てが得意な方は、ぜひ挑戦してみてください。
眠りの森
ひたすら切ない。刑事・加賀恭一郎シリーズの名作です。名門バレエ団で、正当防衛による殺人事件が発生。しかしどこか辻褄の合わない部分があり、その絡み合った複雑な謎を加賀が紐解くことになります。作者が全く興味の無かったクラシックバレエを一年間かけて勉強し完成させた作品とのことで、バレエ団の世界観やダンサーたちの凄まじいまでのプロ意識など描写がとてもリアル。バレエ経験者にはどこか共感できる内容なのではないでしょうか。捜査により邂逅することとなった可憐なダンサーとの切ない恋の行方も、ラストへ向かって綺麗なグラン・ジュテを見せてくれます。比較的古い作品ではありますが、古さを感じさせない普遍性がある名作です。
ラプラスの魔女
「学校図書館」の資料によると、実は中高生に多く読まれている作品です。こちらは「これまでの私の小説をぶっ壊してみたかった」と作者が公言する通り、型破りな空想科学ミステリ。温泉由来の硫化水素ガス中毒による死亡事件が起きたことで、地球化学の教授・青江修介が調査に携わることになります。調査を進めるうちに青江は不思議な少女・円華と出会うのですが、実は彼女は自然現象の予測と操作の特殊能力を持っていて…というストーリーです。どこかファンタジーやSF要素のある設定が、謎を更に複雑にしています。大きなどんでん返しや革新的なトリックはありませんが、一見バラバラな事象がすべて一つの壮大なストーリーを形成していく構成は圧巻の一言。青江を主人公とした、豪華キャストによる映画版もおすすめです。
その他おすすめ作品
・『サンタのおばさん』
出版日がクリスマス近くということで、東野圭吾サンタからのプレゼントとなりました。ジェンダー問題を扱った作品『片想い』内で登場した劇団が演じた舞台を、本にしたものです。サンタクロースの集会で、「女性のサンタを認めるかどうか」で大論争が繰り広げられます。
・『夢幻花』
第26回柴田錬三郎賞受賞作、東野氏が「こんなに時間をかけ、考えた作品は他にない」とまで称した傑作です。不思議な黄色いアサガオを巡る事件が繰り広げられます。圧巻の構成力と緻密な伏線回収で、ラストもポジティブですっきりとしていますよ。
どれを読む?タイプ別おすすめ作品
ここからはタイプ別のおすすめ紹介です。状況や気分に合わせて、読む作品を選ぶ際の参考にしてみてください。紹介記事のある作品は、タイトルをクリックすると該当箇所に移動することができます。
初めて読むなら
ライトに楽しみたいなら
▶おれは非情勤
異色ミステリが読みたいなら
▶予知夢
学園ものが読みたいなら
▶魔球
読後感が良いものが読みたいなら
▶浪花少年探偵団
号泣したいなら
重厚な社会派を読みたいなら
▶麒麟の翼
映画化した原作を読みたいなら
▶ゲームの名は誘拐(映画版タイトル:『g@me.』)
▶夜明けの街で
▶麒麟の翼(映画版タイトル:『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』)
▶プラチナデータ
▶真夏の方程式
▶疾風ロンド
▶マスカレード・ナイト
ドラマ化した原作を読みたいなら
▶ウインクで乾杯(ドラマ版タイトル:『香子の夢』1989)
▶犯人のいない殺人の夜(ドラマ版タイトル:『エンドレス・ナイト』1990)
▶天使の耳(ドラマ版タイトル:『交通警察の夜』1992年)
▶マニュアル警察(1999年)
▶浪花少年探偵団(2000年、2012年)
▶嘘をもうひとつだけ(ドラマ版タイトル:『冷たい灼熱』2001年)
▶悪意(2001年)
▶嘘をもうひとつだけ(ドラマ版タイトル:『狂った計算』2002年)
▶超・殺人事件(ドラマ版タイトル:『世にも奇妙な物語 超税金対策殺人事件』2002年)
▶探偵倶楽部(ドラマ版タイトル:『依頼人の娘』2003年)
▶ガリレオの苦悩(ドラマ版タイトル:『ガリレオφ』2008年)
▶名探偵の掟(2009年)
▶毒笑小説(ドラマ版タイトル:『世にも奇妙な物語 殺意取扱説明書』2010年)
▶探偵倶楽部(2010年)
▶11文字の殺人(2011年)
▶ブルータスの心臓(2011年)
▶回廊亭殺人事件(2011年)
▶使命と魂のリミット(2011年)
▶犯人のいない殺人の夜(2012年)
▶怪しい人びと
▶あの頃の誰か
▶ガリレオ(ドラマ版タイトル:『ガリレオ 第2シーズン』2013年)
▶カッコウの卵は誰のもの(2016年)
▶ダイイング・アイ(2019年)
▶危険なビーナス(2020年)
電子で読みたいなら
▶プラチナデータ
▶疾風ロンド
▶ダイイング・アイ
※東野先生は現在電子書籍化に消極的です。しかしコロナ禍で外出自粛している在宅者向けに、上記7作品が初めて電子書籍化されました。最初で最後かもしれない電子化です。電子派の方は読むしかありませんね!
シリーズで読みたいなら
ガリレオシリーズ
天才物理学者・湯川学が、専門的な科学知識を使って謎を解いていくシリーズ。一見魔法のような事象が科学ですべて解き明かされる様子は鮮やか。
②予知夢
④ガリレオの苦悩
⑤聖女の救済
⑥真夏の方程式
⑦虚像の道化師
⑧禁断の魔術
⑨沈黙のパレード
⑩透明な螺旋
加賀恭一郎シリーズ
刑事である主人公の加賀が、さまざまな謎を解いていくストーリー。社会派の考えさせられるストーリーが多いのが特徴。(池井戸潤作品『半沢直樹』とイベントでコラボしたことも!)
④悪意
⑤私が彼を殺した
⑥嘘をもうひとつだけ
⑨麒麟の翼
(サイドストーリー:希望の糸)
浪花少年探偵団シリーズ
大阪の小学校教員・竹内しのぶが、生徒たちと共に事件を解決していく、比較的読後感が良いシリーズです。大阪の下町の空気をめいっぱい味わうことができます。
①浪花少年探偵団
②浪花少年探偵団2
【改題】しのぶセンセにサヨナラ―浪花少年探偵団・独立篇
○笑小説シリーズ
ブラックジョークをテンポ良く読めて楽しめるため、持ち歩いて隙間時間に読みたい本。東野圭吾ワールドをサラッと味わうにもうってつけです。
①怪笑小説
②毒笑小説
③黒笑小説
④歪笑小説
スキー場シリーズ
私財でスノーボード大会を作ってしまうほど、スノーボード好きの作者によるスキー場シリーズです。
①白銀ジャック
②疾風ロンド
③恋のゴンドラ
④雪煙チェイス
エッセイが読みたいなら
▶あの頃僕らはアホでした
▶ちゃれんじ?
▶さいえんす?
▶夢はトリノをかけめぐる
▶多分最後のご挨拶
まとめ
本のあらすじや、映画・ドラマのタイトルを目にして、実は読んだり観たことがあった作品名も、あったのではないでしょうか。ご家族の本棚に一冊は入っている可能性が高い作家、東野圭吾さん。今後も刊行が期待される数々の作品の中から、あなたのお気に入りの一冊が見つかりますように!
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ライティング担当 : miz札幌在住30代2児の母。レトロゲームとクラシック音楽が大好きで時々自分でも弾く。ムーミンのアニメを観ることと、子どもたちの寝かしつけ後にやるサバイバルアクションホラーゲームが日々の癒し。博物館や郷土資料館の類が好きだが、シビアな開館時間の前によく惨敗している。インドア派だったのが活発すぎる子どもたちによってアウトドア派にさせられた。司馬遼太郎、M・ルブラン、川原泉、藤田和日郎作品が好き。 |