- 2023/01/31
- 2021/08/30
【2023年最新】絶対に読んでおきたい!面白いSF小説33選
SF小説と一口に言っても、近未来、宇宙、時間SFなどその幅は広く、ジャンルによって驚くほど内容が異なります。そこで、古本店『もったいない本舗』の読書好きスタッフがオススメする、海外の古典・名作SFから今話題の日本SFまで33作品をランキング形式でご紹介します!
SF小説の魅力とは?
皆さん、SF小説はお好きですか?
SFとは「サイエンス・フィクション」の略で、科学が進んだ未来を舞台にしたフィクション小説のことを指します。「SF小説」と一口に言ってもそのジャンルはさまざまで、例えば近未来の管理社会を描いたディストピア小説、過去や未来にタイムトラベルする時間SF、地球が荒廃した後を描いた作品もまたSF小説のひとつです。
このようにSF小説は非常に幅広く、細分化されたジャンルも多岐にわたります。とても奥が深い反面、中には単なる夢オチのような駄作もあるため玉石混交と言えるでしょう。「じゃあ何を読めば良いのかわからない!」という方のために、古本店『もったいない本舗』の読書好きスタッフsakuraが、絶対におすすめの<面白いSF小説>を33作品厳選してご紹介します!国内海外作品あわせたラインナップとしました。SF好きな人も、苦手意識のある人も、ぜひ今後の読書計画に加えていただければと思います。
【古典的SF】これだけは絶対に読まなきゃダメ!5作品
まず最初におすすめしたいのが、古今東西あらゆるSF好きさんに読まれてきた古典SFの人気作品です。「これを読まずしてSFを語るべからず!」というぐらい有名な作品ばかりなので、タイトルだけは知っているという人も多いのではないでしょうか。古典SFはとっつきづらい?いえいえ、一度読めばのめり込むほど面白いから現代まで読み継がれているんです。そんな古典SF小説の中でも、sakuraおすすめの5作品をご紹介します!
1位 | 一九八四年(ジョージ・オーウェル) |
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これを読まずして古典SFは語れない!初めて読んだときに、とてつもない衝撃を受けた本です。"ビッグ・ブラザー"率いる党が支配している国。主人公ウィンストンは、真理省で勤務しているのですが、彼の仕事はなんと「歴史を改ざんすること」なのです。恐ろしいのは、日記さえ書くことも許されず、公式の記録はすぐに改ざんされてしまうこと。信じられるのは自らの記憶のみなのですが…それも確かな記憶なのか?と徐々に疑心暗鬼になっていきます。現在「予言の書」として世界中で話題となっている『一九八四年』は、ディストピア小説の金字塔と言えるのではないでしょうか。
2位 | 夏への扉(ロバート・A. ハインライン) |
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日本のSFファンによるオールタイムベストでも、常に上位をキープしている『夏への扉』。恋人に裏切られ、発明さえもだまし取られてしまった主人公は、失意の中「冷凍睡眠」により30年後に蘇るのですが…。未来、過去、そしてまた未来と目まぐるしく変化する時間軸に読者は翻弄されますが、ラストは非常に爽やか。ひととおりのSFを読んできた読者には少し物足りなく感じるかもしれませんが、タイムトラベルというSFとしては普遍的なテーマを扱っているため、1度は読んでおいて欲しい名作中の名作です。ちなみにジンジャーエール好きの猫ピートが可愛く、猫SFとしても人気の作品です!
3位 | アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(フィリップ・K・ディック) |
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かの有名なリドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』の原作です。名作と呼ばれる作品は映像化されると駄作に転じることも多いのですが、本作は逆に映画のほうが有名になった例ですね。映画は、あのサイバーパンク的な猥雑な空気感が魅力なのですが、原作はちょっと雰囲気が違うので別作品として楽しむのが正解かもしれません。戦争後に放射能灰によって汚染された地球を舞台に、賞金稼ぎの主人公が火星から逃げてきたアンドロイドたちを追うのですが…。人間とアンドロイドとの境目とは何なのか?アンドロイドに感情は宿らないのか?突き抜けた設定が見事なので、未読の方はぜひ読んでいただきたいです。
4位 | 星を継ぐもの(ジェイムズ・P・ホーガン) |
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SFとミステリーを両方楽しみたい人におすすめなのが『星を継ぐもの』です。sakuraは大好きな作家・小野不由美さんの推薦文に惹かれて手に取ったのですが、これが面白いのなんの!月面調査隊が見つけたのは、宇宙服を身にまとった死体。調べていくうちに、その死体は人類誕生以前の5万年以上も前に死んでいたことがわかったのです。この死体は一体何者なのか?異星人なのか、それとも超古代文明を築いたかつての地球人なのか?謎が謎を呼ぶ展開で、終盤は怒涛のごとく真相に迫っていくストーリーが圧巻でした。ハードSFながら非常に面白い一冊です。
5位 | 地底旅行(ジュール・ヴェルヌ) |
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知的好奇心を刺激されるSF冒険譚といえば、『地底旅行』を外すことはできません!リーデンブロック教授は、ある古書の中からルーン文字で書かれた暗号文を発見します。甥のアクセルとともに解析したところ、その羊皮紙にはアイスランドの火山の噴火口から入ることができる、地球の中心への入口が記されていたのです。静かに広がる地底湖や、太古の生物。地底に広がる光景は夢とロマンにあふれ、本当にこんな世界が存在するんだろうかと大人になった今でもわくわくしてしまいます。ちなみに本作は倉薗紀彦さんによってコミカライズされていますが、こちらも素晴らしいのであわせてどうぞ!
【世界観が良いSF】どっぷりとこの世界にはまってしまう6作品
次は、どっぷりと物語にのめりこんでしまうほど素晴らしい世界観のSFをご紹介します。物語はもちろんフィクションですから、すべて著者の頭の中で作り上げられたものです。いわば作り物の世界に読者を引き込むのは至難の業!それでも物語に没頭してしまうぐらい素晴らしい世界観の作品に出会えたときは、SF好きとしてこの上ない喜びですよね。高度な科学が進んだ未来、地球が荒廃した後の世界、また現在と地続きのように見える近未来など、とにかく世界観が魅力的な6作品をチェックしていきましょう。
1位 | 新世界より(貴志 祐介) |
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日本が世界に誇れるSF小説といえば、sakuraは間違いなくこの『新世界より』をおすすめします!1000年後の日本が舞台となっているのですが、私たちが想像するような未来ではなく一見すると自然豊かで牧歌的な光景が広がっています。でも読み進めていくうちにだんだんと不穏な空気に気付き始めるのです。何かから守るように注連縄で囲まれた町。"呪力"が当然のように存在する世界で、悪鬼と業魔の不気味な伝説と、次々と消える子どもたち。ノスタルジックな風景に相反するようにドロリとした異質さが溶け込む世界観が、とても魅力的です。この面白さを文章で伝えきれないのが残念!ハードカバーで2冊とページ数は多いですが、あまりの面白さにあっという間に読み終えてしまいます!
2位 | 華竜の宮(上田 早夕里) |
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上田早夕里さんの描く唯一無二の世界観は本当に素晴らしく、読者をどっぷりと物語に繋ぎとめてくれます。第32回日本SF大賞を受賞した『華竜の宮』は、陸地の大半が水没してしまった未来が舞台の海洋SFです。今まで通り陸で生活する陸上民と、<魚舟>に乗って海上で暮らすようになる海上民。短編『魚舟・獣舟』の世界がダイナミックに描かれていて、SF好きとしては非常に心惹かれるものがあります。はるか昔に滅びてしまった栄華は、今は残骸として形を留めているのみ。なんとなくこれを読んでFF10の世界観を思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか(笑)
3位 | WOOL(ヒュー・ハウイー) |
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アメリカのAmazon kindleで自費出版し、たちまち大ベストセラーとなったのが本作『WOOL』です。本作の魅力といえば、やはりディストピア的世界観です!地表は有毒のガスで覆われ、ありとあらゆる生き物が死に絶えた世界。残り少ない人間は地下144階建てのサイロで暮らしています。生身の身体で外に出たら最後、数分で死に到るのです。各地に点在するサイロの秘密や、世界が汚染されてしまった理由、そもそも上層部は何を隠しているのか?など、次から次へと新たな謎が浮き彫りになり寝食を忘れて読み耽りました!続く『SHIFT』『DUST』とあわせて<サイロ三部作>とされています。
4位 | 時砂の王(小川 一水) |
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タイムトラベルやパラレルワールドというと、SF小説としては使い古されたテーマに思えるかもしれません。…が、本作『時砂の王』の面白いところは、西暦248年、女王・卑弥呼が治める邪馬台国の時代まで遡ってしまうところです!人類が滅亡することを避けるために、何度も繰り返しタイムトラベルを行い歴史を改変していく人工知生体オーヴィル。自分の愛する相手が、歴史を塗り替えることによって存在しなくなってしまうという絶望感をどう表現すれば良いのでしょうか。卑弥呼のエピソードと、未来から来たオーヴィルのエピソードが交互に絡み合い、やがて散りばめられた伏線が収束していきます。SFが苦手な人でも面白く読める作品です。
5位 | ペルディード・ストリート・ステーション(チャイナ・ミエヴィル) |
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これ書いた人頭おかしい!(褒めてます)と、悪夢のような混沌とした世界観にとことんハマってしまいました。『ペルディード・ストリート・ステーション』、これはまるで読んだことのないタイプの小説です。蒸気機関と魔術が支配する世界で、人間や鳥人、昆虫人間、もはや人間と呼ぶのは難しい改造人間…など恐ろしくグロテスクで魅惑的な生き物が登場します。後半「スレイク・モス」という蛾が出てきてからはとにかく鳥肌が立ちっぱなし!面白いという意味でも、気持ち悪いという意味でも…。虫が苦手な人にはおそらく地獄のような小説ですが、カオスなスチームパンクの世界が好きな人なら絶対に読んで欲しい一冊です。
6位 | 全滅領域(ジェフ・ヴァンダミア) |
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本作は2018年にナタリー・ポートマン主演で映画化された『アナイアレイション -全滅領域-』の原作。sakuraは映画から入ったのですが、これがまたとても不気味。謎が謎を呼ぶ展開に、寝食を忘れて読んでしまった本です。突然世界に出現した不可思議な領域<エリアX>。そこでは生態系が異常な進化を続けていて、派遣された調査隊たちは次々と不審死を遂げていくのです。そして今回も監視機構サザーン・リーチは生物学者などから成る女性4人を<エリアX>へ送り込むのですが…。昔流行った海外ドラマ「LOST」を思い出しました。この薄気味悪い世界観とじわじわと精神を蝕まれていくような狂気は、お好きな人はかなりハマると思います。<サザーン・リーチ>三部作として、続く『監視機構』と『世界受容』もあわせてお楽しみください!
【初心者向けSF】SFに苦手意識がある人も読みやすい6作品
次は、SF初心者でも読みやすい作品を中心にセレクトした6作品をご紹介します。残念ながらSF=とっつきづらいイメージが定着してしまいました。例えば「〇億光年」と突然言われてもピンと来ないですよね。自分の理解が及ばないほど壮大すぎる内容が多いというのもその原因かもしれません。でもSF小説は名作の宝庫です。苦手意識を持つあまりSFを読まずに人生を終えるなんてもったいない!苦手な人にこそ読んで欲しい6作品はこちらです。
1位 | 旅のラゴス(筒井康隆) |
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SF初心者の人なら、ファンタジー色が強い作品から読んでみるのをおすすめします。初めて読んだ瞬間「これは一生の宝物にする」と決めたのが『旅のラゴス』です。表紙だけ見ると古代遊牧民の作品かと思うのですが、どこか未来色も感じる不思議な世界が舞台。集団で別の場所に転移することができる民族や、壁を通り抜けられる男など、人々はさまざまな能力を持っています。そんな中、愛馬スカシウマとともにただひたすら旅を続ける男ラゴスの物語。あまりに好きすぎてこの本の魅力をお伝えするのが難しいのですが、たくさんの人に読んでもらいたい。懐かしさと郷愁を感じさせる傑作SF小説です。
2位 | know(野崎まど) |
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ライトノベルのように読みやすい文体ながら、中身は本格的なSFです。本作『know』の面白いのは「情報格差」が世の中の身分を決めているという設定。脳に<電子葉>を埋め込むことが義務化された超情報化時代の日本で、主人公が失踪した恩師の暗号を解くところから物語は動き始めます。脳の中で瞬時に検索をすることができるというのは、なんと便利でなんと危ういことか!また、この世で最高の情報処理能力を持つ少女との出会い。非常に映像的な小説で、怒涛の勢いで読んでしまった作品です。エピローグのその先が読みたくて仕方がありません…!(笑)
3位 | All You Need Is Kill(桜坂洋) |
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トム・クルーズ主演で映画化された作品です。日本のラノベがハリウッド映画化なんて前代未聞ですよね!実践経験のない新米兵士の主人公キリヤは、突然激戦地に送り込まれるものの案の定死亡してしまいます。でも、気付けばまた戦闘の前日に戻ってしまっているのです。何度も何度も死亡し地獄を見るわけですが、過去の記憶を持ったまま同じ一日を繰り返すのでキリヤがどんどん強くなっていくのが面白いです。実は原作と映画ではかなり内容が変わっているのですが、タイムループものからの脱出という設定は、いつの時代もSF小説の鉄板ですね。
4位 | スズメバチの黄色(ブラッドレー・ボンド 他) |
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サイバーパンク系SFが好きな人なら、迷わずおすすめしたいのが『スズメバチの黄色』です!かの有名な怪作SF『ニンジャスレイヤー』のスピンオフ作品なのですが、こちら単品で読んでも大丈夫。ネオンがきらめく退廃的な電脳都市は、どこか「ブレードランナー」を彷彿とさせます。でも本作が他のSFとは一線を画しているのは、SF好きならば狂喜乱舞するような舞台に加え、青春×任侠バイオレンスをひとさじ加えているところです。特筆すべきは、何と言ってもヤクザの少年・千葉の思わずひれ伏してしまいそうな大物感!(笑)まるで映像を見ているかのような、スピード感のあるエンターテイメント作品に酔いしれましょう。
5位 | 盗まれた街(ジャック・フィニイ) |
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過去に何度も映画化されていることでも有名な『盗まれた街』。(ニコール・キッドマン主演の「インベージョン」はとりわけ傑出しています)侵略SFものとして有名な本作は、じわじわと人間と街が乗っ取られる恐怖を描いています。ある日突然街の人々が、自分の妻や友人のことを「偽物だ」と言い始めるのです。主人公の医師マイルズは最初こそ懐疑的でしたが、ある日友人の家で人間そっくりに変容する謎の生命体を目にすることに…。日常がじわじわと浸食されていくぬらりとした恐ろしさ。結末が気になってページを繰る手が止まりませんでした。
6位 | 静かな終末(眉村 卓) |
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SFが苦手な人でも手に取りやすい!本作『静かな終末』は可愛い表紙ながら、読み応えがある短編・ショートショートが収録されています。どれもふわっと優しい口当たりながら、読後にはなんとも言えぬ哀切とほろ苦さが残ります。こんな近未来が待っているのかと思うとゾクリとする作品ばかり。個人的に『怨霊地帯』は長編で読んでみたいなぁと思うほどの世界観!『テレビの人気者・クイズマン』のユーモアあふれる展開も面白いです。眉村さんは残念ながら2019年に亡くなってしまいましたが、偉大なSF界の巨匠が残した数多くの作品は令和の時代もずっと読み継がれていくはずです。ちなみに2022年には『仕事ください』という短編集も発売されていて、こちらも表紙が可愛いのでチェックしてみてくださいね!
【短編SF】毎晩寝しなに1編ずつ読むのも楽しい6作品
SF小説でネックになる要素といえば、どうしても「長すぎる」ということが挙げられますよね。ハードカバー上下巻のSF超大作なんて、SF好きとしてもなかなか気軽に手を出せるものではありません(笑)そこでおすすめなのが短編SFです!集中力が続かない人でも大丈夫。短いけれどあっという間にその世界観に浸ることができるおすすめのSF短編集を6作品ご紹介します。
1位 | たんぽぽ娘(ロバート・F・ヤング) |
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「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」sakuraは名言ノートに書き留めてあるくらいお気に入りのフレーズです。本作『たんぽぽ娘』は、ロバート・F・ヤングの傑作13作品が収められているのですが、ガチガチなSFというよりもロマンティックで優しいSFを読みたい人にぴったりの作品。ある丘で知り合った、たんぽぽのように可憐な女性に恋をする甘酸っぱい表題作をはじめ、死へと至る河で出会った男女の臨死体験を描く「河を下る旅」が個人的にとても好きです。ちなみに本作は、「ビブリア古書堂の事件手帖」のストーリー内でも取り上げられたことで一躍脚光を浴び復刊したという経緯があります。世の中に数多く存在する絶版本が、何がきっかけで復刊されるかはわからないものですね!
2位 | 魚舟・獣舟(上田早夕里) |
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本作に収められている短編はどれも凄まじいインパクトがあります。先ほどご紹介した『華竜の宮』のベースとなった表題作『魚舟・獣舟』は、短いながらも一度読んだら忘れられない世界観です。また、日本中で寄生茸に体を蝕まれていくという謎の奇病を描いた「くさびらの道」は、徐々に荒廃していく街と人々を惑わす死者たちの叫びが哀しみを誘う怪作。また長編小説『火星ダーク・バラード』の前日譚を描いた「小鳥の墓」は、徹底的に管理された都市を描いています。これを読んだら、絶対に『火星〜』に手が伸びるはず。全6編すべて面白いので心からおすすめします!
3位 | My Humanity(長谷敏司) |
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タイトルにもある「humanity」とは一般的に「人間性」を指す単語ですが、人工知能やナノテクノロジーが人類の脳をはるかに超えた世界において「人間とはどうあるべきなのか」を深く考えさせられる短編集。中でも最も衝撃的だったのが、擬似神経制御言語ITPにより小児性愛者の矯正を試みる「allo,toi,toi」という作品です。とてもグロテスクで、とりわけ鮮烈な印象を残しました…!また放射能を遮断するナノロボットと科学者の孤独な戦いを描いた「父たちの時間」も強烈な存在感を放っています。本作で描かれる未来は、確実に現実と地続きになっていることに気づき、ゾクリとさせられますね。
4位 | 10月はたそがれの国(レイ・ブラッドベリ) |
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不気味で、幻想的で、どこかノスタルジックな気持ちにさせられるブラッドベリは、毎年秋になると読みたくなります。ブラッドベリは2012年に亡くなるまでにたくさんの短編を残しましたが、その中でもおすすめなのが『10月はたそがれの国』。交通事故現場に集まる野次馬が、いつも同じ顔ぶれに気づいてゾクリとさせられる「群衆」や、荒野の中にぽつんと作られた麦畑の秘密を描いた「大鎌」、過去にある湖で失踪した少女の記憶を抱えたまま10年後に訪れる「みずうみ」など、どれも傑作揃い!何度も何度も再読したくなる珠玉の短編集です。
5位 | サイバラバード・デイズ(イアン・マクドナルド) |
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ちょっと毛色の違う短編集もご紹介します!『サイバラバード・デイズ』は、近未来インドを舞台にした作品。「なぜインド?」って思いませんか?本作の熱気にあふれた無秩序でカオスな世界観は、未だに貧富の差と前時代的な慣習が残る一方で、IT大国として急成長を遂げているインドだからこそ描ける作品なのだなぁと思います。女神の転生として生き神とされた少女のお話「小さき女神」や、AI外交官×人間ダンサーという異種間(!)の恋愛を描いた「ジンの花嫁」など、インドという国でなければ絶対に生まれなかった作品ばかり。後味は爽やかなものが多いのも特徴です。
6位 | 夜の声(W・H・ホジスン) |
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ちょっと古い作品ではあるのですが、ラヴクラフトが好きな人には全力でおすすめしたい…!(むしろラヴクラフトが多大な影響を受けたことでも有名な作家です)どれも海や水に関する短編集なのですが、未知なるものを描いた恐怖、得体のしれないおぞましさに怖いもの見たさで一気に読み切ってしまいました(笑)キノコに覆われた謎の島を描いた表題作『夜の声』や、嵐が過ぎ去った後に現れた廃船『カビの船』、船長と船員の冒険譚としても楽しめる『ウドの島』など8篇を収録した珠玉のSFホラー海洋短編集。表題作は日本映画「マタンゴ」の原案としても知られています。実は本作、長らく絶版になっていましたが、2021年に復刊してくれた東京創元社様に感謝しかありません!
【新時代SF】最新のSFを思う存分堪能するならこの5作品
世界は2020年代に突入し、昔のSF小説で描かれていた世界が徐々に現実になってきています。AI、ロボット、自動運転車…などなど、テクノロジーは目ざましい発展をとげており、まるでSF小説で使われたガジェットがそのまま再現されているように感じますよね!では、新時代のSFではどのような世界が描かれているのでしょうか?これがまた現実になる日が来るのか?新たな名作になりうる可能性を秘めた現代SF小説を5作品ご紹介します。
1位 | 三体(劉慈欣) |
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アジア人初のヒューゴー賞受賞作となった『三体』。ここ最近読んだSF小説の中で、一番面白かったです!!凄まじいパワーと熱量。寝る間も惜しんでほぼ一晩で読み終えてしまった作品です。第一部は中国の文化大革命のエピソードから始まり、時代が移り変わった第二部。まるで現実としか思えないVRゲーム「三体」や謎のゴーストカウントダウンというホラーテイストも絡めて、ジェットコースターのような勢いでまとめあげる力量は、まさに著者は天才というほかありません。百戦錬磨のSFファンの皆様もきっと満足できる作品ではないかと。Netflixにてドラマ化も決定しているという本作、続編の『三体Ⅱ 黒暗森林』『三体Ⅲ 死神永生』とあわせてお楽しみ下さい!なお、三体ファンになった方は、2021年に発売された『円 劉慈欣短篇集』もぜひ手に取ってみて下さいね。
2位 | なめらかな世界と、その敵(伴名練) |
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意外にもホラー小説『少女禁区』でデビューした伴名練さんですが、本作『なめらかな世界と、その敵』は、2019年のベストSF<国内編>1位に選ばれました。正直sakuraは本作を読むまで馴染みのない作家さんだったのですが、こちらの短編集を読んで一気にファンになってしまいました…!いくつもの並行世界を行き来する少女たちを描いた表題作をはじめ、伊藤計劃さんのオマージュである「美亜羽へ贈る拳銃」、また最後の最後でガツンとやられたのが、新幹線の内部の時間だけが低速化するという未曾有の災害に見舞われる時間SF「ひかりより速く、ゆるやかに」。最後の最後まで展開が読めず、「まだまだこんなに面白いSF作品があったのか!」と舌を巻きました。今イチオシの作品です。
3位 | 横浜駅SF(柞刈湯葉) |
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横浜駅が"自己増殖"をし始め、本州の99%が横浜駅化してしまったというトンデモ設定ですが、これがまた面白すぎる…!常にどこかしらで工事をしている横浜駅から着想を得たとのことですが、ここまで世界観を広げられるって作者の頭の中はどうなっているのかしらと思ってしまいます。脳にSuikaが埋め込まれた住人だけがエキナカで暮らせるのですが、非Suika住人である主人公ヒロトはある男から5日間だけ有効な「18きっぷ」を使って謎多きエキナカへと入ることに。このディストピア的世界観は好きな人にはたまらないのでは?コミック化もされているので、あわせて読んでみて下さい!
4位 | タイタン(野崎まど) |
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人工知能を描いたSF小説、本当に多くなりましたね!本作も例にもれず、人間の代わりにすべての仕事をこなしてくれるAI「タイタン」が当たり前になった近未来。だから、人々は「仕事」とはどういうものかを知りません。(なんて羨ましい!笑)そんな中、心理学を趣味とする主人公のもとに、【機能不全に陥ってしまったタイタンのカウンセリングをして欲しい】という依頼が来るのです。ともすれば陰鬱になりそうなテーマですが、「人間にとって労働とは何なのか」「生きることの意義とは何なのか」をAIを通して再発見させられたような、爽やかな読後感でした。それにしてもAIのうつ病とは考えたことがありませんでしたね…(笑)
5位 | 裏世界ピクニック(宮澤伊織) |
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「裏世界ピクニック」シリーズ、大人気ですね!コミック化、また2021年1月からはアニメ化もされ、着実にファンを増やしつつあります。それもそのはずで、表紙はラノベ風の可愛らしい女の子たちが描かれていますが、中身はなかなか本格的。SFに都市伝説やオカルト風味を加えた独特の世界観に、読者は否応なく引き込まれてしまいます。「どうせライトな冒険譚でしょ?」と思った人こそ読んで欲しい!裏世界にじわじわと浸食される現実、怪異がはびこる世界は現実と繋がっているからこそ恐ろしいのです。「少女終末旅行」などが好きな人にもおすすめです。
【玄人向けSF】万人受けはしないが好きな人はたまらない5作品
最後にご紹介するのは、きっと万人受けはしないけれど好きな人はとことん好き!なSF小説です。おそらくこちらで紹介するSFは、数ページ読んだだけで挫折する…という人もいるでしょう。でも、もしも読み始めて「これは面白い!」と思ったなら、おそらくあなたの一生涯の宝物になることと思います。ライトからハードまで、sakuraが自信をもっておすすめする玄人向けSF5作品をご紹介します!
1位 | 第六ポンプ(パオロ・バチガルピ) |
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退廃的で絶望的な近未来ディストピアSF小説を読みたいなら『第六ポンプ』をおすすめします。徹底的に管理された世界や、資源が枯渇してしまった世界、そして出産と育児が禁止されるようになった世界など、好きな人にはたまらない世界観でsakuraはこの本を読んで「絶対にこの作家さんを追いかけるぞ」と心に誓ったのでした(笑)化学物質の過剰摂取で痴呆化が進んだニューヨークを舞台にしたローカス賞受賞の表題作「第六ポンプ」や、砂を食べて養分を摂るようになった人々の前に現れた地球上の最後の一匹の犬を描いた「砂と灰の人々」など、暗黒の世界に存分に酔いしれました。
2位 | ハーモニー(伊藤計劃) |
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著者の伊藤計劃さんは、2007年に『虐殺器官』でデビューしてからわずか2年ほどで亡くなってしまいましたが、著作をマイベストに挙げる人も多いほど完成度が高い作品ばかりです。デビュー作も素晴らしいのですが、個人的に永久保存版にしたいほど大好きなのが『ハーモニー』です。病気や戦争などこの世のすべての"悪"が取り除かれた世界。一見するとユートピアに見える素晴らしい世界なのですが、ミァハ、トァン、キアンの3人の少女は自殺を試みようとするのです。この世界にどんな不満があったのか?という謎解き要素に加え、人間にとっての「幸福」の定義とは何なのか、と非常に考えさせられる傑作SF小説です。
3位 | 皆勤の徒(酉島伝法) |
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ぜーーったいに!万人受けしないこと確実です(笑)「面白い」というのとも違う、「気持ち悪い」というのとも違う、「おぞましい」というのが一番近い表現かもしれません。実は数年前に一度読んで挫折したんです。でも、今回本コンテンツを書くにあたってどうしても本作は外せないという半ば強迫観念に似た思いに駆られ、再読してみました。そしたら、不思議とするりと受け入れられるではありませんか。4編から成る本作ですが、覚悟のある人はやはり表題作「皆勤の徒」を読んでいただきたい。異形のモノが織りなす悪夢のような世界は、今夜の夢に出てくること必至。人間の想像力というのは果てがありませんね。
4位 | デス博士の島その他の物語(ジーン・ウルフ) |
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ジーン・ウルフは何を読んでも一度で理解するのは難しい(言い換えると難解)作品ばかりなのですが、何作か読んできてやっと気付いたことは「物語をすべて理解しよう」とするのではなく「映画のワンシーンのようなイメージを楽しむ」ほうが良いということです!比較的読みやすい本作『デス博士の島その他の物語』も例に漏れず、独特な世界観が広がります。人工衛星の中につつまれた海や、奇形の人間たちがあふれる近未来のアメリカ。本作を読み終えると、長い長い夢を見ていたかのようなふわふわした心地になります。一生涯で、なかなかこんな作品に出会えることはありません。
5位 | 異星人の郷(マイクル・フリン) |
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ファースト・コンタクト物が好きな人にぜひ読んで欲しいのが『異星人の郷』です。…と言っても今回は玄人向けというジャンルなので、普通の作品ではありません。何しろ、バッタのような奇怪な見た目の異星人がやってきたのは"中世ヨーロッパ"なのです!悪魔の存在を信じている信心深い当時の人々なら、こんなおかしな生命体がやってきたら「悪魔だ!」と拒絶しそうなものですが、案外友好的な関係を築いているのが面白いです。中世と現代のエピソードが交互に描かれつつ進行していく本作は、読了後に何とも言えない物悲しさと爽やかな風を運んでくれます。
まとめ
ここまで近未来もの、宇宙人もの、ディストピアものなどsakuraのSFベスト本をご紹介してきましたが、読んでみたい本はありましたか?
もしも今までSF小説に「難しそう」「読みづらそう」という苦手意識があった人は、SFミステリーやSFファンタジーなど、別ジャンルをひとさじ加えた作品から挑戦してみると良いかもしれません。また、好きなSF作家から芋づる式に読んでみたり、「SFマガジン」や「SFが読みたい!」などのSF雑誌から興味のある作品を探してみるのも良いでしょう。
SF小説を読むのに必要なのは、"ほんの少しの思い切り"と"大きな想像力"です。頭をからっぽにして壮大な世界に思う存分浸ってみて下さい。きっと、あなたと今後人生を共にする「自分だけのSF小説」に出会えるはずです!
古本店『もったいない本舗』では、たくさんのSF小説を取り揃えております。気になった商品があったら、ぜひまとめ買いしてみて下さいね。
ライティング担当 : sakura札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。 |