- 2021/12/17
- 2021/01/07
【スタッフおすすめ】辻村深月の面白い小説ランキング28選!
辻村深月さんの作品を読むと、心がえぐられるような気持ちになります。胸に抱えた痛み、過去のトラウマ。でも、最後にはすべてを包み込んでくれるような温かさに、思わず涙してしまうはず。そこで、古本店『もったいない本舗』のスタッフがおすすめする辻村作品をご紹介します。
辻村深月の人気ランキング!スタッフおすすめ28選
辻村深月さんは、山梨県出身の直木賞作家。ペンネームの「辻」は、尊敬するミステリー作家・綾辻行人さんから取ったそうです。初期の頃は、学園ミステリー系を中心に執筆されていましたが、結婚・出産を経て作品の傾向も様変わりしてきました。学生時代の甘酸っぱい気持ち、アラサー女性の葛藤、そして家族のあり方について。あらゆる世代の共感を引き出し、ファンを増やしながら毎年コンスタントに新作を発表しています。そこで、<デビュー歴=ファン歴>である古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraが、心からおすすめする辻村作品28作をランキング形式でご紹介します!
1位 | かがみの孤城 |
---|
2018年に本屋大賞を受賞した本作は、ファンの間でも「著者の最高傑作」と評価されることが多いと言います。いじめが原因で登校拒否になってしまった7人の子どもたち。ある日突然光る鏡に誘われて手を伸ばすと、そこは別の世界。子どもたちは大きなお城で交流を始めます。でも、ここは一体どこ?どうして現実の世界で会えないの?すべてが明らかになったときの感動は筆舌に尽くしがたいです。大人の皆さん、子どもの頃に辛かったことを覚えていますか?苦しくて仕方なかったことを記憶に留めていますか?誰もが通ってきたはずの子ども時代なのに、大人になったらどうして嫌なことを忘れてしまうのでしょうか。辻村さんはそんな感情を今でも覚えていて、苦しみ、哀しみに静かに寄り添ってくれます。とにかくたくさんの人に読んで欲しい、新たな名作小説の誕生です。
2位 | 冷たい校舎の時は止まる |
---|
メフィスト賞を受賞したデビュー作。学園ミステリーの面白さを教えてくれた本作はsakuraにとって一生手放せない本です。冷たい雪が降りしきる中、いつものように登校した8人の高校生。校舎に閉じ込められてしまった彼らは、2ヶ月前の学園祭で死んだ同級生のことを思い出します。何故か忘れてしまったクラスメイトの顔と名前。開かない扉と"5時53分"で止まった時計。そして時計が動き出したとき…!ホラー要素をひとさじ加えた本作は、登場人物一人ひとりの過去を掘り下げながら真実を明らかにしていきます。すべての謎が明かされるラストは、驚きとともに爽やかな気持ちになること請け合いです。
3位 | 東京會舘とわたし |
---|
ある程度年を重ねた大人の皆さんのためのオススメ作品が、『東京會舘とわたし』です。本作の主役は「東京會舘」。大正時代に丸の内に開場した東京會舘は、想像を絶するほど激動の時代を歩んできました。長い歴史の中では、さまざまなドラマがあったことでしょう。戦時下で結婚式を挙げる女性、GHQ占領下で働くバーテンダー、小説家志望の男性などさまざまなエピソードを絡めながら物語は進んでいきます。年代ごとにそれぞれのエピソードが少しずつ重なっていて、まるで自分がその時代を見てきたかのように感慨深い気持ちになり、ボロボロと泣けます。戦火の中でも、震災の中でも、誰かの"特別な一日"を提供し続けてきた東京會舘。本を閉じた後は、温かな感動に包まれます!
4位 | 子どもたちは夜と遊ぶ |
---|
『子どもたちは夜と遊ぶ』は、辻村作品の中では異色の作品であり、時折挿入される残酷描写が「肌に合わない」と感じる読者もいるかもしれません。でも、他の作品にはない叫びたくなるような切なさや心の痛みが前面に押し出されていて、個人的にはものすごく記憶に刻まれた作品です。高校3年生の行方不明事件から始まった殺人ゲーム。童謡になぞらえ一人また一人と殺人を重ねていく描写があまりにも残酷です。天才「i」に会うために、ずぶずぶと闇に染まっていく浅葱が哀しすぎて、何度呼び止めたくなったことか。遊び感覚で繰り広げられる冷酷なゲームと裏切り。読了後にしばらく放心状態になってしまいました。なかなか再読する勇気はありませんが、大好きな本です。
5位 | スロウハイツの神様 |
---|
手塚治虫さん、藤子不二雄さんを始めとする有名漫画家たちが暮らしたアパート「トキワ荘」は有名ですが、本作はまさに現代版「トキワ荘」。ひとつ屋根の下で、小説家、漫画家、映画監督など若きクリエイターの卵たちが共同生活を送る物語です。正直クリエイターということもあって、登場人物はかなりクセ強め(笑)でもそれぞれの個性がまた愛おしく感じられます。上巻は遅々としてストーリーが進まないのですが、そこはグッと我慢して下巻まで読み進めて欲しい!若干冗長にも感じられた部分に、実はさまざまな伏線が張り巡らされていたことに気付きますよ。最終章は滂沱の涙です…!
6位 | ツナグ |
---|
吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。「ツナグ」って、なんとシンプルで深い意味が込められた言葉なんでしょう。死者と生者をつなぐ。人の想いをつなぐ。死者に一度だけでも会えたら、というのは大切な存在を亡くした人なら誰もが一度は望むことではないでしょうか。一生に一度だけ死者との再会を叶えてくれる「使者」。年老いた母を亡くした息子や、失踪した婚約者を探し続ける会社員など、どれも涙なしでは読めないエピソードばかりです。タイトルに導かれるように手に取った本でしたが、「もっと大事な人に寄り添おう、もっと丁寧に生きていこう」と考えを新たにしました。続編『ツナグ 想い人の心得』も出ていますので、あわせてどうぞ!
7位 | 闇祓 |
---|
辻村さん初の本格ホラー・ミステリーということで、ほかの辻村作品とはかなり毛色が違います。「闇祓」と書いて、ヤミハラと読みます。今の時代、いくらでも「〇〇ハラ」とさまざまなハラスメントが言語化されていますよね。でも、中には言語化できない悪意や、押しつけの善意が存在します。または他人との距離感があまりにもおかしいとき、"不快"と思いつつもそれをハラスメントと名づけられない、そんな経験はないでしょうか?辻村さんはそれを闇ハラと位置づけ、ねっとりとした人間関係を描き出します。一見すると、主人公が変わる全く別々の短編なのですが、最後にはそれがすべて繋がっているのがわかり鳥肌が立ちました…!ただひたすら気持ち悪く、恐ろしい連作短編集です。
8位 | 島はぼくらと |
---|
「海獣の子供」などで知られる五十嵐大介さんが手がけた表紙絵がとても素敵ですよね!『島はぼくらと』という柔らかなタイトルから受ける印象と違って、小さな島の過疎化、コミュニティの狭さ、そして医療過疎地問題などさまざまな角度からばっさりと切り込んだ作品です。島民である4人の子どもたち、世間の目から逃れるように島にやってきたシングルマザーの女性、またある葛藤を抱えて島にやってきた若い男性など、色々な人物の視点から描かれるストーリーはとにかくリアル。朱里と衣花のような、きれいごとだけでなく何でも言い合える関係というのは生涯の宝物ですね。"故郷"を持つすべての人たちに読んで欲しい一冊です。
9位 | 名前探しの放課後 |
---|
「始業式の日に同級生が自殺する」という記憶を持ったまま過去にタイムスリップした主人公。でも自殺者が誰なのか思い出せないのです。仲間を集めつつ、自殺を未然に防ごうと奔走するストーリーです。あらすじだけ読むと『冷たい校舎の時は止まる』と似た雰囲気に思えますが、内容は全くの別物。辻村作品に出てくる登場人物は結構優等生タイプが多いように思えるんですが、本作の主人公"いつか"はどちらかというと茶髪のジャニーズ系。読み進めるうちに、彼が見た目通りの人物ではないことに読者も気付きます。最終章ですべての伏線が回収されたときの驚きと言ったら!これだから辻村作品はやめられません。
10位 | 噛みあわない会話と、ある過去について |
---|
辻村さんは人間の心の機微を描き出すのが、本当にお上手です。小さな優しさや言葉にできない心の痛みはもちろんですが、今回テーマになっているのは「無自覚の悪意」です。例えば、あるクラスでひとりの子が何らかの理由で仲間はずれになっていたとき。当事者はいじめられたと思っていても、一方では全くそんなつもりはないかもしれません。思い出は美化されていくもの。でも数年経った後、そのことが明るみになったらどうでしょうか。じわじわとあぶり出される過去と、どこかで改ざんされた記憶。きっと読者の皆さんも、自らの過去を重ね合わせ、思わず冷や汗が出ること請け合いです…。
11位 | 傲慢と善良 |
---|
婚活を経験したことのある人には心に響く、もとい心にグサグサと刺さる長編小説です。婚活アプリを通じて出会った架と真実。2人は婚約までこぎつけたものの、ある日突然真実が失踪してしまうのです。それぞれの過去のエピソードなどを絡めつつ真相を明らかにしていくストーリー。辻村さんは、この年代特有の焦りや自意識、「なんとなくピンとこない」という独特な感情を見事に言語化してくれました。親に大切に育てられた30代の真実は、何ひとつとして自分の意思で物事を決めることができません。自立って何だろう、結婚って何だろう、価値観って何だろう。「善良」という言葉は、相手から見れば「傲慢」にもなりうるのですね。心が痛いのに、ページを繰るのがもどかしいほど没頭してしまった作品です。
12位 | 凍りのくじら |
---|
辻村さんの初期の頃の作品ですが、デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』などに比べるとややインパクトは薄めです。でも、おそらく本作の主人公・理帆子と自分を重ね合わせた女性はとても多いのではないでしょうか。sakuraもこの本を読んだときはまだ20代前半でしたが、"どこにいても自分の居場所がない"というどこか俯瞰的な視点を持つ主人公にひどく感情移入した記憶があります。暗い水の底でもがいていた女性が、あるひとすじの光を見つける物語です。ちなみに特筆すべき点ですが、本作の章タイトルはすべて「ドラえもん」に登場するひみつ道具の名前なんですよ!"どこでもドア"や"もしもボックス"といった具合に。著者の「ドラえもん」愛が詰まった作品です。
13位 | ぼくのメジャースプーン |
---|
人を肉体的に傷つけることがあれば、もちろん罪に問われますよね。でも、人を精神的に傷つけたとしたら?本作はとても理不尽なストーリーで、正直読み進めるのが辛くなってしまうほどです。可愛がってきたうさぎが惨殺され、あまりのショックに心を閉ざしてしまったふみちゃん。ふみちゃんの笑顔を取り戻すため、特別な能力を持つ"ぼく"はうさぎ殺しの犯人に復讐することを胸に誓います。善人と悪人の命の重さはどのように測ることができるのでしょうか?物語は小学生の視点で語られていきますが、大人の私たちでも難しい「人の心の重さ」と「さじ加減」について考えさせられる作品です。
14位 | ふちなしのかがみ |
---|
学校の階段や七不思議が好きな人なら、絶対に楽しめるのが『ふちなしのかがみ』です。子どものころ、<コックリさん>を試した人はいますか?夜中に鏡を覗き込んだことがある人はいるでしょうか?本作は、どこか切なくノスタルジーな気持ちに浸ることができるホラー短編集です。個人的にとても好きだったのが表題作「ふちなしのかがみ」。鏡の前でロウソクを灯し、午前0時にその鏡を覗き込むと未来の姿が見える…。このお話を読むと、鏡が怖くなってしまうかもしれません。「おとうさん、したいがあるよ」は、読解力が試されるかも…?長編作品が苦手な人にもおすすめです。
15位 | 本日は大安なり |
---|
「結婚式」は人生における女性の一大イベント!この一日のためだけに何百万円もかけるカップルもいれば、最後の最後までプランナーを困らせるわがままカップルもいます。結婚式には決して正解というものはなく十人十色。本作は、4組のカップルの結婚式のドタバタを描いた究極のエンターテイメントです。これを読むと、ウェディングプランナーという仕事はつくづく大変だなぁと思いましたよ。なにしろ一筋縄ではいかないカップルばかり(笑)イライラして、笑って、泣いて、最後にはほっこりと幸せな気持ちになれる一冊です。これを読んで結婚式を挙げたくなるか、否か…それはあなた次第。
16位 | ロードムービー |
---|
『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフですが、本作単品で独立したストーリーになっているのでここから読んでも大丈夫!(ただ『冷たい校舎~』を先に読んでいると、パズルのピースがかちりとはまるような爽快感があるので、ファンとしては嬉しいかも)中学生の頃って、今思えば色々な悩みがありました。大人になった今となっては、長い人生におけるただの通過点だったと思えるけれど、当時は学校が世界のすべてです。もう生きているのが辛いくらい、鬱屈した感情を抱えて過ごしてきた人も多いと思います。でもそんなときに手を差し伸べてくれる大人がいたら。暗い闇の中でもがく子どもたちを優しく光の下へ連れ出してくれるような、前向きになれる短編集です。
17位 | 琥珀の夏 |
---|
かつてカルト教団と批判された<ミライの学校>の敷地内から発見された白骨死体の謎をベースとし、主人公の弁護士・法子の視点から真相を明らかにしていくミステリーです。 あらすじだけ読むと「何だか辻村さんらしくない作風だな」感じていたものの、読み始めると物語の奥底に常ににたゆたっている不穏さ、人間が無意識のうちに押し付ける偽善など、言葉にできない気持ち悪さが浮き彫りになり、やはりいつもの辻村ワールドだと実感しました…!人々の心に封印されていた過去の記憶が、さまざまなアプローチから少しずつ紐解かれていく様は圧巻で、哀しさとともに一筋の光が見えた作品でした。
18位 | ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 |
---|
辻村作品の中でとりわけサスペンス色の強い作品です。アラサー女性は本作を読んでドキリとさせられるかも。結婚し都会でフリーライターとして働くみずほと、地元企業で契約社員として働く実家暮らしのOLチエミ。幼なじみの2人はどこが人生の分岐点だったのでしょうか。大人になると徐々に社会のヒエラルキーを実感するようになりますが、本作では特に顕著で、都会と田舎、微妙な友人関係と母娘のいびつな関係をじわじわとあぶり出します。チエミが母親を殺して失踪した謎を追うミステリー要素に加え、女性ならではの繊細でリアルな心理描写に舌を巻きました。タイトルの「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」の意味には驚きです!
19位 | 光待つ場所へ |
---|
辻村さんのさまざまな過去作品とリンクしている短編集です。先に『冷たい校舎の時は止まる』『スロウハイツの神様』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『名前探しの放課後』を読んでおくと、きっとリンクを見つける楽しみが増えると思います。やはり初期の頃の作品は、思い入れのあるキャラクターが多いので、その後あのキャラはどうなったのかな?というファンとしてはスピンオフは嬉しい限りですよね。人生の次の一歩を踏み出そうとする人たちの背中をそっと押してくれるような素敵な作品です。単品で読むとインパクトが薄いかもしれないので、"ファンのための短編集"という位置づけがベストでしょう。
20位 | 盲目的な恋と友情 |
---|
辻村作品には珍しく、本の厚みは薄いのですが内容はとんでもなく濃厚!恋をしたことのある女性ならば、100%共感できる部分があると断言します。それが例え独特の苦しみを伴う感情だったとしても、女性同士の優越感を伴う生々しい感情だったとしても。タカラジェンヌの母を持つ主人公・蘭花は、大学のオーケストラに指揮者として迎え入れられた男・茂実と燃えるような恋をします。女性ならではの心情の変化が手に取るようにわかり、のめり込むように読んでしまいました。そして後半、主人公の友人・留利絵の視点で描かれると…「なるほどそういうことか」と合点がいくことでしょう。後味は良くないですが、忘れられない物語です。
21位 | 朝が来る |
---|
今少なからず日本で起きている社会問題に、真っ向から挑んだ問題作です。長く辛い不妊治療の末に養子縁組を選んだある夫婦と、若くして望まない妊娠・出産をしてしまった少女の物語。本作は二部構成になっているのですが、あまりの重たさに読めば読むほど苦しくなってしまいます。正直、生みの親であるひかりは感情移入ができるタイプのキャラではなく、読者としてもいろいろと思うところもあるのですが、今問題になっている女性の貧困問題なども絡め決して目を背けてはいけない作品だと思います。本作は、ドラマ化・映画化もされていることからも世間の注目度が伺えますね。
22位 | 鍵のない夢を見る |
---|
第147回直木賞受賞作です。昔からの辻村ファンならば、もしかすると「違う作品で直木賞を受賞して欲しかった!」という意見もあるかもしれません。実はsakuraも当時はそう思っていました。他にもっともっと良い作品があるのに…と。でも、30代になってある程度歳を重ねてから改めて再読してみると、不思議と自分の境遇に重ね合わせたりだとか、登場人物の言動にうなずける部分もでてきて「あぁ、私もそんな年齢になったのか」としんみりしてしまいました(笑)本作には5人の女性が登場します。どこにでもありそうな日常で、小さな魔が差す瞬間を切り取った5つの物語は、きっと読者の心にぬぐい切れない影を落としていくことでしょう。
23位 | サクラ咲く |
---|
本来なら中学生のときに読みたかった!学生の頃に読んだ本って、その後の人生におけるベースを形作ると思いませんか?今本作を読むと、はるか昔に通り過ぎた青春時代の記憶を刺激されるくらいなのですが、きっと今まさにその時代を生きている子どもたちには多分に心に刺さるものがあるのではないでしょうか。本作に収録されている3つの作品はそれぞれ独立していますが、少しずつリンクする部分もあり辻村作品の醍醐味を味わえます。主人公たちが人とのかかわりを通して、前向きに成長していく姿に誰もがホロリとさせられるはず。中高生の皆さんにもおすすめの一冊です。
24位 | オーダーメイド殺人クラブ |
---|
思春期の頃、世の中すべてが敵に見えることってありませんでしたか?「誰も自分のことをわかってくれない」「早く大人になりたい」「自分だけは特別」。それなのに都合が悪くなると、途端に自分が無力な子どもであることを認識します。きっと誰もが通る道なんだろうと思いますが、そのいかんともしがたい感情を見事に描き切った作品が『オーダーメイド殺人クラブ』です。スクールカーストの上位に属する主人公アンは、すべてのことに嫌気が差し同級生の男子に「自分を殺して!」と理想の死に方をオーダーメイドするという話。タイトルの重いイメージに反して意外と爽やかな物語で、思春期真っ只中の人はもちろん、とうの昔に通り過ぎた人にも読んで欲しい作品です。
25位 | ハケンアニメ! |
---|
辻村さんの描く最高に爽快なお仕事小説!sakuraはこの『ハケンアニメ!』というタイトルを最初に見たとき、アニメ業界で働く派遣社員の話だと勘違いしていました…(痛恨の極み)でもこの「ハケン」とは「覇権」という意味だったんですね。つまり「どのアニメが覇権を取るのか?!」ということ。アニメ業界で働くプロデューサー・映画監督・原画家の3人の女性にスポットを当て、必死に働きながら仕事に恋にと成長していく姿が描かれています。アニメ業界ってすごい!他業種で働く人にも少なからず共通するところがあるのではないでしょうか。小気味良い展開で、「明日から仕事頑張ろう」と活力をもらえる作品です。全国のお仕事女子におすすめ!
26位 | きのうの影踏み |
---|
怪談やちょっと不思議な話が好きな人におすすめの短編小説が『きのうの影踏み』です。とはいえ、本作は明確なオチがあるものが少なく白黒はっきり付けたい読者にはちょっと物足りなく感じるかもしれませんね。でも、圧倒的な恐怖が苦手な人だったり、物語の結末を自分で想像したい人やリドル・ストーリー好きな読者は楽しめると思います。「世にも奇妙な物語」で映像化したら面白そうだな、と思いました(笑)日常で小さな違和感を感じたら…きっとそれが始まりです。個人的には「ナマハゲと私」あたりが好みでした。
27位 | 太陽の坐る場所 |
---|
本作は読み手を選ぶジャンルかもしれません。サスペンスという部類に入るのでしょうが、なまじ心理描写の巧い作家なだけに<悪意>を描かせたら正直鳥肌が立ってしまうほど怖いです(笑)高校卒業から10年経ったクラス会。話題になったのは女優として活躍するかつてのクラスメイト"キョウコ"のことです。一人ひとりの過去を紐解きながら、女同士の劣等感や悪意がじわじわと浮き彫りになっていく手法はお見事。閉塞された学校生活で、当時何が起こっていたのか?辻村さんは最後に仕掛けを用意していますが…これも賛否が分かれるところかもしれませんね。湊かなえさんが好きな人なら好みかと。
28位 | 水底フェスタ |
---|
こちらもかなり好き嫌いが分かれる作品でしょう。ドロドロに絡み合った恋愛関係に加え、田舎特有の閉鎖的な空気感が際立ち、読んでいるだけで気が滅入る人もいるかも。ロックフェスの誘致で発展した小さな湖畔の村が舞台です。都会からある復讐を胸に村に戻ってきた女優と、彼女に一目で惹かれる男子高校生の恋。これは果たして恋と言えるのかどうか…。あちこちで設定の粗さが目立つ部分もありますが、小さな村社会の因習や何かを隠蔽している住人たちなど独特な雰囲気が魅力で、横溝正史さんが好きな人なら楽しく読めると思います!
辻村深月はこの<順番>で読むのが正解!
辻村作品といえば、<リンク>している作品が多いのが特徴です。過去に読んだ本のキャラクターが違う本にも登場したら、ファンとしては嬉しくなりますよね!でも気を付けなければいけないのが「読む順番」。うっかりこの順番を間違えてしまうと、あっさりネタバレになってしまったり、面白さが半減してしまう恐れも…。
この「読む順番」については、さまざまなサイトで議論されていますが、sakuraがおすすめしたいのはズバリ刊行順に読むことです!なぜならデビュー作からリアルタイムで読んでいた一読者としては、刊行順に読み進めたことにより過去作品で張り巡らされていた謎も巧みに隠されていたリンクも、すべてストンと腑に落ちたからです。というわけで、刊行順に読み進めることが辻村作品の面白さを最大限に享受できるのではないかと思っています。
実は、デビュー作から始まる3つの作品『冷たい校舎の時は止まる』『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』が、いずれも他の作品に芋づる式にリンクしているんです。言い換えると、この3つの作品は必ず最初に読んでおくべし!!では、それぞれのリンク作品とおすすめの読む順番をご紹介します。
①『冷たい校舎の時は止まる』を楽しむなら
『冷たい校舎の時は止まる』おすすめ順 | |
---|---|
1 | 『冷たい校舎の時は止まる』 |
2 | 『ロードムービー』 |
3 | 『光待つ場所へ』 |
②『子どもたちは夜と遊ぶ』を楽しむなら
『子どもたちは夜と遊ぶ』おすすめ順 | |
---|---|
1 | 『子どもたちは夜と遊ぶ』 |
2 | 『ぼくのメジャースプーン』 |
3 | 『名前探しの放課後』 |
4 | 『本日は大安なり』 |
③『凍りのくじら』を楽しむなら
『凍りのくじら』おすすめ順 | |
---|---|
1 | 『凍りのくじら』 |
2 | 『スロウハイツの神様』 |
3 | 『名前探しの放課後』 |
4 | 『光待つ場所へ』 |
5 | 『島はぼくらと』 |
【世代別】中高生・大人におすすめの辻村作品は?
辻村作品は、学生から大人まで幅広い年齢層に人気があります。多作の作家さんなので、"どの作品が自分に向いているのかわからない"という人や、"子どもに読ませたいけど不適切な描写が出てきたら困る"と心配な人もいるかもしれませんね。そこで、まだ読書を始めて間もない中高生から、経験豊かな大人の皆さんまで【世代別】におすすめしたい辻村作品をご紹介します。成長とともに下記の順番に読んでみるのも良いかもしれません。ぜひ参考にしてみて下さいね!
中学生 | 『かがみの孤城』 |
---|---|
『サクラ咲く』 | |
『ふちなしのかがみ』(※ホラー要素あり) | |
高校生 | 『冷たい校舎の時は止まる』 |
『ロードムービー』 | |
『名前探しの放課後』 | |
『島はぼくらと』 | |
大人 | 『東京會舘とわたし』(※読書歴ある高校生もOK) |
『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』 | |
『盲目的な恋と友情』 | |
『傲慢と善良』 |
メディアミックス作品のご紹介
辻村作品を最大限に楽しむために、おすすめのコミカライズ作品をご紹介します。もちろん原作小説ありきですが、「ちょっと活字を読むのはハードルが高いかも…」と感じる人には漫画から入ってみるのも良いかもしれませんね!現在漫画化されている辻村作品は『冷たい校舎の時は止まる』『オーダーメイド殺人クラブ』『スロウハイツの神様』『かがみの孤城』です。その中でも、おすすめ2作品をピックアップしてみました。
あとは映像化されている辻村作品もおすすめです。『ツナグ』『太陽の坐る場所』『ドラえもん のび太の月面探査記』『朝が来る』が映画化されている他、ドラマ化されている作品も多数あるのでチェックしてみて下さいね!
まとめ
ここまで、辻村深月さんのおすすめ本を紹介してきましたが気になる作品はありましたか?最後にもう一度だけ強調しますが、辻村作品は<読む順番>がとても大切です。著作に散りばめられているさまざまなリンクに気付けば、過去作品を再読したくなること必至!きっとどっぷりと辻村ワールドに浸ってしまうと思います。
辻村さんは、その圧倒的な筆力に加え、人の弱さや痛みに静かに寄り添える作家です。若くして直木賞を受賞し、ここ最近では毎年のように本屋大賞など各文学賞の候補作に上がっています。今後も着々と受賞歴を積み重ねていくのではないでしょうか。辛くて仕方がないとき。過去のトラウマに向き合う必要があるとき。人生の新たな一歩を踏み出したいとき。きっと優しい物語があなたの背中を後押ししてくれることでしょう。
古本店『もったいない本舗』では、辻村深月さんの作品を数多く取り揃えております。興味のある作品があったら、ぜひチェックしてみて下さいね!
ライティング担当 : sakura札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。 |