• 2020/06/15

【古本屋スタッフおすすめ】本当に面白いミステリー小説50選!

面白いミステリー小説を探しているけれど、何がおすすめなのか分からない!というあなたへ。古本店『もったいない本舗』の読書好きスタッフがおすすめする国内外のミステリー小説を一挙紹介!あっと驚くどんでん返しものからイヤミスまで、ジャンル別に50作品をご案内します。

面白いミステリー小説TOP画像

ミステリー小説の魅力とは?

皆さん、ミステリー小説はお好きですか?

読書家のあいだでも、ミステリー小説はとりわけ人気のジャンルです。ミステリー小説といえば「〇〇の殺人」といったタイトルを思い浮かべる人が多いと思います。でも実は、じっくり腰を据えて推理するものから、気軽に読めるライトなもの、またはSFやファンタジーと融合した変わり種までそのジャンルは多岐にわたります。

ミステリー小説の醍醐味は、何と言っても「謎解き」です!ある事件が起こり、犯人を突き止めるだけがミステリーではありません。一連の事件には、"誰が(フーダニット)、どのように(ハウダニット)、なぜ(ホワイダニット)犯行に到ったのか"という過程があります。それが単なる犯人当てにとどまることなく、物語全体に厚みをもたらしているのではないでしょうか。思わず目をみはるようなトリッキーな犯行方法や、つい感情移入してしまうような犯行動機など、ワクワクするような非日常がミステリー小説にはあります!

でも、ミステリー小説はフィクションの中でも人気のあるジャンルだけに玉石混交です。後世に残したい名作もあれば、読破することすら危うい駄作もかなりの数存在します。そこで、古本店『もったいない本舗』のミステリー小説好きスタッフsakuraが、自信を持っておすすめする「とにかく面白いミステリー小説」を、国内外含め50作品ご紹介します。ぜひ参考にしてみて下さい!

最高に面白い!おすすめ国内ミステリー小説40選

①【トリックが秀逸】ミステリーならまずはこちらの5冊

ミステリー小説ならば、絶対に外せないのが【トリック】です。トリックと一口に言っても色々な種類があります。例えば、絶対に犯行が不可能に思える密室で起こった「密室トリック」や、読者の先入観や固定概念を利用してミスリードさせる「叙述トリック」などが有名です。

日本のミステリー小説ファンは、目が肥えているので、使い古されたトリックでは満足できません。ありきたりのトリックでは、二番煎じだねと言われてしまうのがオチです。そう考えると、現代のミステリー作家はひと昔前よりもはるかにトリック作りのハードルが上がっているのではないでしょうか。さて、そんな中ひときわ輝きを放つ見事なトリックを披露してくれた5冊をご紹介します。

トリック重視ミステリー

1位  すべてがFになる(森博嗣)

すべてがFになる

作者森博嗣

出版社講談社

出版年月1998年12月

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ノイタミナ枠でアニメ化されたこともあるので、ご存知の方も多いかもしれません。タイトルが印象的な『すべてがFになる』を1位としました。本作は若干荒削りな部分はありますが、巧みなトリックと作品のもつ無機質な魅力は、他のミステリー小説とは一線を画しています。犀川創平と西之園萌絵を主人公とする<S&Mシリーズ>の1作目。森博嗣さんのデビュー作であり、第1回メフィスト賞を受賞した作品でもあります。

舞台は孤島のハイテク研究所。そこには幼いころに両親を殺害した、美貌の天才プログラマー・真賀田四季が隔離されているのです。ある日、彼女の部屋から両手両足を切断されウェディングドレスをまとった死体が発見されます。

あらすじだけ読むとかなり衝撃的なのですが、本作を実際に読んでみるとわかるように生々しさというのが一切なく、どこかメカニカルな美しさがあります。そのトリックが非常に印象的で、理系の天才が複数人出てくるミステリー小説というのもまた目新しさがあります。キャラが立っているので、シリーズ通して読んでみるのも良いかもしれませんね!


2位  『アリス・ミラー城』殺人事件(北山猛邦)

『アリス・ミラー城』殺人事件

作者北山猛邦

出版社講談社

出版年月2008年10月

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皆さん、『不思議の国のアリス』はご存知だと思いますが、それでは『鏡の国のアリス』を読んだことはありますか?意外と知られていないのですが、『鏡の国のアリス』は『不思議の国のアリス』の続編で、少女アリスが鏡の国に迷い込むという物語。本作は、その鏡の国を下敷きに作られたミステリー小説です。

著者の北山猛邦さんは、<城シリーズ>を書かれているのですがそのどれもが独特な世界観を持っています。終焉を迎えつつある世界だったり、中世フランスだったりとその舞台や設定もさまざまで全く飽きさせません。本作はシリーズ3作目ですが、それぞれ独立した物語なのでここから読んでも大丈夫!

ある孤島にたたずむ「アリス・ミラー城」。城に眠るお宝アリス・ミラーを見つける為に探偵たちが集められます。しかしそこは鏡の間。チェス盤の駒が動くたびに、一人また一人と探偵が殺されていきます。フェアかどうかはギリギリのラインで賛否両論ありそうですが、最後の最後までミスリードさせられていた本作に拍手を送りたいです。


3位  屍人荘の殺人(今村昌弘)

屍人荘の殺人

作者今村昌弘

出版社東京創元社

出版年月2019年9月

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比較的新しい作品からもランクインさせました。新人としては前代未聞の<国内主要ミステリー賞4冠達成>という快挙により、一気に知名度の上がった『屍人荘の殺人』。色々と予備知識があったため「本格ミステリー」からは程遠いイメージがあって、実はあまり食指の動かない作品でした(笑)

でも一度読み始めたら、とにかく続きが気になって仕方がない!特に最初の一人がターゲットになってからは、スピード感はさることながら「クローズド・サークル」の作り方に驚きを隠せませんでした。◯◯◯(一応ネタバレ防止のため伏せます)を使うあたりは、突飛ながらもきちんとミステリーとして成り立っているのです!

古典的なミステリーが好きな読者にはなかなか受け入れがたい部分もあるかもしれません。…が、それだけで敬遠してしまうのはもったいない!ホラーとミステリーが一体となった本作は、ミステリー界に新たな風を吹き込んでくれました。食わず嫌いをせずに、ぜひ新時代のミステリー小説をご堪能下さい!


4位  ジョーカー・ゲーム(柳広司)

ジョーカー・ゲーム

作者柳 広司

出版社KADOKAWA

出版年月2008年8月

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「敵をだますにはまず味方から」とよく言いますが、本作『ジョーカー・ゲーム』を読んでいるとそれに近い感覚に陥ります。アニメ化もされましたが、やはりこの作品のスタイリッシュな面白さを堪能するには、絶対に原作を読んで欲しいです。

本作の舞台は、陸軍に秘密裏に作られたスパイ養成学校D機関。戦時中の日本は、国のために戦って命を落とすことが名誉なことだと思われていたのですが、D機関を作った結城中佐は、「死ぬな、殺すな、とらわれるな」を戒律として若きスパイたちを育てあげるのです。

敵国の裏のまた裏をかく頭脳戦は、読者をも巻き込みます。それぞれの短編すべてが異なる人物の目線で語られ、それがD機関のスパイ目線なのか、それとも全然関係のない部外者なのかそれすらも最後までわかりません。化物級の能力を持ったスパイたちと、さらにそれを上回る存在感を放つ結城中佐の影。最後の最後で「だまされた!」と、心地良い敗北感に身を委ねて下さい!


5位  悪魔の手毬唄(横溝正史)

悪魔の手毬唄

作者横溝正史

出版社KADOKAWA

出版年月1971年7月

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古典からも一冊ご紹介。金田一耕助シリーズといえば『八つ墓村』や『犬神家の一族』が有名ですが、sakuraは個人的には密かに『悪魔の手毬唄』がシリーズ最高傑作なのではと思っています。古くから、ある不気味な手毬唄が伝わる孤立した山奥の村落・鬼首村。外界と切り離され、時代の波に乗れない田舎というのが、横溝作品には多いですね。

さて、肝心の手毬唄の内容は冒頭から読者に提示されています。こちらでは割愛しますが、これがまたひどく不気味。その手毬唄の通りに一人、二人と若い女性が殺されていくという「見立て殺人」が起こるのです。金田一がなかなかその手毬唄に気付かないので、読者はひどくやきもきさせられますが…まぁそれも金田一らしいということでご愛嬌。

トリックは古典的ながらも、今読んでもその新鮮さが薄れることはありません。おそらく大半の人がミスリードさせられるのではないでしょうか。現代にはない、独特の時代背景やおどろおどろしさを楽しんでもらいたい一冊です。本作が気に入った方は、ぜひ金田一耕助シリーズの読破を目指しましょう!


 ②【どんでん返し】最後の最後にひっくり返される驚きの5冊

今まで信じてきたものが、すべてひっくり返される瞬間。現実ではあまり体験したいことではありませんが、それもミステリー小説なら話は別です。そう、【どんでん返し】です。ミステリー小説好きさんの中には、この「どんでん返し」を求めて日々古今東西のミステリー小説を読みあさっているという人もいるのではないでしょうか。

最終章で待ち受ける驚愕の展開や、ラスト1行ですべてが明らかになる叙述トリック。読者をトリックに気付かせずにそこまで読ませることができるというのは、ミステリー作家としても冥利に尽きるというものではないでしょうか。読者としても、もしかすると犯人を当てるよりも騙される方が心地良いのでは?そんな驚きのどんでん返しが仕掛けられている5冊を見ていきましょう!

どんでん返しミステリー

1位  十角館の殺人(綾辻行人)

十角館の殺人

作者綾辻行人

出版社講談社

出版年月1991年9月

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「どんでん返し」といえば、『十角館の殺人』抜きでは語ることはできません!今やミステリー界の大御所・綾辻行人さんのデビュー作であり、<館シリーズ>の一作目である本作は、若手ミステリー作家たちに大きな影響を及ぼしてきました。本作を読んだときの衝撃、これを何と表現すれば良いのでしょうか。

孤島に建つ奇妙な建物「十角館」。それは、焼死した天才建築家・中村青司によって建てられたという曰く付きの館。ある大学ミステリー研究会のメンバー7人は、その十角館で一週間合宿することになります。彼らは、エラリィ、ポゥ、アガサという風にミステリー好きなら思わずニヤリとしてしまうようなあだ名でお互いを呼び合うのですが、まさかこれがトリックに繋がっているとは!そして奇妙な館を舞台に、次々と起こる連続殺人。

本作が出版されたのは、おおよそ30年以上も前です!今読んでも全く色褪せることのないトリックというのが素晴らしいですよね。100年後に残したいミステリー小説のひとつです。孤島側と、本土側から真相に迫っていくという構成の妙。「ラストでひっくり返されるあの1行」と最大限にハードルを上げても、やはり衝撃が走るであろうことをお約束します。


2位  ハサミ男(殊能将之)

ハサミ男

作者殊能 将之

出版社講談社

出版年月2002年8月

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『十角館の殺人』と匹敵するほどのどんでん返し。それが本作『ハサミ男』です。不穏なタイトルから、ホラー小説か?と勘違いしてしまいそうですが、紛れもなくミステリー小説なのでご安心を。ただし、美少女ばかりを狙った連続殺人事件、さらに喉にハサミを突き立てるという残忍な手口です。

連続殺人鬼が、狙っていたターゲットを自らの模倣犯に殺されてしまい、犯人を探し始めるという一風変わったストーリー。苦手な人ならば、少し躊躇してしまいそうな設定ではありますが、それ以上にすべての謎が解けたときの清々しさと言ったら!穴だらけだったパズルのピースがすごいスピードで埋まって行くような感覚と表現したら良いのでしょうか。

読者の先入観をうまくミスリードに導いており、相当高度な叙述トリックが使われています。ちなみに本作は、豊川悦司さんと麻生久美子さん主演により映画化もされているようです。…が、はて?これは映像化可能なのでしょうか(笑)いつも思うことですが、叙述トリックの映像化というのは監督の腕の見せどころですね。


3位  神のロジック 人間のマジック(西澤保彦)

神のロジック 人間のマジック

作者西澤保彦

出版社文藝春秋

出版年月2006年9月

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そこまで広く知られている作品ではありませんが、本作の「大どんでん返し」には思わず言葉を失ってしまった…という読者も多いのではないでしょうか。決して後味が良い作品とは言えないため賛否両論あるようですが、個人的にはぜひご一読いただきたいと思っています。

各国から6人の生徒が集められた謎の<学校>。どんな理由でこの学校に集められたのか不明で、6人はみな過去の記憶が曖昧なのです。学校には開かない電話ボックスがあったり、ワニのいる池があったりと、とにかくすべての設定が謎に包まれています。読者は、スパイの養成校か何かなのか?と色々勘ぐりながら読み進めるはず。

すべてが明らかになったときのあの衝撃は、一生忘れることはできないでしょう。何を言ってもネタバレになりそうなので詳しくは語りませんが、これぞミステリー小説の醍醐味だと言えるのではないでしょうか。読了後には、また最初から読み直したくなるはずです。閉鎖的な空間が好きな方も、ぜひ挑戦してみて下さい!


4位  この闇と光(服部まゆみ)

この闇と光

作者服部まゆみ

出版社KADOKAWA

出版年月2014年11月

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閉塞的で耽美な世界がお好きな読者には『この闇と光』をおすすめします!あまりにもヘヴィーで衝撃的などんでん返しに、思わず唖然としてしまう人が続出。しかし、好きな人にはたまらない展開でもあります。失脚した父王の愛情をたっぷり受けながら、小さな別荘に囚われている盲目の王女レイア。まるでおとぎ話のような美しい世界に読者も酔わされるはず。

しかし!それも前半までの話です。あれよあれよという間に突入する後半で、驚愕の真実が明らかになります。視力を取り戻したレイアが直面した世界とは…。前半の「闇」に対して、後半の「光」の対比が見事です。「闇」の中にあって、レイアが生きていた世界はなんと美しかったのでしょうか。

本作は、ぜひとも予備知識なしで読んでいただきたいです。後半部の坂を転げ落ちるかのようなジェットコースター展開が圧巻です。作者の服部まゆみさんは、残念ながら2007年に若くして亡くなってしまいましたが、ほかにも『一八八八 切り裂きジャック』や『レオナルドのユダ』などとても良い雰囲気の作品を書かれています。『この闇と光』が気に入った人は、あわせて読んでみて下さいね。


5位  イニシエーション・ラブ(乾くるみ)

イニシエーション・ラブ

作者乾 くるみ

出版社文藝春秋

出版年月2007年4月

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松田翔太さんと前田敦子さん主演で映画化されたので、ご存じの方も多いかもしれません。実は映画では、主人公・鈴木の部屋に置かれている本を『もったいない本舗』が一部提供しているんですよ!鈴木の部屋を見てもわかるとおり、舞台は1980年代後半。映画を見ながら「懐かしい」と感じる人も多いのではないでしょうか。

さて、本作は「二度読みしたくなる恋愛ミステリー」として有名です。あらすじにある"最後から2行目で、本書は全く違った物語に変貌する"という謳い文句が、読者のハードルを否応なく上げてしまいそうですが…それでもやはり「騙された!」という声が多く聞かれます。

正直、途中まではごくごく普通の恋愛小説。取り立ててここがすごいとか、ここが面白いという類の作品ではありません。でも後半以降、小さな違和感が徐々に形になり始めます。前半A面に対し、後半B面のインパクトが強すぎて、思わず読了後に最初から読み直したくなる!というのも納得。おそらく2度目に読んだほうが面白く読めるのではないでしょうか。


 ③【学園ミステリー】学生時代特有のあの感覚を思い出す5冊

ミステリー小説の中で人気のジャンルのひとつが【学園ミステリー】です。学生時代というのは誰もが通る道であり、学校生活における独特の緊張感やほのかな甘酸っぱさなど「青春」の記憶と結びついている人が多いはずです。そんな学生時代特有の<あの感覚>を思い出すような学園ミステリー小説を読めば、たちまち若かりし頃の自分に戻ることができますよ!

学園ミステリーは名作揃いです。謎解き要素を多分に含んだ作品や、日常生活の謎を明らかにする人が死なないコージーミステリーなど。学校を舞台にした作品は、誰もが懐かしさと既視感を覚えるのではないでしょうか。実はこのジャンルが一番甲乙つけがたく一番迷いました。どれもおすすめの作品なので、ぜひ5冊すべて読んでいただきたいです!

学園ミステリー

1位  冷たい校舎の時は止まる(辻村深月)

冷たい校舎の時は止まる

作者辻村深月

出版社講談社

出版年月2007年8月

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『冷たい校舎の時は止まる』。このタイトルに惹かれて購入した読者もいるのではないでしょうか。今や直木賞作家として有名な辻村さんは、今でこそさまざまなジャンルの作品を書かれていますが、デビュー当初は学園ミステリーを中心に執筆されていました。荒削りながらも、切なく繊細な心理描写には定評があり、「初期の辻村作品の方が好き」という読者もたくさんいます。

しんしんと雪が降りしきる中、いつもどおりに登校した8人の高校生。しかし学校には、彼らのほかには誰もおらず何故か校内に閉じ込められてしまいます。凍りつく校舎と、開かない扉。そして何故か5時53分で止まってしまった時計…。そんな中、彼らは2ヶ月前の学園祭で死んだ同級生のことを思い出します。誰かが死んだことは覚えているのに、不思議と同級生の顔も名前も思い出すことができないのです。

一人一人の過去を掘り下げながら謎に迫っていくスタイルは冗長になりがちですが、本作にはそれが一切ありません。人には言えないような劣等感を抱えていたり、微妙な駆け引きがあったり。辻村さんはどうしてこんなにも人の痛みがわかるのでしょうか。ホラーテイストの描写もありますが、最後には爽やかな気持ちに包まれること請け合いです!


2位  麦の海に沈む果実(恩田陸)

麦の海に沈む果実

作者恩田 陸

出版社講談社

出版年月2004年1月

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sakuraの大好きな作家の一人、恩田陸さんは学園ミステリーもお得意のジャンルです。恩田ファンの中でもとりわけ人気のある作品がこの『麦の海に沈む果実』。どこか不穏さを感じる空気感と独特の閉塞感。それに湿原にポツンとたたずむ全寮制の学園ときたら、好きな人はたまらない設定ではないでしょうか。

この学園では、「3月以外の転入生は破滅をもたらす」という不思議な言い伝えがあります。でも主人公の少女・理瀬は、2月の最後の日にこの学園へ転校生としてやってきてしまうのです。次々と失踪する生徒たちや、怪しげな交霊会、そして魅力的な登場人物たち。ヨハンや黎二を見ていると、こんな精神年齢が高い少年たちがいたら空恐ろしい…と思うほどに大人びています(笑)

「ゆりかご組」「養成所組」「墓場組」という3つのグループに属する生徒たち。理瀬は主人公でありながら、最後までつかみどころがなく謎のベールに包まれています。そして最後の最後で驚きの展開!ラストで待ち受ける驚愕の真実はもちろんのこと、幻想的でミステリアスな世界観は、きっと読む人すべてを虜にしてしまうことでしょう。恩田作品ならまずは麦海!というほどに、おすすめしたい一冊です。


3位  氷菓(米澤穂信)

氷菓

作者米澤 穂信

出版社KADOKAWA

出版年月2001年10月

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ミステリー小説といえば、殺人事件が起こると思っていませんか?世の中には「人が死なないミステリー小説」というものが存在します。「そんなのつまらないよ」と思った人!騙されたと思って<古典部シリーズ>を読んでみて下さい。『氷菓』から始まる本シリーズは、学園生活の中のちょっとした謎を描いた日常ミステリー小説なのですが、これがまた想像以上に面白いんですよ。

意味のないことはしない、徹底的な省エネ主義者の主人公・折木奉太郎(ホータロー)。彼はとにかく面倒くさいことは嫌いなのに、ひょんなことから廃部寸前の「古典部」に入部してしまうはめに。そして個性派揃いの仲間たちとともに、学校内で起こるさまざまな謎を解決していくという学園ミステリー小説です。

本作は、古典部の面々の何気ない会話や掛け合いが面白く、コージーミステリー(日常の謎を描いたミステリー小説)の魅力を再発見できるはずです。小さな謎から始まり、やがてたどりついた真相はどこかほろ苦く青春の終わりを予感させます。<古典部シリーズ>は現在第6弾まで出ています。(2020年4月現在)ちょっぴりビターな学園ミステリーをお楽しみ下さい!


4位  死者の学園祭(赤川次郎)

死者の学園祭

作者赤川 次郎

出版社KADOKAWA

出版年月2009年11月

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赤川次郎さんといえば、真っ先に思いつくのが「三毛猫ホームズ」シリーズではないでしょうか。あまりにも有名なシリーズですが、今回はあえて『死者の学園祭』をおすすめしたいと思います。M学園の女子高生3人はある立ち入り禁止の教室を探検した後、次々と謎の死を遂げていきます。その不審死に疑問を覚えたクラスメイトの主人公・真知子が、たった一人で事件への解決へと乗り出す学園ミステリー。

1970年代の作品ですから、当然今この時代に読めば「古臭さ」を感じる人もいるでしょう!でも、学生時代の交友関係、人を思う気持ちはいつの時代だって変わることはありません。昨今のミステリー小説は必要以上に人物設定を複雑にしがちですが、本作に登場する少女たちは単純で楽観的。人が次々と死んでいるのですが、決して深刻にはなりません(笑)

おそらくミステリー慣れしている読者なら、すぐに真相に気付いてしまうかと思いますが、昭和感漂う学園ミステリーとしてはとても雰囲気の良い作品です。ちなみに本作は、2000年に深田恭子さん主演で映画化もされているんです!映画版もやはりライトなミステリーといった趣ですが、深キョンの可愛さを思う存分堪能できますよ。


5位  神様ゲーム(麻耶雄嵩)

神様ゲーム

作者麻耶 雄嵩

出版社講談社

出版年月2015年7月

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ある町で起こった連続猫殺人事件。主人公の少年・芳雄がひそかに思いを寄せるミチルの愛猫も殺されてしまいます。そんな中、転校生の鈴木くんが瞬時に犯人を言い当てるのです。自分は「神様」だからなんでもお見通しなのだと。そして彼の予言通りに殺人事件が起こります。鈴木くんは本当に「神様」なのか?

小学生の頃、秘密基地を作ったという人もいるのではないでしょうか?大人に見つからない秘密の場所。そんな子どもの頃の思い出がふと蘇り、懐かしさを覚えつつ読み進めましたが、物語はどんどん不穏な方向に進んでいきます。本作は、ジュヴナイル向けレーベル<講談社ミステリーランド>にて配本されましたが、やはりそこは一筋縄ではいかない麻耶さん。最後の最後でとんでもない仕掛けを用意してくれています!これ子どもに読ませて良いのでしょうかね…。

本作の続編として『さよなら神様』という作品が出ています。こちらも小学生らしさをギリギリのところを保ちつつもブラックな後味が特徴で、「普通のミステリーには飽き飽きだよ!」という読者にはぜひ挑戦してみて欲しい一冊です。「スタンド・バイ・ミー」にひとさじの毒を加えたら、こんな感じになるんじゃないでしょうか(笑)


 ④【後味さわやか】まるで一服の清涼剤。読後感さわやかな5冊

ミステリー小説と爽やかさは相反するもの…そう思っていませんか?当然のことながらミステリー小説は殺人事件が起こるのが定石です。でも、中には読了後に爽快感を味わえる作品があります。学園もの、時代もの、さらには家族の関係を描いたものまでさまざまです。

さて、今回はミステリー初心者でも読みやすい5冊をピックアップしてみました。読書家さんならもう知っている作品ばかりかもしれませんが、未読のものがありましたらぜひご一読くださいね。一服の清涼剤の役割を果たしてくれるミステリー小説はとても貴重なので、お気に入りの本を見つけたらいつでも読み返せるように保管しておくのがベスト!

爽やかミステリー

1位  夜のピクニック(恩田陸)

夜のピクニック

作者恩田 陸

出版社新潮社

出版年月2006年9月

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恩田ファンのsakuraとしては、膨大な恩田作品の中からどれを選ぶか…非常に迷いました。幅広い世代が楽しめて、後味の良いミステリー小説と言えばやはり『夜のピクニック』がダントツでしょう!恩田さんは「恩田ワールド」という表現をされることがあるように、少し作風にクセがあります。(もちろんそれが魅力でもありますが)でも本作は、その独特のクセがなく万人が楽しめる作品に仕上がっています。

北高校生が、夜を徹して80キロを歩き続けるという「歩行祭」。(よく考えると恐ろしい行事ですね)主人公の貴子は、ある決意を胸にこの高校生活最後のイベントに臨みます。3年間誰にも言えなかった秘密を、すべて清算するという覚悟を持って。「どうせ恋愛物でしょ?」と思ったら大間違い!恩田さんが普通の恋愛小説を書こうはずがありません(笑)

「歩行祭」の間、貴子は友人たちと学校生活の思い出などを語りながら歩き、それぞれのサイドストーリーを絡めながら隠された秘密に迫って行きます。読後はなんとも爽やかな気持ちになることでしょう。会話の中で徐々に真相に迫っていくというスタイルは恩田さんお得意の手法で、ほかにも『黒と茶の幻想』などでも楽しむことができます。興味のある人はぜひ合わせてどうぞ!


2位  スロウハイツの神様(辻村深月)

スロウハイツの神様

作者辻村 深月

出版社講談社

出版年月2010年1月

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「伏線の張り方が巧みな作家」と言えば、真っ先に思い浮かぶのが辻村深月さんです。先ほどご紹介した学園ミステリー『冷たい校舎の時は止まる』もしかり、そして本作『スロウハイツの神様』もまたしかり。一体これはどこに繋がるんだろう?と思えたエピソードが、最終章ですべて繋がったときの爽快感は何ものにも代えがたい読書体験です!

売れっ子脚本家の環、熱狂的なファンが多く存在する作家チヨダ・コーキ、そしてほかにも漫画家や画家などを目指す若きクリエイターの卵たちが、一つ屋根の下で共同生活を送る物語です。まるで現代版のトキワ荘ですね。上巻は、若者たちの青春群像劇といった趣でこれといった事件は起こりません。登場人物の過去や日常エピソードを深く掘り下げながらゆるゆると進んでいきます。

それが下巻に進むと急展開を見せるのです。最初は冗長とさえ思えた個々のエピソードが「こんなところで繋がるの!?」と驚くほどに、伏線の回収が見事としか言いようがありません。上巻で本を置かずに、ぜひ最後まで読んで欲しいです。最後は必ず温かな感動が押し寄せるはずです。ちなみに、作中で登場するチヨダ・コーキの書いたデビュー作『V.T.R.』も実際に発売されています。中高生に人気という中毒性のある小説が見事に再現されていて、これらを生み出した辻村深月という作家が空恐ろしいです。


3位  しゃばけ(畠中恵)

しゃばけ

作者畠中 恵

出版社新潮社

出版年月2004年3月

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通常のミステリー小説とは、ちょっと毛色が違う作品もピックアップしてみました。畠中恵さんの大人気時代小説<しゃばけシリーズ>です。一作目の『しゃばけ』は、日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。柴田ゆうさんの可愛らしい挿絵の魅力も相まって、時代小説が苦手な人でも楽しめるエンターテイメント小説となっています。

本作が通常のミステリー小説と一線を画しているのは、時代小説だからというだけではありません。主人公の一太郎は、江戸有数の薬種問屋の一粒種。めっぽう身体が弱く、事あるごとに寝込んでいるものの、優しく機転の利く性格から周りからは「若だんな」と呼ばれ親しまれています。病弱な主人公というのも一風変わっていますが、さらに自宅にいながらにして事件を解決する安楽椅子探偵ものとして楽しむこともできるんです。

若だんなの周囲は妖怪だらけ。妖怪というと、おどろおどろしいものを想像してしまいそうですが、みんな心優しく面白い妖怪たち。寝込んでいるときですら、若だんなの枕元では妖怪たちがかしましくおしゃべりをしているのです(笑)そんな妖怪たちの力を借りつつ、江戸の事件を解決していく<しゃばけシリーズ>。読了後には、きっとほっこりさせられるはずです。


4位  いつもの朝に(今邑彩)

いつもの朝に

作者今邑彩

出版社集英社

出版年月2009年3月

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兄弟がいる人は、きっと誰もが何かしら劣等感を抱いたことがあるのではないでしょうか。容姿、成績、性格…最も身近な人だけにことあるごとに比較対象にされるのが兄弟というものです。本作『いつもの朝に』は、まさにそんな幼いころの記憶を呼び起こされるような、ある正反対の兄弟とその家庭を描いたミステリー小説です。

成績優秀でスポーツマン、何をやらせてもトップクラスの兄・桐人と、頭が悪く何をやってもパッとしない弟・優太。優太は兄のことが好きだけれど、常に劣等感に苛まれています。まるで、同じ両親から生まれたとは思えない…と。そんな中、父の形見のテディベア「ユータン」から優太あての手紙を発見するのです。その手紙は彼の本当の父親を見つけるための手がかりでした。

本作は、桐人と優太の出生の秘密に加えて、一人の少年により惨殺された牧師一家殺人事件が絡んできます。二転三転する展開、下巻では一気に話が進んでいきます。ベタな話かもしれませんが、トリックの優劣を競う昨今のミステリー小説の中で、清々しいほどにまっすぐな小説。ラストは涙なしには読めません!


5位  退出ゲーム(初野晴)

退出ゲーム

作者初野 晴

出版社KADOKAWA

出版年月2010年7月

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中高生にファンも多い<ハルチカシリーズ>1作目の『退出ゲーム』。ある高校にて廃部寸前の吹奏楽部を舞台にした日常の謎解きミステリーです。【学園ミステリー】のジャンルとどちらに入れるか迷いましたが、本作の特筆すべき点はその「読後感の良さ」!まず主人公の上条ハルタ(ハル)と、幼馴染の穂村チカ(チカ)のキャラが立っていて、二人の掛け合いだけで面白く読めます。

彼らの最終目標は、吹奏楽部の部員を勧誘して吹奏楽の甲子園「普門館」を目指すこと。ホルン奏者であるハルと、フルート奏者であるチカは、他の楽器を扱う部員を誘うために奔走するのですが、そうすんなりとはいきません。化学部から盗まれた劇薬の謎や、六面すべてが「白い」ルービックキューブの謎など、日常の小さな謎を推理し解き明かしながら仲間集めをしていきます。

一つひとつの事件の真相自体はほろ苦いものもあるのですが、キャラの明るさと甘酸っぱい青春ストーリーのおかげで絶妙な空気感を保っています。米澤穂信さんの<古典部シリーズ>にどこか近い気もしますね。2020年4月現在、シリーズ第5弾『惑星カロン』まで発売されています。


 ⑤【短編集】初心者におすすめ!とっつきやすい短編集5冊

ミステリー小説はちょっと苦手意識がある…集中力が続くかどうか心配…トリックを見破るなんて夢のまた夢…。それでもミステリー小説に挑戦してみたい!という初心者の方にぜひおすすめしたいのが「短編集」です。短編集の良いところは、一つひとつのお話が短いので飽きがこないということと、一人の作家でも色々なタイプの作品が楽しめるということです。

読書家さんたちの中には、「短編集は、ストーリーがあまり広がらないまま終わってしまうのが残念」という人もいます。でも、「もっと読みたい!」「続きが気になる!」と多少物足りなさを感じるくらいが、次の読書へのモチベーションに繋がるのではないでしょうか?それに、仮に自分に合わない作品でも、短編集ならすぐに読み終えることができるというメリットも(笑)さて、皆さんに読んで欲しい珠玉の短編集を集めてみました。

短編ミステリー

1位  儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)

儚い羊たちの祝宴

作者米澤 穂信

出版社新潮社

出版年月2011年6月

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以前こちらのサイトでもご紹介させて頂きましたが、数多く存在する短編集の中でも『儚い羊たちの祝宴』はダントツの面白さだと思います。とはいえ、本作はいわゆる「ブラックミステリー」に分類されるので、後味の良い作品が好みの方にはあまりおすすめはできません。でも、一度読むとずっと心に刻み込まれる作品となること間違いなし!

本作のそれぞれの作品に共通するのは、教養と気品を兼ね備えたお嬢様が集まる読書サークル「バベルの会」。どれも独立したお話ではありますが、必ず何かしら「バベルの会」に繋がりがあります。ブラックというよりももはや暗黒と表現したら良いのでしょうか、どれも静かで落ち着いた語り口ながら、最後の最後で全身が総毛立つ作品ばかり。

名家のお嬢様とその使用人を描く「玉野五十鈴の誉れ」は、人間が心の内に秘めた狂気が垣間見える作品で突出した面白さ。ラストに収録されている「儚い羊たちの晩餐」では、衝撃の事実が明らかになります。「アミルスタン羊」なるものが登場しますが、ミステリー好きの人ならばもしかするとすぐにピンとくるかもしれませんね。戦慄の短編集をすみずみまでご堪能ください。


2位  私たちが星座を盗んだ理由(北山猛邦)

私たちが星座を盗んだ理由

作者北山 猛邦

出版社講談社

出版年月2014年4月

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片山若子さんのふわふわとした可愛らしいイラストと、どこかロマンティックなタイトル。さぞや優しく素敵な物語なのだろう……と思った方、騙されましたね(笑)この短編集は、どれも「残酷」と表現しても良いほどに最後の1行でひっくり返される衝撃の作品ばかり!正直sakuraはすっかり騙されていましたよ。でもよく考えれば、<城シリーズ>であの奇抜なトリックを披露する北山さんのことですから、ありがちなミステリー小説を書かれるはずがありません。

本作は5つの短編が収められていますが、ファンタジーだったり現代物だったりとさまざまなジャンルを楽しむことができます。特に面白かったのが、絶海の孤島に集められた子どもたちの謎を描いた「妖精の学校」。正直このオチがすぐにわかった読者はすごいと思います。他にも、怪物に石にされてしまった幼なじみをずっと愛し続ける「終の童話」もとても好き。

美味しいフルコースを楽しみながら、最後の最後で「毒」を盛られていたことに気が付いた感覚に似ています。油断も隙もないとはこういうことです。でも気持ちよく騙されることこそミステリー小説の醍醐味!本作が気に入った人は、同著者の『千年図書館』もきっと楽しめるでしょう。


3位  鬼の跫音(道尾秀介)

鬼の跫音

作者道尾 秀介

出版社KADOKAWA

出版年月2011年11月

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"ひたひた"という言葉がピッタリの、まるで悪夢が忍び寄ってくるかのようなミステリーホラー短編集です。どれも後味は良くないのですが、巧妙に張り巡らされたトリックにページを繰る手が止まらない!人間の底知れぬ悪意や狂気が徐々に浮き彫りになり、最終的にタイトルの「鬼の跫音(あしおと)」とはこういうことかと合点がいくことでしょう。

本作には6つの短編が収められていますが、中でも特に好みだったのは「悪意の顔」。同級生からいじめられている少年は、ある日あらゆるものを中に閉じ込めてしまえるキャンバスを持つ女性に出会います。少年はキャンバスにクラスメイトを入れてしまおうとして…。二転三転する展開と、余韻のある幕引きが素晴らしいです。

作者の道尾さんは、決してこのようなミステリーホラー小説ばかりではなく、思わずほっこりさせられるような作品も多く書かれています。読むたびに印象が変わる作家さんで、一体どれだけの引き出しを持っているんだろうといつも驚かされます。道尾初心者は、ぜひ短編集からチャレンジしてみて下さい!


4位  GOTH リストカット事件(乙一)

GOTH リストカット事件

作者乙一

出版社角川書店

出版年月2002年7月

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ホラー作家の印象が強い乙一さんですが、本作『GOTH リストカット事件』は第3回本格ミステリ大賞を受賞した連作短編集。本作で、怖いだけではない新たな一面を見せてくれました。猟奇的ではありますが、神がかり的な叙述トリックが使われていて、グロさに断念してしまうのはもったいない!ぜひ最後まで読んで欲しいです。

人間の「死」に異常なほど興味のある少年と少女が主人公で、最初こそ二人の冷徹とすら思える感覚について行けず辟易とされられます。でも本作に限っては、乙一さんのソリッドな文体が心地良く、するすると読み進めてしまえるから驚きです。

どの作品も面白いのですが、中でもおすすめは飼い犬が次々と誘拐される事件を描いた「犬」です。前述したようにトリックが至妙で、「これは本物だ」と思いました!叙述トリックゆえに映像化やコミカライズも難しいのではと思います。またラストに収録されている「声」で、すべてがひっくり返される小気味良さ。文章のみでここまで読ませてくれる素晴らしい才能にただただ驚かされます。


5位  叫びと祈り(梓崎優)

叫びと祈り

作者梓崎 優

出版社東京創元社

出版年月2010年2月

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本作がデビュー作とは思えない!まるで翻訳小説を読んでいるかのような重厚感と、海外のその地域に根付いた独特なトリック。そして舌の上で転がしたくなるような美しい文章も相まって、至福の読書体験ができた短編集です。ミステリー小説にしてはあまりに繊細かつ文学的で、異色ともいえるべき作品ではないでしょうか。

さて、『叫びと祈り』はジャーナリストの青年が、世界各国で出会うさまざまな「謎」を描いた連作短編集です。サハラ砂漠で砂嵐に襲われたキャラバン隊で起こる連続殺人を描いた「砂漠を走る船の道」や、アマゾンの奥地に住む少数民族を襲った疫病に戦々恐々とさせられる「叫び」など、巧みなプロットに驚かされること請け合いです。

中には、その計算されたトリックにあざとさを感じる人もいるかもしれません。でも新人とは思えない完成度ですし、明らかに他とは毛色が違うので、「通常のミステリー小説に食傷気味」「海外を舞台にしたミステリー小説を読みたい」という人にはぜひ挑戦して欲しい作品です。


 ⑥【イヤミス】上級者向け。読了後にイヤ~な気分になる5冊

読了後に嫌な気分になるミステリー小説、通称「イヤミス」と呼ばれるジャンルがあるのをご存知ですか?何故あえて嫌な気分にならなくちゃいけないの?と思う人もいるでしょう…でも「イヤミス」には「イヤミス」ならではの面白さや魅力があります。例えばフィクションとは思えないほどリアリティがあったり、犯罪者の心理が手に取るようにわかったり。

「イヤミス」は、登場人物の心情や背景がしっかり描き込まれていることが多いです。そうでないと、読者の心をとらえることはできず、結果的に嫌な気分にさせることができないからです。一度読めば心の奥底まで刻まれること間違いなし!ぜひともおすすめしたい「イヤミス」5冊をご紹介します。

イヤミス

1位  告白(湊かなえ)

告白

作者湊 かなえ

出版社双葉社

出版年月2010年4月

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イヤミスの女王と呼ばれる湊かなえさん。湊作品の中で最も有名で衝撃的なのは、松たか子さん主演で映画化されたデビュー作『告白』です。本作は2009年の本屋大賞も受賞したので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。映画版は当時松さんの怪演が話題となり、センセーションを巻き起こしました。

ある女性教師の独白から始まる物語。主人公の教師・森口は、死んだ娘のことを引き合いに出し「愛美は事故で死んだのではない、このクラスの生徒に殺されたのだ」と、淡々と語り始めます。少年Aと少年B、そして少年の母親の手記…と章ごとに視点を変えながら事件の真実に迫っていきます。幼い女の子が命を落とした事件の真相とは?

森口の感情を表に出さない静かな語り口に狂気を感じます。そして彼女の告白が進むにつれて、教室全体に伝染していく恐慌。完璧な人間、ましてや聖人などこの世にはいません。誰しも欠点があり、小さいながらも悪意を持っています。取返しの付かないミスをすることだってあります。加害者がそんな普通の人たちだからこそ、読者もおぞましさを感じながらも共感できてしまう部分があるのではないでしょうか。気分が暗くなりますが、文学的にはとても大好きな作品です。


2位  向日葵の咲かない夏(道尾秀介)

向日葵の咲かない夏

作者道尾 秀介

出版社新潮社

出版年月2008年8月

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忌々しいほどに不快になる小説とは、まさにこの作品のことでしょう。(もちろん誉め言葉です!)とにかく登場人物すべてが少しずつ狂っていてサイコパス。気付かないほどに小さなほころびが、やがて全体に広がって取返しが付かなくなる感覚に似ています。ひどく気味が悪いのですが、負の勢いに押されてまたたくまに読み終えてしまった作品です。

小学生のミチルは、夏休みを迎える終業式の日に、同級生S君の首吊りの現場を目撃してしまいます。警察から事情を聞かれたミチルは、警察から「S君の死体はどこにもなかった」と聞かされるのです。それからまもなくして、死んだS君が〇〇(ネタバレのため伏せます)となってミチルの前に現れます。「僕は殺された」というS君の言葉を信じ、ミチルは犯人とS君の死体を探すことになるのですが…。

本作は「イヤミス」の代表作としてよく取り上げられる作品ではありますが、「どんでん返し」本としても楽しむことができます。ある特定のキャラが大人びているなぁ…と思った人、その小さな違和感を大事に読み進めてみて下さい。きっと驚きの真相が待っていることでしょう!


3位  ボトルネック(米澤穂信)

ボトルネック

作者米澤穂信

出版社新潮社

出版年月2009年10月

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<古典部シリーズ>などで有名な米澤穂信さんも、「イヤミス」を書かれています。青春ミステリー作家として油断していると、痛い目を見ますよ(笑)『ボトルネック』とは、そのタイトルのとおり妨げになっている部分のこと。さて、この小説におけるボトルネックは一体何のことなのか?それに気付いたとき、おそらく本作を読んだすべての人が絶望的な気持ちになるでしょう。

死んだ恋人を弔うために、東尋坊に来ていた主人公は崖の下に落ちてしまいます。彼が目を覚ますと、そこは現実とよく似たパラレルワールドだったのです。ひとつだけ違うのは、<僕>が存在していないということ。この世界では<僕>の代わりに<姉>がいて、亡くなったはずの恋人も元気に暮らしていました。

皆さんは、映画『バタフライ・エフェクト』をご覧になったことがありますか?(名作なので未見の方はぜひご覧下さい)この映画で描かれるように「あのとき、この選択をしていたら」という人生の分岐点を、人間はいくつも経験します。ひとつの選択が本人や周りの人生を変え、そこからまた派生していくのです。でも本作『ボトルネック』では、それがあまりにも重い。ラストの一文ですっかり打ちひしがれてしまう最強のイヤミス作品です。


4位  ユリゴコロ(沼田まほかる)

ユリゴコロ

作者沼田 まほかる

出版社双葉社

出版年月2014年1月

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イヤミスといえば、ただひたすら後味の悪いミステリーという印象が強いですよね。本作『ユリゴコロ』は、前半こそ「常軌を逸している」「とことん打ちのめされる」展開が続くのですが、それが後半に突入するとガラリと一転するんです!サスペンスフルなストーリーからたちまち家族の愛の物語へと変わる手法は絶妙で、「あれ、私イヤミス読んでたんじゃなかったっけ…」と呆然としてしまうはず(笑)

主人公が実家で見つけたのは、「ユリゴコロ」というタイトルが付けられた4冊のノート。そのノートには、ある殺人者の告白が克明に記録されていたのです。それはあまりにも残酷な殺人の記録。このノートを書いたのは誰なのか?事実なのか、ただの小説なのか?主人公はノートを読み進めていくうちに自分の出自に疑問を持ち始め、徐々に人生が狂っていくというストーリー。

前半のあまりにも残忍な筋運びに、もしかすると読破せずに本を置いてしまう読者もいるかもしれません…が、そこは我慢してぜひ最後まで読み進めていただきたい!突如として差し込まれる一筋の光とともに、まるでまたたく間に霧が晴れるかのように明らかになる家族の秘密は、必ずやあなたの心に清々しさを残してくれるはずです。


5位  悪の教典(貴志祐介)

悪の教典

作者貴志 祐介

出版社文藝春秋

出版年月2012年8月

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「サイコパス」と言えば、皆さんは誰を思い浮かべますか?sakuraは『羊たちの沈黙』のレクター博士を真っ先に挙げます。紳士的かつ知的、でも「良心」や「道理」というのが一切通用しない殺人鬼なのですが、本作『悪の教典』の主人公・蓮見はまさに日本版レクター博士と言えるのではないでしょうか。

蓮見(通称ハスミン)は、人好きのする好青年。熱血教師として、生徒たちから絶大な人気があり高いIQ値を持っています。しかし、ハスミンは他人への共感能力というのが徹底的に欠如しているサイコパスだったのです。学校という閉鎖された空間は、ハスミンにとって絶好の狩り場。爽やかな教師という仮面がじわじわと剥がされていく過程に恐怖を覚えます。

下巻は、もはや阿鼻叫喚の地獄でジェットコースターのような急展開を見せます。IQ値が高いサイコパスというのは、手が付けられませんね!ごくまっとうな倫理観を持って読み進めると、おそらく最後まで読めないでしょう。とにかくイヤ~な後味ではありますが、その中にも一抹の爽快感があることも否めません。伊藤英明さん主演で映画化もされていますので、興味のある方はあわせてどうぞ!


 ⑦【SFミステリー】SFとミステリーの融合!新感覚の5冊

ミステリー小説は、なにも現実世界だけが舞台とは限りません。現実世界だけだと、どうしてもトリックの種類は限られてきてしまいます。でも、それが例えば宇宙空間だったなら、また現実では使えない力を使えたら、もっと世界が広がると思いませんか?そんなSFとミステリーが融合した作品が「SFミステリー」で、近年人気のジャンルになりつつあります。

しかし、ミステリーはあくまでもミステリーです。フェアではないトリックなど、読者が納得するはずありませんよね。「SFミステリー」は、必ずあらかじめ読者に提示された条件内で、謎解きをさせる必要があります。SF的な世界観に浸りつつミステリーを楽しんでみませんか?そんな新感覚なおすすめ5冊をご紹介します!

SFミステリー

1位  ジェノサイド(高野和明)

ジェノサイド

作者高野 和明

出版社KADOKAWA

出版年月2011年3月

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「圧倒的なスケールで描かれる『ジェノサイド』は、おそらく最初に読んだときの衝撃を一生忘れることはできないでしょう。本作を手に取ったとき、面白さのあまり文字通り寝食を忘れて読みふけった記憶があります。それほどまでに興奮できる本に出会えたことは幸せです。

タイトルの「ジェノサイド」とは「集団虐殺」という意味。急死したはずの父からメールを受け取り、秘密裏に進められていた父の研究を受け継いだ大学院生の研人。そして同じころアフリカのコンゴでは、ある極秘の任務を命じられた4人の傭兵。アメリカのホワイトハウスでは、水面下で動きを見せる各機関の幹部。日本、コンゴ、アメリカと次々と舞台を変えながら物語は進んでいきます。

別々のエピソードがやがて一つの繋がりを見せたときは、思わず鳥肌が立ちましたね!コンゴでは一体何が起こっているのか?フィクションではありますが、最後の膨大な文献の量を見ると必ずしも作り物ではないのではと思います。でもどこでSFが出て来るのかって?それは読んでからのお楽しみです(笑)難しい言葉も多いのですが、それで失速することなく一気に読ませてくれるエンターテイメントSFミステリーです。


2位  女王の百年密室(森博嗣)

女王の百年密室

作者森 博嗣

出版社幻冬舎

出版年月2004年1月

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<百年シリーズ>の一作目である『女王の百年密室』は、sakuraが10代の頃に読んだ作品ですが未だに鮮明に記憶に残っています。人が殺されることなどあろうはずがない楽園で起こってしまった殺人事件。SFミステリーというジャンルでありながら、どこか幻想小説の趣もある作品で、当時はとても新鮮な気持ちで読み進めたことを覚えています。

2113年の世界が舞台、旅の途中で道に迷ってしまったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、ある高い城壁に囲まれた城塞都市ルナティック・シティにたどり着きます。そこは美しく聡明な女王が治める都市。平和で争いもなく誰もが満足してこの都市で暮らしています。

そんな楽園のような都市で、なぜ殺人事件が起こったのか?街の住人たちは「死」という概念がそもそも一般的な考えとは違っていることに驚かされます。そして特筆すべきは、ミチルとロイディの掛け合いが何とも奇妙な味わいがあって面白いこと。ロイディは機械なので当然感情は持ち合わせていません。データとして判別が付かない場合は、すぐ「不確定だ」で片付けます(笑)そんなロイディに八つ当たりするミチルも面白く、キャラクターも魅力のSFミステリー小説です。


3位  人格転移の殺人(西澤保彦)

人格転移の殺人

作者西澤 保彦

出版社講談社

出版年月2000年2月

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見るからに面白そうなタイトルではないですか?西澤康彦さんは、他ではあまり思いつかない奇抜なトリックを使うことでも有名です。SFミステリーだからこそ際立つトリックというのが、本作『人格転移の殺人』でも見ることができます。実を言うと、私は西澤作品の謎解きをできたことが今まで一度もありません(笑)フェアかどうかと言われると、微妙なラインではあるのですが…とにかくこんな奇想天外な展開を楽しめるなら、謎解きなんて二の次三の次です!

アメリカのとある場所で、突然大地震が起こります。そのときファストフード店にいた6人があわてて逃げ込んだ先は、なんと「人格を入れ替える実験施設」だったのです!なんだこの荒唐無稽な設定…と思いますよね。そこはグッと飲み込んで非日常の設定をぜひ楽しんで下さい。

6人のキャラクターがこれでもかというほど濃いのも特徴。主人公の江利夫は英語がペラペラだし、個性的なアラブ人やイギリス人まで含まれています。そんなメンバーの中で突如として起こる殺人。人格を入れ替える施設というトリッキーな設定なので、当然頻繁に人格が入れ替わります。一体犯人は誰なのか?あなたは犯人を当てられますか?


4位  クラインの壺(岡嶋二人)

クラインの壺

作者岡嶋 二人

出版社新潮社

出版年月1993年1月

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今やVR(バーチャル・リアリティ)というワードをあちこちで目にする機会が増えましたよね!仮想現実の空間で、限りなく現実に近い感覚が得られるという意味ですが、一般的に知られるようになったのはここ数年のことですよね。本作『クラインの壺』は、平成元年に書かれた作品でなんと今から30年も前。そんなときにVRを使ったミステリー小説を書けたとは驚きです!

「クラインの壺」というヴァーチャル・リアリティシステムは、特殊なベッドに入ると自らがプレイヤーになり、RPGの世界に入り込むことができるというもの。ゲーム原作者である主人公は、モニターとしてこの制作に加わることになるのですが、ゲームの世界に入り込むうちに次々とおかしなことが起こり始めます。

ゲームの世界では、実際に食べたものの味を感じることもできるし、ゲーム内で会話をすることも可能。恐ろしいことに痛覚まで感じることができるんです。昨今、とにかく「リアル」を求める風潮がありますよね。バーチャルとリアルの境目がなくなってしまったとしたら…近い将来、この小説と同じようなことが起こるのかもしれませんね。戦慄のラストを、とくとご覧あれ!


5位  火星ダーク・バラード(上田早夕里)

火星ダーク・バラード

作者上田早夕里

出版社角川春樹事務所

出版年月2008年10月

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SF、ミステリー、ラブストーリー。すべてを楽しむことができる骨太の小説が『火星ダーク・バラード』です。上田さんのデビュー作だそうですが、既にベテラン作家のような風格が随所に表れています。未来の火星を舞台に、女性ばかりを狙う連続殺人事件を描いたSFミステリー小説。本作は、「ブレードランナー」を彷彿とさせる舞台設定が個人的なツボで、ことあるごとに読み返している作品です。

火星治安管理局の主人公・水島は、凶悪犯ジョエルを護送中に不可解な幻覚に襲われます。気が付くとバディは無残に殺されており、水島はバディ殺しの疑いをかけられることに。彼は、孤立無縁で個人捜査をするうちに、遺伝子捜査でデザインされた美しい少女アデリーンに出会うのですが…。

人工的に作られた少女と、アラフォーのおじさんというと正直親子のような関係ですが、水島の無骨な優しさと信念を貫く姿はとにかく格好良い!甘くなりすぎない、あくまでもハードボイルドに徹した展開と二人の距離感が何とも心地良いのです。また本作は、水島の天敵であるジョエルが魅力的なのもポイントです。同著者『魚舟・獣舟』に収録されている「小鳥の墓」は、ジョエルの少年時代のエピソードが語られているので、ぜひあわせて読んでみて下さい。


 ⑧【雰囲気良し】なぜか雰囲気や世界観に引き込まれる5冊

トリックとしてはもう一息!でも、本の雰囲気に魅了される作品に出会ったことはありませんか?ミステリー小説としてのインパクトは弱くても、世界観だけで楽しめてしまう本ってありますよね。時代背景が特殊だったり、日本人が書いたのにまるで翻訳本を読んでいるような重厚な作品など。また、犯罪者であるはずの登場人物にシンパシーを感じるほどのめり込んでしまうものもあります。

さて、ここではミステリー小説が苦手な人でも読みやすい、世界観に酔いしれる本を5冊ご紹介します。こちらを読むときは「トリックを見抜こう」「謎解きをしよう」とは思わずに、ぜひ登場人物の一人になったような気持ちで、その世界に身をゆだねてみて下さい。きっと最高の読書体験ができるはずです!

雰囲気が良いミステリー

1位  開かせていただき光栄です(皆川博子)

開かせていただき光栄です

作者皆川博子

出版社早川書房

出版年月2013年9月

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『開かせていただき光栄です』。不思議なタイトルですが、一体なんのお話だと思いますか?そう、「解剖」です(笑)18世紀のイギリスを舞台にしたミステリー小説で、当時のロンドンの猥雑でどこか退廃的な雰囲気がよく再現されています。皆川作品を読んでいるとたびたび感じることですが、まるで海外の翻訳本を読んでいるかのような重厚感を味わうことができます。

外科医・ダニエルの解剖室に突然現れたのは、四肢が切断された少年。そして顔をつぶされた男性の屍体。「解剖」がテーマになったミステリー小説とはいえ、それほど猟奇的なイメージはなく不思議と「美」さえ感じさせるのは、皆川さんの圧倒的かつ流麗な筆力によるものではないでしょうか。

当時はまだ「解剖」が一般的ではなく嫌悪されていた時代。そんな中、ダニエル先生と医学にまい進する若き弟子たちが、ブラックユーモアを交えながら事件の真相に迫っていく過程は、非常に軽妙でテンポが良いです。重く垂れこめるようなロンドンの空と、優秀な弟子たちの陽気さが対比となって絶妙なバランスを保っている小説。続編『アルモニカ・ディアボリカ』もあわせてどうぞ!


2位  聖なる黒夜(柴田よしき)

聖なる黒夜

作者柴田 よしき

出版社KADOKAWA

出版年月2006年10月

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愛とは何なのか。あまりにも濃厚すぎる人と人との繋がりに圧倒されてしまいました。第15回横溝正史賞を受賞したベストセラー<RIKOシリーズ>から生まれた物語。本格的な刑事ミステリーものでありながら、愛憎相半ばする鬱屈した感情が絡み合う人間ドラマとしても楽しむことができます。

暴力団の幹部・韮崎が、何者かに喉を掻き切られ殺されるという事件が起こります。容疑者として浮上したのが、韮崎の右腕だった男妾あがりの美しい男・山内練。事件を担当することになった麻生は、10年ぶりに山内と対峙することになるのですが…。

10年前に麻生と練の間に起こった出来事、当時優しい青年だった練がヤクザの右腕となってしまった理由、そして韮崎は誰に殺されたのか?冤罪というテーマのもと、さまざまな過去の事件を絡めながら事件の真相に迫っていきます。重々しい作品ではありますが、決して読後感は悪くありません。ハードボイルドを楽しみたい人におすすめの作品です。


3位  『クロック城』殺人事件(北山猛邦)

『クロック城』殺人事件

作者北山 猛邦

出版社講談社

出版年月2007年10月

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<城シリーズ>の1作目にあたる本作は、その独特な世界観に誰もが引き込まれることでしょう。舞台は、世界滅亡が目前に迫っている荒廃した日本。終末ものや、ポストアポカリプスものが好きな人にはぜひともおすすめしたい作品です。SF的な世界観に加え、思いのほかしっかりとした物理トリックは、通常のミステリー小説では満足できない読者にピッタリです!

探偵の主人公・深騎は、ボウガンを片手に幽霊退治を生業としています。ある日、深騎のもとに「クロック城の幽霊を退治して欲しい」という依頼が舞い込んできます。依頼主の瑠華に誘われクロック城を訪れると、そこにあったのは過去・現在・未来の時を刻む3つの巨大な時計。鐘が鳴り響いたとき、別々の館でふたつの首無し死体が見つかります。

終焉を迎える世界や、「ゲシュタルトの欠片」(幽霊)などとにかく世界観が作り込まれているのが特徴です。また犯人の動機や、離れた場所での犯行方法など、驚愕のトリックは本格ミステリー好きの読者をも満足させられると思います。<城シリーズ>のどれもが世界観が抜群なので、本作が気に入った方は2作目以降も挑戦してもらいたいです。


4位  白夜行(東野圭吾)

白夜行

作者東野 圭吾

出版社集英社

出版年月2002年5月

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『白夜行』を知らない人はおそらくいないでしょう!800ページを超える本作は、ベストセラー作家・東野圭吾の代表作のひとつであり、山田孝之さんと綾瀬はるかさんにてドラマ化、また高良健吾さんと堀北真希さんにて映画化もされていて、公開時にはずいぶんと話題になりました。sakuraも東野作品の中で最も好きな作品です。

大阪の廃墟ビルで起こった質屋経営者の殺人事件。次々と容疑者は上がるものの、結局事件は迷宮入りになってしまいます。被害者の息子・桐原亮司と、容疑者の娘・西本雪穂は、まったく接点もないのですが、2人の周囲には犯罪が見え隠れします。

本作で、亮司と雪穂の感情が一切描かれていないことが、小説たる面白さを発揮しているのではないでしょうか。主人公たちが何を考えているのかがわからない、というのは小説ではかなり異色のスタイルです。(映像版ではまた異なる描かれ方をしています)直接的なやりとりや感情を描かず、行間を読ませるという手法はお見事。昭和という時代背景も本作によくマッチしていますね。哀切漂う読後感は、今でもずっと心の中に尾を引いています。


5位  魍魎の匣(京極夏彦)

魍魎の匣

作者京極夏彦

出版社講談社

出版年月1999年9月

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大御所ミステリー作家・京極夏彦さんの世界観はどれも独特です。「一度読み始めたらもとの世界に戻れない」とはまさにこのことではないでしょうか。また、京極さんといえば1000ページを超える分厚い本というのがお決まりですが、一切中だるみをしないのがこの作家さんの凄いところです!しかし、読み終えた頃にはぐったりと疲れていることでしょう、腕が(笑)

今回は中でも<百鬼夜行シリーズ>第2弾『魍魎の匣』をピックアップしてみました。本作もほかの京極作品の例にもれず、とにかく好きな人ならば雰囲気だけで楽しめてしまう作品です。綺麗な娘がぴったりとしまっている箱というのは猛烈なインパクトがあります。そして箱詰めにされた少女たちの四肢。箱を祀る奇妙な霊能者。想像すると酷くグロテスクなので、好き嫌いがかなり分かれることでしょう…。

薄気味悪くどこか幻想的な冒頭から引き込まれ、一週間はその世界にどっぷりと浸ることができます。「箱」を巡るさまざまな事件を、京極堂が「憑き物落とし」により解決に導きますが、それが何とも爽快。人間の狂気とは恐ろしいものです。


実は名作揃い!おすすめ海外ミステリー小説10選

さて、これまで日本のおすすめミステリー小説をご紹介してきましたが、実は海外のミステリー小説も名作揃いなんです!「翻訳本は読みづらい」「キャラクターの名前が覚えられない」と思っている人もいるかもしれません。今回は、<面白い・読みやすい・記憶に残る>と三拍子そろったおすすめ海外ミステリー小説を10作品厳選してみました。敬遠せずにぜひ挑戦してみて下さいね。

海外ミステリー

1位  アクロイド殺し(アガサ・クリスティー)

アクロイド殺し

作者アガサ・クリスティー

出版社早川書房

出版年月2003年12月

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sakuraが「叙述トリック」(読者の先入観や思い込みを利用してミスリードさせるトリック)の面白さに目覚めたのは、<名探偵ポアロシリーズ>の3作目『アクロイド殺し』のおかげです。この作品をきっかけに、一時期さまざまな叙述トリックのミステリー小説を読みあさった記憶があります。それほどまでに本作は衝撃的な読書体験でした。これを皆さんにも是非体験して欲しい!

村の名士であるアクロイド氏が、短刀で殺されるという事件が起こります。アクロイド氏の養子は行方不明、そして氏と関係があるとされていたフェラーズ夫人が睡眠薬の過剰摂取で死亡します。同じ村のシェパード医師の視点から、事件の詳細が語られていくというスタイルです。

発売当初は、フェアかアンフェアかを巡ってミステリー界に大きな波紋を呼んだことでも有名です。現代の読者は、あらゆるミステリー小説を読み込んでいますから中にはすぐに勘づいてしまう方もいるかもしれません。それでも巧みな伏線の張り方とトリックの鮮やかさは脱帽ものです。先入観なしに、まずは読んでみて下さい!


2位  風の影(カルロス・ルイス・サフォン)

風の影

作者カルロス・ルイス・サフォン

出版社集英社

出版年月2006年7月

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日本ではそれほど話題に上がらないのですが、実は17言語、37ヵ国で翻訳出版され、世界中で大ベストセラーとなっている作品です。それもそのはず!内戦の傷痕が生々しく残るスペインのバルセロナを舞台に、一冊の古ぼけた本「風の影」を巡る本作は、ミステリー小説ファンのみならず、恋愛小説、サスペンス小説好きの読者をも満足させるほどのエンターテイメント作品に仕上がっているからです。

ある霧の朝、本屋の息子ダニエル少年は父親と一緒に<忘れられた本の墓場>にやってきます。そこで見つけたのは「風の影」という本。著者のフリアン・カラックスについて調べるうちに、ダニエルはフリアンと奇妙な共通点があることに気付きます。ダニエルのパートと、フリアンのパート。現在と過去が徐々に交錯し合い、やがてひとつの線となる手法は見事としか言いようがありません。意図的にダニエルとフリアンのパートを似せているところがまた心憎いです。

本を愛する人ならきっと誰もが<忘れられた本の墓場>に行ってみたい!と思うはず。一冊の本が人生を変えると言いますが、自分の運命の本に出会えたなら何と幸せなことでしょうか。本作は<忘れられた本の墓場シリーズ>として続編に『天使のゲーム』『天国の囚人』が発売されています。文章の美しさも堪能してもらいたいシリーズです。


3位  レベッカ(ダフネ・デュ・モーリア)

レベッカ

作者ダフネ・デュ・モーリア

出版社新潮社

出版年月2008年2月

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「ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た――」何とも神秘的な一文で始まる『レベッカ』は、ゴシック・ロマンの金字塔として名高い名作です。ヒッチコックにより映画化されているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。主人公はマンダレーの主人マキシムに見初められて、さまざまな花が咲き乱れるマンダレーの屋敷に後妻として迎えられます。

若い主人公は嬉々として貴族の妻となるのですが、屋敷には水死した前妻レベッカの影が到るところに残されていたのです。何をしても完璧な妻だったという美貌のレベッカ。それに比べて主人公は家政婦頭には敵意を向けられるし、何かとヘマばかり。そして亡きレベッカに嫉妬し、マキシムの愛が冷えていると不安に苛まれ…。読んでいる読者のほうがハラハラさせられます。

そして下巻では一気に物語が加速します。前妻レベッカとはどんな人物だったのか?マキシムの告白により、徐々にレベッカの過去や人となりが明らかになる展開は圧巻です。読了後に、また上巻の冒頭を読み直してみてください。また深い意味があることに気付くことでしょう!


4位  チャイルド44(トム・ロブ スミス)

チャイルド44

作者トム・ロブ スミス

出版社新潮社

出版年月2008年9月

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ロシアで発禁本になったというほどに、世界を震撼させたミステリー小説です。作者のトム・ロブ・スミスさんはイギリス人。スターリン政権下の旧ソビエト連邦で実際に起こった連続殺人「アンドレイ・チカチーロ事件」をもとに着想を得たと言います。本作を読んだ後、しばらく放心状態になりました。重たい…重たすぎる…。でも、一生記憶に刻まれるであろう作品となりました。

本作は冒頭から読ませてくれます。大飢饉が深刻なウクライナの村で、幼い兄弟が食用にする猫を追いかけているシーン。そんな中、兄が行方不明となってしまうのです。そして20年後のモスクワへと舞台は変わります。主人公レオは、国家保安省の捜査官として共産党の敵を摘発するという仕事をしています。副官の裏切りにより片田舎へと左遷させられたレオは、少年・少女だけを狙った猟奇的な殺人事件に出会うことに。

シリアルキラーを扱った作品は少なくありません。それでも本作は実際の事件をもとに描かれているだけにリアリティがあり、また共産主義の監視社会の恐ろしさも相まってあっという間に上下巻読み終わってしまうほどの面白さです。「犯罪が起こるはずがない」理想的な社会で起こった殺人事件。管理社会、飢餓、小さな不満すべてが重なって最悪の事態を引き起こしてしまったのですね。本作は<レオ・デミドフ>シリーズとして続編『グラーグ57』『エージェント6』も発売されています。


5位  13番目の物語(ダイアン・セッターフィールド)

13番目の物語

作者ダイアン・セッターフィールド

出版社日本放送出版協会

出版年月2008年8月

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先ほどご紹介した『レベッカ』同様、本作『13番目の物語』もゴシック・ロマンの趣があり、とても引き込まれてしまったミステリー小説です。やはり「お屋敷」が出てくる作品は、女心をくすぐるものがありますね!古書店で働くマーガレットのもとに届いた一通の手紙。それは、プライベートがすべて謎に包まれた著名な作家ヴァイダ・ウィンターから届いたものでした。

「自分についてのすべてを語るから、自伝を書いて欲しい」と頼まれたとしたら。憧れの作家にそんなことを頼まれたら、皆さんはどうされますか?(笑)ヴァイダの口から語られる「13番目の物語」はどうもどこか信用ならないものがあるのですが、それがまた物語全体に幻想的な雰囲気を醸し出しています。

上巻こそ、物語の全容がつかめず話がどこへ進んでいくのかわからなくてジリジリさせられます。でも、下巻に突入すると途端にあちこちに張り巡らされた伏線が回収されていきます。これぞミステリーの醍醐味!本作の仕掛けに気付いた人はすごい!古書店、双子の少女、幽霊。これらのワードにピンときた人は、ぜひ一度読んでもらいたいです。


6位  ソフィー(ガイ・バート)

ソフィー

作者ガイ・バート

出版社東京創元社

出版年月2009年11月

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好きな人はたまらなく好き、嫌いな人は見事に嫌い。本作『ソフィー』を読んだ人は両極端に分かれそうな気がします。ちなみにsakuraは前者のほうで、設定、雰囲気、語り口まで何から何まで好みです。病んだ世界観なのですが、まるでずっとぬるま湯に浸かっているかのような心地良さと表現したら良いのでしょうか。本作の雰囲気の良さは、やはり海外小説ならではだと思います。

早熟で聡明な姉のソフィーと、優しく純真な弟マティー。セピア色に彩られた幸せな「過去」のエピソードと、女性が監禁され不穏な空気を感じる「現代」のエピソードが交互に語られていきます。何故女性は監禁されているのか?全てが謎に包まれたまま物語は進んで行くのですが、現代と過去が交わったところで、やがて驚愕の真実が明らかになります。

本作の特徴といえば、やはり作者のガイ・バートさんが22歳で書き上げた小説だということ!プロットの妙が際立つ本作は、とても若年の作家が書いたとは思えない完成度です。永遠に続くと思われた楽園の崩壊。すべてが明らかになったときの驚き。この独特の世界観だけでも、楽しんでいただきたい一冊です。


7位  モルグ街の殺人(エドガー・アラン・ポー)

モルグ街の殺人

作者エドガー・アラン・ポー

出版社光文社

出版年月2006年10月

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ミステリー小説といえば、ポーの作品も絶対に外せません!日本で知らぬ人はいない推理小説作家・江戸川乱歩のペンネームは、エドガー・アラン・ポーの名前をもじって付けられたと言います。乱歩も心酔したと言われるポーは、近代推理小説の生みの親と言われ、後の世代の作家たちに大きな影響を与えました。また萩尾望都さんの『ポーの一族』も、登場人物はエドガーとアラン。漫画家にも影響を及ぼしているというすごい作家なんです。

ところで、世界最初の探偵って誰かわかりますか?それは、ポーが生んだ名探偵オーギュスト・デュパンです。昼間は部屋にこもって読書と瞑想にふけり、夜はパリの街を徘徊するという完璧に夜型な奇人変人探偵(笑)なのですが、この独特のキャラクターがまた良い味出しているのです。ポーの作品は、おしなべて悪夢を見ているような後味の悪い作品が多いのですが、デュパンが出てくる作品だけは別でどこかユーモアさえ感じさせます。

閑話休題。『モルグ街の殺人』は、ぜひとも先入観なしで読んで下さい。くれぐれもネタバレサイトは見ないように!!何故なら犯人が・・・衝撃だからです。そんなのアリなの?!と思うことでしょう、これはポーだからこそ許される荒業なのではないでしょうか(笑)他に類を見ないトリックだからこそ、現代でも読み継がれているのでしょう。さまざまな出版社から刊行されている本作ですが、「光文社古典新訳文庫」は、現代の言葉で翻訳されていてとても読みやすいのでおすすめですよ!


8位  ラスト・チャイルド(ジョン・ハート)

ラスト・チャイルド

作者ジョン・ハート

出版社早川書房

出版年月2010年4月

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ジョン・ハートさんは、決して多作の作家ではありませんが、書かれる作品どれもが胸をつかれます。どの作品も家族との絆とその再生への道を描いていて、読後に何とも言えないやわらかな余韻を残してくれます。本作『ラスト・チャイルド』は、アメリカ探偵作家クラブ主催のエドガー賞と、アメリカ季刊推理雑誌の編集者らによって授与されるバリー賞を受賞した作品です。

13歳の主人公ジョニーの家庭は、愛にあふれたものでした。双子の妹アリッサが誘拐されるまでは。事件後まもなく、ジョニーの父親は謎の失踪を遂げ、母親は酒と薬に溺れるようになります。突如として失われてしまった家族と幸せな日々を取り戻すために、親友ジャックとともに妹の行方を探し始めるのです。

孤独なジョニーは、あまりにも大人びているように見えます。彼の過酷な環境がそうさせたのかもしれませんが…少なくとも13歳では、酒も飲まなかったし、運転もしなかったなぁ(笑)ミステリー小説でありながら、少年の成長物語としても抜群に面白いです。固い友情と家族の再生。怒涛の展開の後に差し込む一筋の光は、読者に静かな感動をもたらしてくれることでしょう。


9位  死者の書(ジョナサン・キャロル)

死者の書

作者ジョナサン・キャロル

出版社東京創元社

出版年月1988年7月

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『死者の書』。古代エジプトのあの死者の書ではありませんよ!(笑)sakuraは、実はジャケ買いならぬ「タイトル買い」をしてしまった作品なのですが、この作品をきっかけにジョナサン・キャロルとは長いお付き合いをすることになりました。キャロルの作品には、毒があります。それも気付かないうちに全身にじわじわと染みわたる毒が。でもそれが妙にクセになってしまうのです。

とある作家の伝記を書くという目的で訪れた町。その町は、どこか何かがずれているように感じたのでした。そんなとき、一人の少年が自分の目の前でトラックにはねられるのを目の当たりにします。事故のあと、町の人間がこう聞いてきたのです。「あの男の子、はねられる前は笑ってました?」と。小さな違和感が不気味なほどに大きくなり、やがては恐ろしさに変わります。

実のところ、前半はそれほど起伏がなく読みづらいところもあるのですが、後半に入ると一気にスピード感を見せてくれます。キャロル作品は、知らず知らずのうちに非日常に足を踏み入れていて、いつの間にか足をすくわれてしまう…そんな感覚に陥ります。万人におすすめはできませんが、タイトルやあらすじなどに興味がある人はぜひ読んでみて下さいね。


10位  閉じた本(ギルバート・アデア)

閉じた本

作者ギルバート・アデア

出版社東京創元社

出版年月2009年12月

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とらえどころのない怖さ、というのはこのような本のことを言うのでしょう。事故で眼球を失ってしまった大作家ポールは、口述筆記のために青年ジョンを雇います。本作は、ポールの独白と、2人の会話だけで成り立っているという、ある種実験的な小説です。タイトルもどこか意味深ですし、何だか不安感をあおるかのような表紙。ミステリーというよりは、サスペンス小説に近いかもしれませんね。

ポールとジョンの共同生活は最初こそ順調に運びますが、ふとしたことで小さなほころびが見え始めます。2人の何気ない会話から、少しずつではありますが齟齬が生じ始めるのです。ジョンはあくまでも穏やかで誠実に見えるのですが、何か、どこかがおかしい。この感覚はポールだけでなく読者も同じで、常に胸がざわざわするような…そんな落ち着かない気持ちにさせられます。

正直ラストは、想定内という人もいるかも。最近の海外小説はこういう傾向が結構見られるので、海外翻訳ものを読み慣れていると、もしかすると新鮮味は薄いかもしれませんね。それでも、やはりこの作品の魅力は、独白と会話だけで成り立っているという異色の構成。叙述トリックで魅了させる作者の筆力は、さすが!というほかありません。


まとめ

海外ミステリー

最後までお付き合い頂いた方、ありがとうございます!今回は古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraが、自信を持っておすすめするミステリー小説を50作品紹介させて頂きました。少しでも気になる作品はありましたか?

本コンテンツでご紹介した作品は、比較的メジャーな作品が中心となっていますが、世の中には数えきれないほどのミステリー小説が存在します。一生の宝物になるような作品もあれば、もちろん駄作も存在します。自分に合わない本を読んでも「時間の無駄だった!」ということはありません。どんな作品も、必ずあなたの人生における糧となっているはずです。

読書家さんたちのおすすめ本を読んでみるのも良し、タイトルや装丁が気になった本を読んでみるのも良いでしょう。また、本屋さんなどで書店員のポップなどを参考にするのもおすすめです。読書は心を豊かにしてくれます。ぜひ、今回ご紹介したミステリー小説を参考に、日々の生活に読書を取り入れてみて下さい!

sakura
ライティング担当 : sakura

札幌在住30代。本や少年コミックを読むことが大好きで、家事の合間にハイボールを飲みながら読書をするのが至福のとき。小説はイヤミス、ホラー、児童文学まで好きなジャンルは多岐にわたり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を好んで読む。子どもの頃からホラー映画が好きで、最近は『死霊館』や『インシディアス』など心の奥底まで恐怖心をかきたてられるようなジェームズ・ワン監督作品に魅了されている。

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