• 2020/01/16

【スタッフおすすめ】綾辻行人の面白い作品ランキング12選!

ミステリー小説作家として有名な綾辻行人さんが、どんな作家かご存じですか?ミステリーファンの多い<館シリーズ>をはじめ、幻想・ホラー風味の作品まで魅力たっぷり。古本店『もったいない本舗』のスタッフが厳選したオススメ綾辻作品12冊をランキング形式でご紹介します!

綾辻行人TOP画像

ミステリー作家・綾辻行人の魅力を紐解く!

① 綾辻行人ってどんな作家?

皆さん、綾辻行人というミステリー作家はご存じですか?名前だけは知っている、または『十角館の殺人』をはじめとする<館シリーズ>なら読んだことがある!という人もいるかもしれませんね。新本格ミステリー作家として知られる綾辻さんですが、実はミステリーだけにとどまらず、ホラー小説や幻想小説などさまざまなジャンルの作品を書かれています。叙述トリックの名手でもあり、ラストの「どんでん返し」を得意とする作家さんなんです。

② ミステリー小説ランキングでは常連!

国内のミステリー小説ランキングではもはや常連となっている綾辻さん。決して筆が早い作家という訳ではありませんが、ランキングでよく見かけるなぁという印象がありますよね。『霧越邸殺人事件』は「週刊文春ミステリーベスト10」1990年版で1位、『Another』は「ミステリが読みたい!」2011年版で1位、他にも『暗黒館の殺人』が「本格ミステリ・ベスト10」2005年版で2位など、多くの著作がたびたびランクインしています。

③ 奥様はあの人気作家!

そしてファンの間でも有名なのは、綾辻さんの奥様が<十二国記シリーズ>や<ゴーストハントシリーズ>で有名な小説家・小野不由美さんということ!どちらも超売れっ子の人気作家だけに「どんな生活をされているのだろう?」と思ってしまいますが、綾辻さんのTwitterなどでも小野不由美さんの話題がよく登場し、夫婦仲むつまじい様子が伝わってきますね。

まずは綾辻行人のシリーズと読む順番をチェック!

綾辻さんといえば、やはり<館シリーズ>が一番有名ですが、他にも数々のシリーズものを手がけられています。どれも全く異なるテイストで、それぞれ異なる魅力があります。ランキングの前に、まずは各シリーズ名とそのあらすじ&魅力をご紹介します!

※タイトル名クリックで購入ページへリンクします。
館シリーズ
綾辻さんの代表作といえば、<館シリーズ>。今は亡き建築家・中村青司の建てた数々の奇怪な建物に魅せられた探偵・島田潔。彼がそこを訪れると、決まって恐ろしい殺人事件が起こります。叙述トリックと大どんでん返しを基本とするストーリーは、ミステリー好きの読者の心をがっちり掴んで離しません。できれば順番に読んで下さいね。
囁きシリーズ
<囁きシリーズ>
1.緋色の囁き
2.暗闇の囁き
3.黄昏の囁き

<囁きシリーズ>は<館シリーズ>ほどガチガチのミステリーではなく、ホラー色・幻想色が色濃く出ているのが特徴。3冊のみなので、初心者でもとっつきやすい作品ではないでしょうか。また、シリーズとはいえ単独で完結しているので、順番はどれから読んでも大丈夫!(正確には微妙にリンクがありますが)名門女学園、別荘、さまざまな舞台で繰り広げられる惨劇と驚愕のラストには思わず舌を巻いてしまうはず!
殺人方程式シリーズ
シリーズ名だけで、苦手な人なら読むのを躊躇してしまいそうな<殺人方程式シリーズ>。刑事である明日香井叶とその双子の兄・響が凄惨な事件に挑みます。双子兄弟が主人公ということで、他シリーズよりもキャラが立っているのが特徴でしょうか。張り巡らされた伏線と論理的なトリックは、本格ミステリー好きさんも納得できるのではないでしょうか。
殺人鬼シリーズ
<殺人鬼シリーズ>
1.殺人鬼 覚醒篇
2.殺人鬼 逆襲篇
タイトルそのままのスプラッターシリーズです。残酷で冷酷な殺人鬼が殺戮を繰り広げる作品…と言ったら身も蓋もない言い方でしょうか。「13日の金曜日」が好きな人ならたまらない設定、でも合わない人はとことん苦手だと思います。ただグロいだけではなく、しっかりとトリックが仕掛けられているところがさすが綾辻さんです。
深泥丘シリーズ
“もうひとつの京都”を舞台にした、まるで悪夢のような「怪談」シリーズです。ふと別の世界に入り込んでしまったかのような不安感と疎外感を覚えます。古い病室や廃神社…静かで不気味な世界観に、読んだ人皆が酔いしれてしまうでしょう。はっきりとした結末が提示されない本シリーズは、読後に不思議な余韻を残してくれます。
Anotherシリーズ
<Anotherシリーズ>
1.Another
2.Another エピソードS
アニメ化&実写映画化もされた大人気のシリーズ。青春要素も絡めたミステリーホラーです。綾辻さんが学園ものって珍しいですよね!クラス内のある一人の美少女ミサキメイを、皆いないかのように扱い異様な雰囲気が漂う中学3年3組。しかし、転校してきた主人公が彼女に話しかけたことにより、次々とクラスメイトや関係者が亡くなっていき…。クラスに紛れ込んだ「死者」は誰?

【スタッフ厳選!】綾辻行人のおすすめ小説ランキングトップ12

綾辻作品はシリーズもの、ノンシリーズもの含めて30作品近くありますがどの作品を読めば良いのか迷う…という人のために。綾辻行人さんに魅せられた一人、古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraがオススメしたい綾辻作品トップ12をご紹介します!

1位  十角館の殺人
本格ミステリー

堂々の1位は迷わず綾辻さんのデビュー作を選びます!<館シリーズ>の一作目『十角館の殺人』です。新本格ミステリーの先駆けとなった本作は、今やさまざまなミステリー作家がお手本にするほど知名度の高い作品です。かの有名な直木賞作家・辻村深月さんも小学生の頃に本作と出会って、"ミステリー観が刷新された"という感想を述べているほどです。ミステリー小説史上傑作のひとつとしても名高く、多くの作家や読者に影響を及ぼす本というのは、どのような本なのか興味が湧いてきませんか?

<館シリーズ>に共通する特徴は、謎の建築家・中村青司が建てた奇怪な建物が舞台となっていること。素人探偵・島田潔(※)はそれらの館に魅せられ訪問するのですが、そこでは決まって凄惨な殺人事件が起こります。陸の孤島、クローズドサークルという言葉に思わず反応してしまったという人は、本作を避けては通れないでしょう!

「十角形」の奇妙な館が建つ孤島・角島を、大学ミステリー研究会の7人が訪れるところから悲劇は始まります。この館を建てた建築家・中村青司は既に炎上した青屋敷で焼死しているといういわくつきの孤島。『そして誰もいなくなった』(アガサ・クリスティー著)のオマージュ作品ということもあり、次々とメンバーが殺されていくのですが、何と言ってもこの作品の醍醐味は「大どんでん返し」!!終盤近くのあの「一行」を超える衝撃には、未だに出会えていません。

島田潔の名前の由来は、作家・島田荘司さんの「島田」と、著作『占星術殺人事件』をはじめとする御手洗潔シリーズの「潔」をあわせたものだそうです。島田荘司さんを尊敬している綾辻さんらしい名前のチョイスですね!

十角館の殺人

出版社 講談社
出版年月 1991年9月
(新装改訂版:2007年10月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
2位  人間じゃない
ミステリー短編集

デビュー作『十角館の殺人』から30年のメモリアルイヤーに出版された本作は、究極のファンブックと言っても過言ではありません。何しろ、綾辻さんの過去作品と色々な形でリンクしているからです。表題作「人間じゃないーB〇四号室の患者ー」は、『フリークス』の番外編。また『人形館の殺人』の後日譚「赤いマント」や、『どんどん橋、落ちた』の番外編「洗礼」などが収録されており、ファンにはたまらない短編集になっています。(もちろんすべて未読でも大丈夫!)

全体的にホラー色が強めでしょうか、本格ミステリーを期待して読むと若干肩透かしかもしれません。でも都市伝説から幻想ホラーに到るまで、さまざまな切り口で描かれたホラーは決して通り一遍ではなく、よく練られたプロットのもとに書かれていることが分かると思います。綾辻さんの「ホラー愛」が伝わるような一冊に仕上がっていますよ!

ちなみに本作の中でsakuraが一番衝撃を受けたのが『蒼白い女』でしょうか。ほんの数ページの掌編なのですが、これほどまでにゾクリとさせられた作品は珍しいかも。喫茶店の片隅に座る女の顔色は異様に蒼白く…最後のオチに思わずゾゾゾ。綾辻さんの実体験をもとに描かれた作品らしいのですが、作家さんというのはきっと日常で色々なネタを拾っているのでしょうね。オススメの短編集です。

人間じゃない

出版社 講談社
出版年月 2017年2月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
3位  迷路館の殺人
本格ミステリー

<館シリーズ>の3作目に当たる『迷路館の殺人』の魅力は、何と言っても複雑怪奇な「迷路」の館です。子供も大人も、潜在的に「迷路」に対する好奇心と一抹の恐怖があるものですよね。本作の館の「見取り図」を見ただけで、おそらく大多数の人がワクワクさせられるのではないでしょうか?

地下に張り巡らされた迷路と、莫大な“賞金”をかけて招かれた4人の作家。彼らは、この迷路館を舞台にした推理小説の競作を始めるのですが、それこそが悲劇の始まりだったのです。本作の特徴は、幾重にも張り巡らされたトリックと作中作の巧みさ!正直フェア・アンフェアぎりぎりのトリックと感じないこともないですが、ページを繰るのももどかしいほどにのめりこんでしまった小説です。

ちなみに本作の新装改訂版は、非常に表紙絵が美しいですよね。<館シリーズ>すべての表紙が改訂と同時に様変わりしていますが、旧版を持っていてもついつい集め直したくなります。この『迷路館の殺人』の表紙はシリーズの中でも特に魅惑的で、イラストを眺めているだけでも「地下にはどんな迷路が広がっているのか?」と、ミステリー好きたちの心をくすぐるようなデザインとなっています!

迷路館の殺人

出版社 講談社
出版年月 1992年9月
(新装改訂版:2009年11月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
4位  霧越邸殺人事件
本格ミステリー

<館シリーズ>よりもさらに本格ミステリーに徹しているのが本作『霧越邸殺人事件』。小手先のミステリーではなく、とにかくプロットを練りに練った古典的なミステリーが読みたい!という人にぴったりの作品かと思います。ノンシリーズなので、これ単品で読めるのも嬉しいところですね。

さて、ミステリーの王道といえば「陸の孤島」と、もうひとつは「吹雪の山荘」ではないでしょうか。そんなベタなクローズドサークルの舞台に則って描かれた本作は、ミステリー好きならば狂喜乱舞する設定。そして特筆すべきこととして、もうひとつ挙げておきたいのが「見立て殺人」です。童謡や詩になぞらえた見立て殺人は、ミステリーとは切っても切り離せないもので、今回は北原白秋の「雨」が使われています。読者としてはヒントが提示されているも同然なのですが、sakuraは結局真相にたどり着くことはできませんでした(笑)

完全改訂版は上下巻に分冊されイラストも一新されました。カラーも対比的で、これまた随分イメージを変えてきたなぁと思ったものです。綾辻さんの他の著作も同様ですが、文庫の改訂版は遠田志帆さんのイラストで統一されています。旧版の昔ながらの真っ黒の表紙も良いですが、改訂版も幻想的なイラストも素敵ですよね。

霧越邸殺人事件

出版社 KADOKAWA
出版年月 1995年2月
(新装改訂版:2014年3月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
5位  Another(アナザー)
学園ホラー

怖いですよね、この表紙。本作の表紙も例のごとく遠田志帆さんのイラストですが、まるで死者がじっとこちらを見ているような錯覚に陥ります。ちなみに単行本はちょうど背表紙のところにイラストの少女の目が重なるので、本棚に収納していても気味が悪い!という何やら「持っているだけで怖い本」。ファンとしてはまず「え、綾辻さんが学園ホラー?!」と驚きました。それまで全く学園物を書かれる印象がなかったもので。ところがこの『Another』が空前の大ヒット!コミック化・アニメ化・実写映画化もされ、綾辻行人という名を世に知らしめました。

とある中学校の呪われたクラスに起こるミステリーホラー。26年前のある事件が原因で、3年3組には「死者」が紛れ込むことがあるという。いるはずのないもう一人は一体誰?3年3組に関係のある人間たちが次々と凄惨な死を遂げる中、転校生である主人公が「災厄」の解決へと乗り出す物語です。ホラーでありながらも、死者を見つけ出すというミステリー要素の側面もあり、とにかく読み応えのある一冊。

綾辻さんは基本的にトリックに重きを置いているため、キャラ読みできない作品が多いのですが、本作は珍しく(?)ヒロインに人気の出た作品です。左眼が青い義眼の美少女…というと、かなりインパクトのある容姿ですよね。さらに無口なキャラときたら、いやが上にも興味をそそります。続編に『Another エピソードS』も出ているので、あわせてどうぞ!

Another(アナザー)

出版社 角川書店
出版年月 2009年10月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗

Another エピソードS

出版社 角川書店
出版年月 2013年7月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
6位  暗黒館の殺人
本格ミステリー

<館シリーズ>の7作目にあたる『暗黒館の殺人』は、なんと文庫で4冊というボリューム!2000ページを超える超大作ですが、シリーズの中で本作が一番のお気に入りという人も多々います。設定が作者の趣味嗜好を如実に表しているだけに、決して万人受けする作品ではありません。むしろ読む人を選ぶ作品だと思いますが、これを読まずして<館シリーズ>は語れない!このページ数に怖気づかずに、ぜひとも挑戦していただきたいです。

さて、本作の舞台は湖上の小島に建つ漆黒の館。いわゆる「陸の孤島」です。浦登(ウラド)家の人々が住む「暗黒館」当主の息子・玄児に招かれた主人公は、さまざまな謎めいた出来事に遭遇することに。ある意味シリーズ集大成ともいえる本作。主人公の中也は何者?<ダリアの宴>とは何のこと?18年前の<ダリアの日>に起こった事件とは?座敷牢に美しき双子の姉妹。好きな人ならたまらない設定ですよね。

何といっても4冊というボリュームですから、腰を据えて臨まなくてはいけません(笑)導入部分こそ冗長に感じる部分があるかもしれませんが、綾辻さんのことですからどこに伏線を張っているか分かりません。幻想小説とミステリーがうまく同居したこの世界観にのめりこんでしまえば、読了後には“暗黒館ロス”になること請け合いです。おどろおどろしい雰囲気を存分に堪能しながら読み進めて下さいね!

暗黒館の殺人

出版社 講談社
出版年月 2007年10月、11月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
7位  深泥丘奇談
怪談・奇談

『もったいない本舗』の別コンテンツでもご紹介させていただいた『深泥丘奇談』。ミステリーといえば“白黒ハッキリさせる”ことや“結末を明確にする”のが定石ですが、本作は全くの別物と考えましょう。オチではなく、妖しげな雰囲気を楽しむ小説です。京都によく似た「もうひとつの京都」に住むミステリー作家の主人公が体験する、さまざまな怪異を描いた連作短編集。

主人公が病気がちという設定もあり、作中で頻繁に病院(この病院もなにやらかなり怪しげ)に通うのですが、夢かうつつか分からぬまま遭遇する怪異はかなり薄気味悪いです。人面瘡や長引く雨。ふと過去を振り返ったとき、あれは現実だったのか?それとも妄想だったのか?すべてが曖昧模糊のうちに日々が過ぎていくなんて、発狂してしまいそうですよね!

実は本作は人気シリーズで、続編として『深泥丘奇談・続』『深泥丘奇談・続々』も発売されています。シリーズを通して終始「―ような気がする。」という一文で終わる、まるでつかみどころのない物語なので、もしかしたら好き嫌いがハッキリ分かれるかもしれませんね。でも、一度はまればクセになるんです。夏の終わりから、秋の夜長にぜひ読んでみて下さい。あなたを裏の京都に連れて行ってくれる…ような気がする。

深泥丘奇談

出版社 メディアファクトリー
出版年月 2008年2月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
8位  時計館の殺人
本格ミステリー

<館シリーズ>5作目の『時計館の殺人』は、シリーズの中でも最も行きたくない館かもしれません(笑)鎌倉の森の暗がりにひっそりと建つこの館の特徴は、館を埋め尽くす108個の時計コレクションです!時計はなくてはならないものですが、度を過ぎると狂気を感じますよね。時計の秒針の音が気になって眠れなくならないかしら、と設定だけでさまざまな妄想をしてしまいます。

個人的な意見で恐縮ですが、本作の設定がストライクだったんです。ある夏の日に突然死した美少女・永遠(とわ)。その死んだ姉の姿を追い続ける弟。永遠が死んでから、「時計館」に関わる人間が次々と事故や自殺など、さまざまな理由で不審死を遂げていきます。そしてその10年後、亡霊がでると噂される館を数人の男女が訪れるのですが…。

先ほどご紹介した『暗黒館の殺人』ほどではないのですが、本作も600ページを超えるボリュームで読み応えたっぷりです。日本推理作家協会賞を受賞しただけあって、その緻密なプロットには定評があります。決して機械的にならず、幻想的な雰囲気も相まってとてもバランスの良いミステリーに仕上がっているのではないでしょうか。時計館の驚きのトリック、あなたは見破れますか?

時計館の殺人

出版社 講談社
出版年月 1995年6月
(新装改訂版:2012年6月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
9位  緋色の囁き
学園サスペンス

本作は、ダリオ・アルジェント監督のイタリアホラー映画「サスペリア」のオマージュとして書かれた作品だと聞きます。実際に読んでみて納得。「サスペリア」はsakuraも大好きな映画の一つですが、映画の持つ独特な閉塞感と、真っ赤なカラーのイメージが、この作品で見事に表現されていると思います!

舞台は全寮制の名門お嬢様学校。「私は魔女なの」という謎の言葉を残して、一人の女生徒が<開かずの間>で焼死します。そして、その夜からクラスメイトたちが次々と凄惨な死を遂げていくのです。異様に厳しい校則、何かを隠している浮世離れした生徒たち、そして主人公の失われた記憶…魅力的な要素が揃っているので、謎解きよりも、ホラー・サスペンスとして楽しむのが正解です。

主人公が入学してから立て続けに起こる殺人事件。ところどころで挿入される幼いころの記憶から、読者は結末を推測するしかないのですが、例のごとく本作には驚愕の「どんでん返し」が仕掛けられています。全寮制の学校+主人公の失われた記憶というと、恩田陸さんの『麦の海に沈む果実』を連想する人も多いのではないでしょうか。麦海をホラーテイストにしたイメージなので、好きな人は参考にしてみて下さいね。

緋色の囁き

出版社 講談社
出版年月 1997年11月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
10位  フリークス
ホラーミステリー

表紙から想像するほどには恐ろしい物語ではなく、ホラー風味のミステリーといったところでしょうか。(とはいえ、若干グロ描写もあるので苦手な人は注意)とある病院の、精神科病棟の患者たちをメインにした短編集。物語は日記形式で進んでいくのでするする読めるものの、何しろ軸になっているのは精神科病棟の患者たち。現実と悪夢の狭間をふわふわと漂っているような独特な読み心地です。

本作には3つの短編が収められています。入れ子構造になった作りとなっていて、そのあたりの工夫はさすが綾辻さんといったところです。タイトル「フリークス」とは『奇形』という意味がありますが、狂気をはらんだ人間こそがまさにフリークス。信用ならない語り手というのはミステリーにおいて基本の形のひとつではありますが、綴られる手記をもとに読者は終始疑いつつ読み進めていくことになります。

本コンテンツの2位でもご紹介した短編集『人間じゃない』には、『フリークス』の番外編「人間じゃないーB〇四号室の患者ー」が収録されています。人間の闇と狂気を垣間見ることができるファン必読の作品となっていますので、ぜひあわせて読んでみて下さいね!

フリークス

出版社 角川書店
出版年月 2011年4月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
11位  殺人鬼
ホラー

おすすめ、というのには若干語弊があるかもしれません…。とにかく過去に1位2位を争うほど衝撃的な読書体験だったと言っても過言ではありません。イメージは「13日の金曜日」と言えば分かるでしょうか。ホラー映画好きの綾辻さんらしく、これ以上ないほどのスプラッター小説に仕上がりました。映画ならともかく、文字だけでこれほど凄まじい映像が脳裏に浮かぶ作品は他に読んだことがありません。

サマーキャンプ場で突如出現した殺人鬼により、楽しいはずのキャンプが阿鼻叫喚の地獄と化す…というのはまさに「13日の金曜日」と同様。でも、綾辻さんは本作にトリッキーな仕掛けを用意しています。最後まで読むと確かに驚きで「読んで良かった」と思うものの、そこに行きつくまでに挫折した読者が一体何人いることでしょうか。おそらく何人もの人がトラウマ的読書になったのでは?

スプラッターが苦手な人は安易に手を出すべきではありませんが、綾辻作品を何としてでもコンプリートしたい人や、スプラッター×ミステリーの新感覚なトリックを味わいたい!という人は思い切って挑戦してみてください。一度本を置くと、再び本を開く勇気が出ない可能性もあるので、勢いで読み切ってしまうことも大事です(笑)

殺人鬼

出版社 角川書店
出版年月 1996年2月
(改訂決定版:2011年8月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗
12位  どんどん橋、落ちた
ミステリー短編集

綾辻さんのホラーを読む気にはならない…でも<館シリーズ>をいきなり読むのにはハードルが高い…と感じる人は、短編小説『どんどん橋、落ちた』を手に取ってみるのはいかがでしょうか?本作には5つの短編が収められていますが、読者参加型の犯人当てミステリーという形式のため読みやすいのではないかと思います。ただし、あくまでも「犯人を当てる」ことが目的なので、動機などについては深くツッコまないほうが良いでしょう。

本作を読んでいるうちに「これは果たしてフェアなのか?」と感じなくもないですが、基本的な本格ミステリーのルールは守っているのでご安心を。(それでも何だか納得いかないような、微妙な気持ちになるのはsakuraだけでしょうか…)一番インパクトがあったのは某国民的アニメのパロディ「伊園家の崩壊」。登場人物もあまりに似通っているのでニヤァとしてしまいます。しかし設定は……悲惨すぎます。

読者への挑戦状に挑むものの、すべての犯人を当てた読者は果たしているのでしょうか?よっぽど古今東西のミステリーを読み込んでいるマニアでない限り難しいような気がします。ただ、気持ち良く騙されるのもまたミステリーの醍醐味!綾辻さんがひそかにほくそえんでいる様子が目に浮かびますね(笑)

どんどん橋、落ちた

出版社 講談社
出版年月 2002年10月
(新装改訂版:2017年2月)
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗

実は絵本も書いている?その人気の秘密とは?

ミステリー・ホラー作家として絶大な人気を誇る綾辻さんですが、実は子供向けの絵本を書かれているのはご存じですか?その名も『くうきにんげん』。イラストは最近さまざまな挿絵や表紙でも目にするようになったイラストレーター・牧野千穂さんのもの。子供向けとはいえ、綾辻さんらしい薄気味悪さを含んだ文章と、牧野さんの柔らかくも濃厚なタッチのイラストが非常によくマッチしています。

必ず2人がかりで人間を襲い、空気に変えてしまうという「くうきにんげん」のお話ですが、一度読み終わったら、二度目はじっくりと挿絵を見ながら隅々まで読んで欲しいです。文章がこだまする謎のリフレイン、そしてイラストに隠された数々の秘密など、よーく読まなければ気付かないものばかり!綾辻ファンの方はもちろん、お子さんがいる方はぜひ一緒に読んでみてはいかがでしょうか。

くうきにんげん

出版社 岩崎書店
出版年月 2015年9月
ルーペ この本を探す
Amazon 楽天市場 もったいない本舗

まとめ

綾辻行人サブ画像

ここまで、古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraが、独断と偏見でおすすめ綾辻作品をランキングにしてみましたがいかがでしたか?今や日本を代表するミステリー作家となった綾辻行人さん。まだ一冊も手に取ったことがない!という人なら、このランキング順位順に読んでみるもよし、気になったシリーズ毎に読んでみるもよし、または綾辻さんお得意の「叙述トリック系」の作品を中心に挑戦するのも良いでしょう。

この世には、ミステリー小説もミステリー作家も数えきれないほど存在します。現代はミステリーと一口に言っても、ラノベ風だったりSFがミックスされていたりとそのジャンルは多種多様。そんな中、全く方向性がブレることなく常に本格ミステリーを読者に提供し続ける綾辻さんは、尊敬に値しますよね。読者にとっても、「いつでも帰る場所がある」という安心感があります。

『もったいない本舗』では、綾辻作品も数多く取り揃えております。少しでも気になった人は、ぜひ当店で探してみて下さいね!

sakura
ライティング担当 : sakura

札幌在住30代。国内・海外問わず本(主にフィクション)をこよなく愛する。ミステリー、ホラー、ファンタジーが特に好み。好きな作家は恩田陸、上橋菜穂子、綾辻行人ほか多数。永遠のバイブルは北方謙三の『三国志』。アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』で衝撃を受けて以来、叙述トリックにはまり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を求めてやまない。週末はドライブがてら本屋巡りをするのが趣味。

広告
古本・CD・DVD・ゲームの買取はこちら

もったいない本舗
メールマガジン登録

セール情報や最新情報をお届け!

無料のメールマガジン登録

新着の動画