• 2022/01/26
  • 2019/10/30

【スタッフおすすめ】米澤穂信の面白い本ランキングトップ12!

米澤穂信さんってどんな作家?古本店『もったいない本舗』の読書好きスタッフがオススメする米澤作品を、ランキング形式でご紹介します。「日常の謎」を紐解くほろ苦い青春ミステリーから、ブラックユーモアあふれる本格ミステリーまで、米澤さんの魅力を余すところなく語ります!

米澤穂信小説

米澤穂信ってどんな作家?

皆さん、米澤穂信(よねざわほのぶ)さんという作家をご存じですか?米澤さんは、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞の奨励賞を受賞してデビューして以来、さまざまな青春ミステリー小説を世に送り出してきました。高校生の視点から描かれた<古典部シリーズ>や<小市民シリーズ>は、ライトノベルとミステリーが融合した作品として圧倒的な人気を博しています。

「日常の謎」を描かせたら右に出る者はなく、キャラの掛け合いなどコミカルな部分と読了後の絶妙なほろ苦さが見事に融合しているのが特徴です。また最近では、青春ミステリー以外にも「イヤミス」(後味の悪いミステリー)のジャンルでも、新たな読者を獲得するようになり、年々その活動の幅を広げているミステリー作家です。

そこで、古本店『もったいない本舗』のスタッフsakuraがおすすめする、米澤穂信さんのおすすめ小説をランキング形式でご紹介いたします。今回は個人的に大好きな12冊を厳選してみました。それぞれの作風についても詳しくご紹介しますので、これから読まれる人はぜひ参考にしてみて下さいね!

米澤穂信のおすすめ小説ランキングTOP12!

1位 『氷菓』

氷菓

出版社 KADOKAWA
出版年月 2001年10月
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日常ミステリー

堂々の1位は、米澤さんの原点でもあるデビュー作『氷菓』です!私は本作を読んで、初めて<コージーミステリー>を開拓することができました。<コージーミステリー>とは、日常の小さな謎を解くという推理小説のジャンルのひとつ。今までは「人の死なないミステリーなんて!」と思っていましたが、本作で認識を改めました。

『氷菓』は、<古典部シリーズ>の一作目です。とある高校の古典部に所属する折木奉太郎(ホータロー)は、自他ともに認める省エネ主義者。ホータローのモットーは「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」という徹底っぷりです。豪農・千反田家の一人娘である千反田えるは、清楚なお嬢様風の見た目に反して好奇心旺盛。「わたし、気になります。」の口癖は時折まわりを凍り付かせます。同じ古典部に所属する他のメンバーもおしなべて個性派揃い!とにかく“どのキャラも立っている”のが本シリーズの特徴です。

この作品を読んだ人は、日常の身近なところに隠された謎を紐解いていくことが、こんなにも面白いのかと驚かれるはずです。「ミステリー=殺人事件」という方程式が当たり前!という人にこそ手に取っていただきたい一冊。本作は、テレビアニメ化&実写映画化もされているので、あわせてお楽しみ下さい!

2位 『儚い羊たちの祝宴』

儚い羊たちの祝宴

出版社 新潮社
出版年月 2011年6月
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イヤミス

「味わえ、絶対零度の恐怖を。」本作のキャッチフレーズに惹かれて手に取った人は、おそらく相当数いるのではないでしょうか。米澤さんといえば、やはりそれまで青春ミステリー・日常ミステリーを描く作家という印象が強かったので、「これはまた180度方向性を変えてきたな…」とさすがに一抹の不安がぬぐえませんでした。でも、そんな不安も杞憂に終わったようです。読了後は、米澤さんはむしろこの方向性でイヤミスをどんどん書いて欲しい!と願うほどになりました(笑)

『儚い羊たちの祝宴』には5つの短編が収められています。それぞれのお話の軸となっているのは、教養と品格を兼ね備えたお嬢様たちが集まる読書会サークル「バベルの会」。各編は独立したストーリーとなっているものの、「バベルの会」の関係者が必ず登場するという共通点があります。

個人的に一番好きだった短編は、何と言っても「玉野五十鈴の誉れ」です!小栗家の長女・純香は権力者である祖母から同年代の少女・玉野五十鈴を使用人として与えられます。純香は五十鈴から教養としたたかさを学び、二人は唯一無二の親友となるのですが…。人間が内に秘めた静かな狂気が恐ろしく、幻想的な中にもその仄暗さが浮かび上がる暗黒ミステリーです。どんでん返しが好きな人におすすめ!

3位 『満願』

満願

出版社 新潮社
出版年月 2014年3月
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イヤミス

「このミステリーがすごい!」など主要なミステリーランキングで三冠を達成し、山本周五郎賞をも見事受賞した短編集。ジャンルとしては、先ほどご紹介した『儚い羊たちの祝宴』の流れを汲むものになるのでしょうか。非常にドライな語り口ながら、じわりじわりと迫りくる薄気味悪さに息苦しくなってしまうほどです。

本作には、6つの短編が収められていますが、どのお話にも共通するのは後味の悪さ。収録されているすべての作品が面白いのですが、中でもsakuraが特に気に入っている作品が「柘榴」です。大学でも評判の美女が、自らのパートナーに選んだのは美男子ではないものの不思議と皆に好かれる男。やがて生まれた二人の娘、夕子と月子は母に似て美しく成長します。本作の意外すぎるラストは、思わず「えぇ〜?!」と唸ってしまうこと請け合い。人間の狂気と鬱屈した感情が形となった恐ろしい作品です。

これでもかというほど打ちのめされる幕引きは、一度読んだらしばらく引きずってしまうかもしれません。それでも何度でも再読したくなってしまう本作は、ブラックミステリーだけにとどまらない不思議な魅力と吸引力を兼ね備えています。<古典部シリーズ>や<小市民シリーズ>では物足りない!という人には、ぜひ挑戦していただきたい一冊です。

4位 『黒牢城』

黒牢城

出版社 KADOKAWA
出版年月 2021年6月
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歴史ミステリー

第166回直木賞受賞作。本当におめでとうございます!そして2022年版『このミステリーがすごい!』国内編1位にも選ばれた作品です。デビュー20周年目にして、こんな本格的な歴史ミステリーを世に披露することになろうとは…!『黒牢城』は、古くからの米澤ファンからすると、まさに「新境地」とも言うべき作品なのではないでしょうか。

舞台は本能寺の変より4年前。織田信長に謀反を起こした有岡城主・荒木村重。彼は、黒田官兵衛を殺さずに土牢へ幽閉するのですが、籠城する村重は刻一刻と追い詰められて…。そんな中、城内で不可解な殺人事件が起きたり、謀反の気配が出始めます。村重はその都度土牢に降りて行き、官兵衛の意見を求め解決していくのです。なんというか虫の良すぎる話では…!と思ってしまうのですが、幽閉されて弱ってもなお頭脳がフル回転している官兵衛にはある考えが。

歴史小説×安楽椅子探偵が融合し、かつて読んだことのない極上の歴史ミステリーに仕上がっています!薄暗い土牢の中での、村重と官兵衛の推理合戦&手に汗握る心理戦も読みどころのひとつで、淡い救いのある終章がとても好みでした。この本をきっかけに、もっと黒田官兵衛を描いた本を読みたいと思えるほど。直木賞も納得の超大作です。歴史小説が苦手な人にもぜひ読んでいただきたい!

5位 『インシテミル』

インシテミル

出版社 文藝春秋
出版年月 2010年6月
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本格ミステリー

なんとも悪趣味だけど、途中で本を置くことのできない面白さ!それが『インシテミル』です。時給11万2000円という破格の報酬が出る、見るからに怪しげなお仕事。ある者は冷やかしだったり、ある者は半ば本気だったりとさまざまな背景を抱えた男女12人が採用されます。彼らは、一定のルールのもと一週間を共に過ごすことになるのですが…。

そしてそのルールとは…人を一人殺したらボーナスポイント。そして犯人を暴いたらさらにボーナスポイント。各部屋の鍵はかからず、それぞれの部屋に異なる凶器が置いてあるのです。まるで「バトル・ロワイアル」のような悪趣味なゲーム感覚の小説のように見えますが、読んで見ると案外しっかりとしたクローズド・サークルものに仕上がっています!

<暗鬼館>という密室状の建物は世のミステリー好きの心をくすぐり、一人の謎の死をきっかけに次々と後を追うように死者が増えていくというストーリーは、読者を否応なく驚愕の結末へと駆り立てます。うまい話には裏がある…。ちなみに本作は、『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』というタイトルで、藤原竜也さん主演により映画化もされています。例のごとく、期待を裏切らない演技をしてくれていますよ(笑)

6位 『王とサーカス』

王とサーカス

出版社 東京創元社
出版年月 2015年7月
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本格ミステリー

先ほどご紹介した『満願』同様、主要ミステリーランキングで三冠を達成した『王とサーカス』。同著者の『さよなら妖精』から10年後を描いた物語です。<ベルーフシリーズ>の一つですが、独立した物語なので、こちら単品でも問題なく読むことができます。元新聞記者で現在はフリージャーナリストである主人公・太刀洗万智は、観光記事を書くためネパールのカトマンズへ赴くのですが、そこで王族殺害事件に遭遇してしまいます。王族たちの死、そしてある一人の軍人の死。あらゆる視点から真相に迫っていく本格ミステリーです。

『王とサーカス』で、米澤さんが描きたかったものは「報道のあり方」なのではないでしょうか。太刀洗は、異国で起きた王族殺人事件について真実を報道したいと思います。それは記者としては至極当たり前のこと。でも彼女は、ある人物の言葉により心に迷いが生じてしまいます。悲劇を娯楽として消費してはいないか?日々世界のどこかで必ず凄惨な事件は起こっています。「可哀想だ」と涙を流しても一週間後にはすっかり忘れているのです。事件を見世物にはしたくないという軍人たちの気持ちもよく分かり、センセーショナルな事件やその報道の是非について何とも考えさせられました。

太刀洗万智というキャラクターは、冷静沈着かつ物事に動じない人物で、それがまたこの作品の雰囲気によくマッチしていると思います。ラストは決して後味が良いとは言えませんが、貧困や人々が抱える闇について私たちに疑問を投げかけてくれる良質なミステリーです。読了後に、『王とサーカス』というタイトルは秀逸だなぁとしみじみと感じました。

7位 『夏期限定トロピカルパフェ事件』

夏期限定トロピカルパフェ事件

出版社 東京創元社
出版年月 2006年4月
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日常ミステリー

<小市民シリーズ>の二作目です。前作『春期限定いちごタルト事件』を先に読んでいただくこと前提で、あえて二作目をオススメします!本シリーズの主人公は、謎解きを愛する小鳩くんと復讐を愛する小佐内さん。高校生である二人は「日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。」というモットーのもと、常日頃から小市民であろうと努力しているのですが、さまざまな事件が降りかかります。

本作も<古典部シリーズ>と同様、日常の謎を描いているのですが、可愛い表紙にも関わらずこのほろ苦さのギャップが癖になります。いや、今回はほろ苦さを超えて、もはや苦さしか残っていないのではないでしょうか(笑)最初は全く無関係のように思えたエピソードが、実は重要な伏線になっていて、やはり米澤さんのプロットは巧いなと感心しますね。

前作では見えなかった小佐内さんの裏の顔が見え隠れし、本作を読んだ誰もが「女の子って怖い」と恐れおののくことでしょう…。甘〜いタイトルながら、後味は非常にビター。夏が来ると無性に読みたくなる作品の一つです。衝撃のラストが待ち受けているので、必ず次巻の『秋期限定栗きんとん事件』を手元に置いてから読んで下さいね!

8位 『Iの悲劇』

Iの悲劇

出版社 文藝春秋
出版年月 2019年9月
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ミステリー

なんとなくエラリー・クイーンの『Xの悲劇』や『Yの悲劇』を彷彿とさせるタイトルですよね。一度死んだ村に人を呼び戻す、というあらすじを見てsakuraは勝手にオカルト小説を想像していました…!よく考えたら死んだ人を呼び戻すわけではないので当たり前のことで(笑)本作は、無人となった限界集落に移住者を募り、活気を取り戻そうとするIターンプロジェクトがテーマとなっています。『Iの悲劇』はIターンのIのこと。

「甦り課」に配属された市役所職員・万願寺は、移住者たちに定住してもらおうと日々奮闘するのですが、次々と問題が起こり始めます。一癖、二癖もある移住者たち、そして個性強めの職員たち。最初こそお仕事小説として楽しめたのですが、あれよあれよといううちにイヤミスの側面が見え始めて…。

やはり米澤さんですから、単なる大団円で終わるはずがありません。あちこちに張り巡らされた伏線がきちんと回収される小気味良さに加え、他の米澤作品にも見られるようなほろ苦い読後感が尾を引きます。人口が減り続ける地方は現実にこういう問題を抱えているんだろうなぁ、という社会派ミステリーとしても考えさせられる作品です。都市と地方のあり方、何が正解なんでしょうね。

9位 『ボトルネック』

ボトルネック

出版社 新潮社
出版年月 2009年9月
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イヤミス

「ボトルネック」(妨げになっている箇所のこと)というのは、日常的にもよく使う言葉でしょう。でも、こんなにも絶望的な思いになるボトルネックだとは、思ってもみませんでした。非常に後味の悪いSFミステリーなので事前に覚悟しておいて下さい。読む時期によっては、小説に引き込まれ過ぎてしまうかも…!それでも私は、本作にシンクロするところがあり大好きな米澤作品の一つです。

亡くなった恋人を弔うために東尋坊に来ていた主人公は、何かに誘われるように崖下へ転落してしまいます。ふと目覚めると、そこはパラレルワールド。場所は全く同じなのに、<僕>が存在していなかった世界でした。こちらの世界では<僕>の代わりに<姉>がおり、現実ではバラバラになっていたはずの家族関係が、この世界では修復されているのを目の当たりに。そして死んだ恋人も元気に生きているのです。

「あのとき違う選択をしていたら」というのは、誰しも一度は考えたことはあるかと思いますが、本作はそれがあまりにも重いのです。暗くたれ込めるような陰鬱な世界(と暗い主人公)で、<姉>であるサキの明るい性格だけが唯一の救いでした。そして自分がこの世界に及ぼした影響を知った主人公の決断とは…?ラストの一文でガツーンとやられてしまい、しばらく呆然としてしまった作品です。

10位 『追想五断章』

追想五断章

出版社 集英社
出版年月 2012年4月
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本格ミステリー

本作を初めて読んだ時は、実は全然面白さが理解できなかったのです。盛り上がりにも欠けるし、主人公は陰気だし…と、とにかく地味な印象。でも不思議なことに、数年後に久々に読み返して見ると、以前読んだ時には穴だらけだったパズルのピースがぴたりとはまったような印象を受けて、今ではお気に入りの一冊となりました。読む時期によって解釈が変わり本の印象も変わるーー。こういう感覚もまた、読書の醍醐味ですよね!

さて、『追想五断章』はリドルストーリーをテーマにしたミステリーです。リドルストーリーとは、意図的に明確な結末を与えず、謎を残したまま終わる作品のこと。白黒はっきり付けたい!という人には好まれないかもしれませんが、中には結末が蛇足に感じてしまう作品もありますよね。リドルストーリーのメリットとして、何とも言えない余韻に浸れるという点を挙げておきたいです。

古本屋でバイトをしている主人公は、店に来たある女性から「亡くなった父が書いた5つの小説を探して欲しい」という依頼を受けます。女性の手元に残されているのは、それらの作品の結末だけが書かれた5つの文章。主人公は結末のない5つのリドルストーリーを探し始めます。調査を進めるうちに明らかになる事件、そしてストーリーと結末が揃ったときに浮かび上がる真実とは?派手さはないものの、作中作も意外なほど面白く構成の妙に感心させられました。

11位 『折れた竜骨』

折れた竜骨

出版社 東京創元社
出版年月 2010年11月
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ファンタジー

「ファンタジー」というラベルを付けていますが、実際には「ファンタジー×ミステリー」というところでしょうか。中世ヨーロッパを舞台に、剣と魔法が登場するミステリー作品です。初めは、正直なところ「魔法を使える以上、ミステリーはフェアじゃないのでは?」と思っていました。だってトリックは全て魔法で片付けられる、言うなれば「何でもあり」な世界ということではないですか。でも実際には、思っていた以上にトリックは論理的に解決に導くことができ、ファンタジーとミステリーがうまく融合した作品でした。

領主の娘の視点から、父の死の謎、暗殺騎士、不死の呪われたデーン人…など複雑に絡み合った要素を解き明かしていくストーリーにワクワクさせられます。余談になりますがミステリー好きには、ファンタジーの世界観が苦手だという人が多いです。そこでおすすめなのは、自分の好きな世界を最初に脳内で思い描いてしまうこと。私は漫画『ヴィンランド・サガ』の世界観を勝手に頭の中で作り上げていました(笑)

本作で、米澤さんは新たな読者層を獲得したのではないでしょうか。一人の作家さんが、色々なジャンルに手を出すことはよくありますが、米澤さんはあらゆるテイストを取り入れつつも必ず「ミステリー」という軸から離れることはありません。そんなブレない姿勢が、ミステリー好きとしては思わず応援したくなってしまいますね!

12位 『本と鍵の季節』

本と鍵の季節

出版社 集英社
出版年月 2018年12月
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日常ミステリー

表紙が素敵ですよね!高校生が主人公の日常ミステリーという点では、<古典部シリーズ>や<小市民シリーズ>と同じですが、本作はそれらに比べるとややビターテイストで大人向けという印象です。何かにつけて頼まれごとの多い主人公・堀川と、容姿が良く皮肉屋の友人・松倉。図書委員である二人のもとに持ち込まれた謎を、その鋭い洞察力で解決に導くという連作短編集です。

高校生にしてはあまりにも大人びた堀川と松倉ですが、図書委員ならではの謎解きの妙味もさることながら、二人の他愛もない掛け合いがとても面白いです!二人を見ていると、高校生って子供でもなく大人でもない何とも曖昧な境界にいるのだなぁと実感します。それにしても、優秀すぎやしませんかね、図書委員(笑)

<古典部>シリーズがコミカルだとすれば、本作はシリアス。個人的には、ぜひシリーズ化して欲しい作品です!全編を通して爽やかさの中にもほろ苦さがあり、静かな余韻の残るラストになっています。ちなみに、sakuraは二人が美容室に行くくだりが気に入っています。

<古典部><小市民><ベルーフ>シリーズにも注目

米澤作品の一番の魅力は、何と言っても「キャラクターが個性的」であることです。作品によっては、プロットや謎解きが二の次、三の次になるほどにキャラが目を引くものもあります。そんな「キャラ読み」必至の作品は、実はシリーズ化されているものばかり。ランキング内でも少しご紹介しましたが、改めてシリーズ化されている米澤作品をチェックしてみましょう!

<古典部シリーズ>

神山高校で、廃部寸前の「古典部」に入部した男女4人が、日常の謎に挑む青春ミステリー。主人公・折木奉太郎のモットーは、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」という自他共に認める省エネ主義者。そこで出会ったお嬢様・千反田えるは清楚な見た目ながら好奇心旺盛な少女で、口癖は「わたし、気になります」。中学生からの友人、福部里志と伊原摩耶花も古典部に加わることになり、日常の小さなミステリーを解決していく。

古典部シリーズ

<古典部シリーズ>既刊(2022年1月現在)
1)氷菓
2)愚者のエンドロール
3)クドリャフカの順番
4)遠まわりする雛
5)ふたりの距離の概算
6)いまさら翼といわれても

※ファン必読のブックガイドとして『米澤穂信と古典部』(角川書店)も発売されています。こちらには書き下ろし短編のほか、作家同士の対談集も掲載されており読み応えたっぷり!

<小市民シリーズ>

ごく一般的な<小市民>を目指す高校生、小鳩常悟朗と小佐内ゆきを主人公とするほろ苦青春ミステリー。中学時代にやたらと推理したがる性格で失敗した小鳩くんと、似たような境遇を送ってきた復讐大好きな小佐内さんは、平和な高校生活を求めながらも日常生活の謎を解かずにはいられない。小市民への道のりはまだまだ遠い。

小市民シリーズ

<小市民シリーズ>既刊(2022年1月現在)
1)春期限定いちごタルト事件
2)夏期限定トロピカルパフェ事件
3)秋期限定栗きんとん事件(上)(下)
4)巴里マカロンの謎

<ベルーフシリーズ>

新聞記者を経てフリージャーナリストとして活躍する女性・太刀洗万智を主人公に据えたミステリー。ベルーフとは、ドイツ語で「天職」を意味する言葉。<太刀洗万智シリーズ>とも言われている。太刀洗は冷静沈着な黒髪美女で、仕事に対する姿勢は非常にストイック。鋭い観察眼により事件の真相へと迫る。

ベルーフシリーズ

<ベルーフシリーズ>既刊(2022年1月現在)
1)王とサーカス
2)真実の10メートル手前

まとめ

米澤穂信さんのおすすめ作品をご紹介してきましたが、気になる作品はありましたか?

『米澤穂信と古典部』を読んでも分かるように、「この人は真のミステリー好きなんだ」と実感させられるような要素が作品の随所に見受けられます。古今東西の優れたミステリーへのオマージュと、それを補って余りあるほどのオリジナリティー。正統派ミステリーも米澤カラーに染め上げてしまう、類まれな作家さんだと思います!

米澤さんは2001年にデビューした作家さんなので、著作は現在25作品程度。未読の人がコンプリートを目指すにしても十分追いつけるのではないでしょうか。まずはシリーズ物から入るのも良し、映像化された作品から挑戦するのも良し。ミステリー系青春小説から、イヤミスまでさまざまなタイプの作品を書かれていますので、ぜひあなたのお気に入りを探してみて下さいね。

<米澤穂信さんが好きな人は、こんな作家もおすすめ!>
 湊 かなえ

イヤミスの女王といえばこの作家さん!とにかく読後感が最悪なのに、新刊が出版される度に何故か読んでしまうという人も多数。毒も湊さんの手にかかれば甘美なものに変わるのでしょうか…。『満願』や『儚い羊たちの祝宴』が好きな人におすすめ。

<参考記事>


 恩田 陸

米澤さん×恩田さんの対談で、お二人の読書遍歴を見るとミステリー好きはやはり同じ道を歩むのだなぁと実感しています。海外古典ミステリーにも造詣が深いお二人は、ミッシングリンクもの(一見関係の無いように見えた事柄が、実は密接に結びついている)に挑戦したい様子。実現する日が待ち遠しいですね!

<参考記事>


 宮部 みゆき

数あるミステリー賞の常連である宮部さんは、「ミステリー=謎解き」だけにとどまらず、人間の秘められた狂気や闇をあぶりだしてくれる作家さん。サスペンスフルなストーリーと丁寧な人物描写は、米澤作品に通じるものがあります。映像化作品も多数あるので、そちらから入ってみるのもおすすめです。

<参考記事>


 誉田 哲也

米澤さんの<ベルーフシリーズ>が気に入った人はぜひ読んで欲しいのが、誉田さんの<姫川玲子シリーズ>です。太刀洗万智同様、仕事一筋の冷静沈着な美女として人気の姫川玲子は、カッコイイ女性主人公が好きな読者の心をがっちりと掴んでくれるはず!

<参考記事>


sakura
ライティング担当 : sakura

札幌在住30代。国内・海外問わず本(主にフィクション)をこよなく愛する。ミステリー、ホラー、ファンタジーが特に好み。好きな作家は恩田陸、上橋菜穂子、綾辻行人ほか多数。永遠のバイブルは北方謙三の『三国志』。アガサ・クリスティーの『アクロイド殺し』で衝撃を受けて以来、叙述トリックにはまり、ラストですべてがひっくり返される「大どんでん返し」本を求めてやまない。週末はドライブがてら本屋巡りをするのが趣味。

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