• 2017/03/28

芥川賞小説『コンビニ人間』が読まれる理由とは!?あらすじ紹介

2016年に第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの『コンビニ人間』。作者の村田さんがコンビニで働いていた経験を活かし執筆された話題作ですが、多くの人が“普通”だと思っている生き方について、考えさせられる内容です。“普通”とは何かを小説のあらすじを紹介しながら紐解いていきます。

誰でも身近な存在の「コンビニ」が舞台

誰もが一度は行ったことがあるであろうコンビニ。中には毎日行く、という人もいるかと思います。
作者の村田沙耶香さんも芥川賞受賞後もコンビニのバイトを続けるほど、コンビニが大好き。
バイトでの実体験やそこでの人間観察によって生み出されたキャラクターたちは、どれも個性的で強烈な人ばかり。だけど思わず「あーいるいる!」と頷いてしまうのは、まるでコンビニのように、身近な存在としてリアルに描かれているからです。

<登場人物>

●古倉恵子(主人公)
・36歳未婚女性。今まで彼氏なし。
・小さい時から人とは違う考え方や行動をして、親を悩ませていた。
・一度も就職することなく、気づけばコンビニでのアルバイト生活も今年で18年目。

 ●白羽(新入りバイト)
・35歳で交際経験のない独身男性。
・自分がダメなことを世間や他人のせいにする。
・「このままで恥ずかしくないのか」「コンビニで働く人たちは底辺だ」と
見下した発言を連発。(典型的なクズ男)

メインキャラクターのこの2人は、いわゆる変わり者の男女。それぞれ考え方や価値観は違うけれど、少数派=”普通”じゃない人であるが故に、作中では社会の「異物」扱いされています。いま、世間で肩身が狭いと感じている人にとっては、少し共感する部分があるかもしれません。

“普通”じゃない人が見つけた居場所…それが職場

主人公は、子どもの頃から周囲にびっくりされるような行動や発言を繰り返していました。自分のおかしさを自覚しながらも、何がどうおかしいのかは理解できません。
そんな主人公が見つけたのは、すべてのことが完璧にマニュアル化されているコンビニでした。マニュアル通りに仕事をすることで、初めて“普通”な人になることができたんです。コンビニに自分の存在意義を感じた主人公は、その後コンビニのために生きることになります。
恋愛経験も趣味も皆無な主人公にとって、職場にすべての身を捧げることになるわけですが、自分を消して決められたことだけをする、それが世間に居場所のなかった自分を守る唯一の手段だったのです。

30代の未婚・独身の人が抱える面倒な人間関係

ようやく自分の生き方&居場所を見つけた主人公でしたが、年齢を重ねるにつれて、またもや周囲から好奇の目で見られるようになります。「結婚しないの?」「どうして就職しないの?」と家族や同僚たちにも質問されるわけですが、これは、実際のアラサー・アラフィフ女性(男性)なら、誰かに一度は聞かれたことがあるはず。
この周囲の質問こそ、今の世の中の未婚・非正規雇用の30代へのイメージそのもので、「結婚」と「就職」の有無によって、ここでも“普通”じゃないレッテルを貼られ、見えないヒエラルキーが成立し、それに悩まされる現実を突きつけています。
主人公も作中で「なぜそんな失礼な質問を平気でするのか」「“普通”じゃない人には何を聞いてもいいのか」という心の叫びを訴えています。
他人に結婚や就職について何も考えずに質問する人、実はかなり多いんです。
「自分とは違う生き方をしている他人を悪気なく攻撃している」ということを、この作品ではストレートに伝えてくれています。自分は“普通”だからと思っている人ほど、この作品を読んで、自分の攻撃性に気づくのかもしれません。

ーー「恋愛」してない、「結婚」してない、「就職」してない。
ただ、それだけのことで肩身が狭い思いをしている人は、どうやって生きているのか、
それを垣間見ることができるのがこの『コンビニ人間』です。
難しい表現も少なくさらっと読める、だけど読了後には様々な言葉が心に深く残ります。
過半数の人が歩む道から外れている人は、“普通”じゃないと認識されてしまう苦悩、そして同調圧力への不条理さ、それらを日々抱えながら生きていかなければいけないのが、少数派の人の現実です。
しかし、多数派のいわゆる“普通”な人たちの存在も、実はおかしいということ。
それが、この作品を通して改めて気付かされる大きなポイントです。
現代の世間に溶け込めない人々がどうやって生き延びているのか、今の自分の人間関係や他人との付き合い方は正しいのか、その答えのヒントがこの本を読めばきっと見つかるはず。

現代文学を代表する村田沙耶香さんの世界観がわかる一冊です。

もったいない本舗スタッフ 感想
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